玄関にそろえたマフラーと手袋、厚手の靴下と水筒
寒い朝にすぐ使える場所へ、防寒の小物をまとめる。
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「寒」という言葉が、暦のうえで正式に始まる日です。

小寒しょうかんから立春りっしゅんの前日までのおよそ三十日間を寒の内、または寒中と呼び、一年でもっとも冷える区間として扱ってきました。冬至で日照にっしょうの短さが底を打ったあと、気温だけが遅れて下がり続ける。その遅れてくる部分に名前をつけたのが、小寒と、次に来る大寒だいかんです。

小寒がわかる3つのこと

  1. 時期は一月五日ごろ。 別名べつめいは寒の入り。ここから寒の内が始まります。
  2. 「小」は軽い寒さという意味ではありません。 寒さがこれから積み上がっていく入口を指します。
  3. 寒中見舞かんちゅうみまいの支度したくを始めるころ。 出す期間は松の内が明けてから立春の前日までです。

「小寒の氷、大寒に解く」という言い回しも残っていて、年によっては小寒のほうが冷え込む、順番どおりにはいかないことがある、という含みで使われてきました。

寒中見舞いは、松の内が明けてから

年賀状の時期を過ぎてから届ける挨拶が寒中見舞いです。喪中もちゅうで年賀を控ひかえたとき、返事が遅れてしまったとき、松の内に間に合わなかったとき。出す理由はいくつもありますが、出せる期間は決まっていて、松の内が明けてから立春の前日まで、つまり寒の内とほぼ重なります。

立春を過ぎてから出す場合は、余寒よかん見舞いに呼び名が切り替わり、文面に季節の言葉を添えるなら、このずれを知っておくと迷わずに書けます。

三十日間をまるごと囲んだ節気

二十四節気にじゅうしせっきの多くは、その日一日か、次の節気せっきまでの半月ほどを指して使われます。ところが小寒には寒の入りという別名があり、大寒をまたいで立春の前日までを一続ひとつづきの期間として囲う役目を持っています。約一か月をひとまとめにする節気は、ほかに見当たりません。

寒が明けるのは立春です。だから立春は、暦のうえで春が立つ日であるのと同時に、寒の内が終わる日でもあります。小寒はその長いカウントダウンの初日にあたる、と考えると位置がつかみやすくなります。

入口のうちに、守りを固めておく

本格的な冷えが来る前だからこそ、できることがあります。

寒の入りに済ませる4つ

  1. しまい込んだマフラーと厚手あつでの靴下を、取り出しやすい場所に移す
  2. 朝いちばんの外出に、いつもより十分ほど余裕をつくる
  3. 温かい汁物しるものを、一日のどこかに一回入れる
  4. 寒中見舞いを届けたい相手を書き出しておく

どれも小さなことですが、冷えは油断した一日から入ってきます。 まだ平気だと思えるうちに動かしておいたほうが、あとが楽になります。

防寒の小物を、出かける順に置く

マフラーや手袋を毎朝探しているなら、外出に使う一組だけを玄関近くのかごへ移してみます。帰ってきたら同じ場所へ戻し、濡れた物は乾かしてからしまう。翌朝の予定が早い日は、靴下や上着も前の晩に選んでおきます。何を持っているかより、必要なときにすぐ使えるかを確かめると、寒の入りの支度が暮らしに結びつきます。

寒九の水と、寒に鍛えるという考え方

寒の入りから数えて九日目を寒九かんくと呼びます。この日に汲んだ水は質が良いとされ、薬を煎じたり、餅をついたり、酒を仕込むのに使われてきました。神秘的な理由が添えられることもありますが、水温が低く雑菌が繁殖はんしょくしにくいという季節の条件そのものが、この言い伝えの背景にあります。

武道の寒稽古かんげいこや寒中水泳がこの時期に行われるのも、寒の内という枠があるからです。厳しい環境に身を置くと心身しんしんが整うという考え方は各流派りゅうはに残っていますが、体調や年齢によって向き不向きがあります。

「寒」の字がつく食べもの

寒ブリ、寒しじみ、寒海苔かんのり、寒天かんてん、寒餅かんもち。この時期の食材には、季節そのものが名前に入り込んだものが並びます。

魚は冬のあいだに脂を蓄たくわえ、海藻は冷たい水のなかで身がしまり、餅は寒気にさらすと日持ひもちが良くなる。どれも低い気温を、欠点ではなく条件として使った結果です。

旬という言葉はふつう味の良さを指しますが、寒の食材の場合は保存や加工の都合も一緒に含まれています。冷蔵の設備がなかった時代、一年でいちばん食べ物が傷みにくい時期がここでした。寒さに耐えるだけの季節ではなかった、という見方を持っておくと、一月の献立が少し楽しくなります。

白い息を数えるくらいでいい

この日を名前にした行事は見当たりません。七草粥ななくさがゆや鏡開かがみびらきのほうが、一月の予定としてはよほど目立ちます。それでも、朝の空気が変わったことを確かめるだけで、寒の内に入ったという感覚は持てます。

体を縮めて過ごす時期は、判断も縮みがちです。大きな決断を急いで片づけようとせず、春までに整えたいことをひとつだけ書き留めておく。そのくらいの使い方が、この節気には似合っています。

よくある質問

Q. 寒中見舞いはいつからいつまでですか

松の内が明けてから立春の前日までです。立春を過ぎると余寒見舞いに呼び名が変わります。

Q. 小寒と大寒はどちらが寒いですか

平均すると大寒のほうが低くなりますが、年によっては小寒のほうが冷え込みます。「小寒の氷、大寒に解く」という言い方はそのことを指しています。

Q. 寒九の水は今でも使われていますか

酒造りなどで意識される場合があります。水温が低く雑菌が繁殖しにくい季節の条件が、その背景にあります。

出典

  • 国立天文台 暦計算室こよみけいさんしつ「こよみ用語解説」の二十四節気の項
  • 寒の内および寒中見舞いの期間についての各種歳時記さいじきの記述