
寒さがいちばん深いところに落ちる、とされる頃です。
大寒は、二十四節気を順に並べたときの最後にあたります。次に来るのは立春なので、暦のうえではここが一巡の終点。終点に置かれたのが最盛期の春でも実りの秋でもなく、いちばん寒い時期だというのは、この暦の性格をよく表しています。
気象の記録を見ると、日本の平均気温が最も低くなるのは一月下旬から二月上旬にかけてで、大寒の期間とだいたい重なります。名前と実感が一致する、数少ない節気のひとつです。
大寒がわかる3つのこと
- 時期は一月二十日ごろ。 二十四節気の最後で、次は立春です。
- 味噌や酒の仕込みに向く時期。 気温が低いほど発酵をゆっくり進められます。
- この日の卵は大寒卵と呼ばれます。 寒さで産卵数が減るぶん、貴重なものとされてきました。
寒さを材料として使う、寒仕込み
味噌、醤油、清酒、寒天。この時期に仕込む食べ物には、共通する理由があります。気温が低いと雑菌の働きが鈍り、発酵をゆっくり進められるからです。急がせない分だけ味が整う、という職人の経験則が、寒仕込みという言葉になって残りました。
酒蔵では、寒の時期の仕込みを寒造りと呼びます。冷蔵設備が整った現在は一年中つくれるようになりましたが、あえて寒の期間に限って仕込む蔵も少なくありません。縁起の話に見えて、中身は温度管理の技術です。
寒仕込みの味噌は、夏の暑さを越えて秋に食べ頃を迎え、仕込んだ本人が結果を確かめるまでに半年以上かかる、気の長い作業になります。
大寒の卵、大寒の水
大寒の日に産まれた卵を大寒卵と呼び、食べると健康に良い、金運に恵まれるといった言い伝えがあります。寒さで鶏の産卵数が減るぶん、ひとつひとつが栄養を蓄えるとされ、貴重なものを分け合う感覚がそのまま縁起になったようです。
大寒の朝に汲んだ水は傷みにくいとも言われてきました。これも低温という条件があってのことですが、一年で最も澄んだ水が得られる時期を人が見分けていた、という点は素直に面白いところです。
底にいるときにできること
寒さの底では、体も気持ちも動きが鈍ります。ここで無理に前進しようとすると、たいてい消耗のほうが勝ちます。
大寒の期間に向く4つ
- 買い足すより、家にあるものを使い切る献立にする
- 暖房で乾いた部屋に、湯を張った器をひとつ置く
- 予定は詰めず、夕方以降を空けておく日をつくる
- 春に始めたいことの下ごしらえだけ、手元で進める
味噌の仕込みと同じで、この時期に向いているのは完成させることではなく、時間をかけて変わっていくものを置いておくことです。
雪の下で、蕗の薹が動く
七十二候では、大寒の期間の最初に款冬華という候が置かれています。蕗の薹が花をつける頃、という意味です。地表は凍っていても、雪の下ではもう次の季節の支度が始まっている。 一年で最も寒い時期の候に、春の芽の名前を当てているところに、この暦の組み立て方が表れています。
続く候は水沢腹堅、沢の水が厚く凍る頃です。そして最後に鶏始乳、鶏が卵を産み始める頃が来て、二十四節気は一巡を終えます。凍りついた景色と、動き出す生き物の名前が交互に並ぶ。寒さの底というのは、そういう二つが同時にある場所なのだと、候の並びのほうが教えてくれます。
一巡の終わりに置かれた節気
二十四節気は立春から始まり、大寒で閉じます。年の切り替わりを冬のいちばん底に置くという構成は、暗さと寒さが極まった先にしか次の季節は来ない、という考え方の表れだと説明されることがあります。
ひとつ添えておくと、大寒を「一年の終わり」と読むのは暦のひとつの数え方にすぎません。元日、旧正月、立春、年度替わりと、この国には節目が何通りもあります。どれが正しいというより、目的によって使い分けられてきたと受け取っておくほうが実際に近いところです。
大寒の期間が終わると節分が来て、その翌日が立春。寒の内はここで明けます。豆をまく前の二週間ほどを寒さの締めくくりと見ておくと、季節の変わり目に立ち会いやすくなります。
寒さの峠を越えれば日は伸びている。この時期には、その事実のほうが支えになります。
暮らしの中で試すなら
春の下ごしらえを選ぶなら、完成まで時間がかかることと、今できる準備を分けます。例えば、春に使いたい道具の状態を確かめて、足りないものだけを書き留めます。始める日を先に置き、今日の作業を準備で閉じると、寒い日に全部を進めずに済みます。
よくある質問
Q. 大寒の日に味噌を仕込まないといけませんか
決まりはありません。気温が低い一月から二月のうちであれば、同じようにゆっくり発酵が進みます。
Q. 大寒卵はスーパーでも買えますか
大寒の日に産まれた卵として販売する店や通販があります。表示の日付を確かめて選ぶ形が一般的です。
Q. 大寒が終わるとすぐ暖かくなりますか
すぐには変わりません。ただ日の長さはすでに伸びており、立春を過ぎると寒さのゆるむ日が混ざり始めます。
出典
- 国立天文台 暦計算室が示す各節気の太陽黄経の値
- 味噌・清酒の寒仕込みに関する醸造の一般的な解説
- 日本国語大辞典「大寒」の項