校庭の木陰に置いた白い紙に映る三日月形の木もれ日と、ベンチの日食グラス
欠けた太陽の形は、足元の木もれ日にも。
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真昼なのに街灯がともる空を、思い浮かべたことはありますか。

皆既日食かいきにっしょくは、月が太陽の前を横切よこぎり、その姿をすっかり覆ってしまう現象です。太陽と月は空での見かけの大きさがほとんど同じなので、距離の条件がそろうと、月の輪郭りんかくが太陽をちょうど隠しきります。太陽の直径は月のおよそ四百倍あるのに、地球からの距離もおよそ四百倍離れているという重なりが、この景色を成り立たせています。

隠れているあいだ、空はうすい藍色に沈み、明るい星や惑星が姿を見せ、それでいて時間は短く、長い回でも数分で終わります。しくみを知っていても体のほうが先に驚いた、と書き残す人が多いのはそのためでしょう。

皆既日食がわかる3つのこと

  1. 月が太陽をぴたりと覆おおい隠します。 見かけの大きさがそろったときだけ、光の玉が黒い円へ変わります。
  2. 暗くなるのは長くて数分です。 影が地表を新幹線よりずっと速く走り抜けるため、一か所にとどまりません。
  3. 見えるのは細い帯の内側だけ。 帯を数十キロ外れると、深く欠けた太陽しか見られません。

皆既の数分間に空へ現れるもの

太陽が完全に隠れた瞬間、ふだんは強い光にかき消されている外側の大気が浮かび上がり、これがコロナで、真珠色の羽根のように四方へ広がります。望遠鏡なしでこれを見られるのは、この数分だけです。

皆既かいきに入る直前と出る直後には、月のふちの谷間から最後のひとすじが漏れ、指輪の石のように光ります。ダイヤモンドリングと呼ばれる場面です。細かく分かれた光の粒がふちに並ぶこともあり、こちらはベイリービーズという名で知られています。

地上の変化も見どころになります。気温は数度下がり、風の向きが変わることがあります。鳥はねぐらへ帰ろうとして鳴きやみ、虫の音が急に始まる。空よりも先に、まわりの生きものの様子で暗さに気づくというのが、立ち会った人の話に共通するところです。

皆既日食を安全に見るための5つの用意

  1. 専用の日食観察グラスを人数分そろえる。 サングラスや黒い下敷き、すすを付けたガラスでは目を痛めます。
  2. 望遠鏡や双眼鏡そうがんきょうでの観察は、専門家が適切に減光げんこうした機材を使う観察会で行う
  3. 子どもと見るときは、グラスを外してよい時間を大人が声に出して伝える
  4. 紙に小さな穴を開けて光を地面に映し、太陽の形が変わっていく様子を追う
  5. 晴れやすい季節かどうかと開始時刻を先に調べ、空の開けた場所を選んでおく

皆既の最中だけは、グラスを外して肉眼にくがんで見てよいとされています。ただし太陽のふちが戻る瞬間はまぶしさが一気に跳ね上がるので、終わりの時刻を頭に入れてから外してください。

皆既帯が細くなるしくみ

月が落とす影のうち、太陽を完全にさえぎる濃い部分は、地表に届くころには直径が百キロ台まで細くなっています。この影が通った土地の帯を皆既帯と呼びます。

地球の表面から見れば、帯が覆うのはごく一部です。同じ町で次の皆既日食を待つと、平均して三百年を超えるとも言われます。世界のどこかでは一年か二年に一度は起きているのに、自分の住む場所にはめったに巡ってこない。この差が、遠出とおでをしてでも見に行く出来事へと押し上げてきました。

日本の空でも、部分的に欠ける日食のほうは何年かおきに見られます。欠けかたの浅い回は、地面に落ちた木もれ日の形を確かめて、ようやく気づくくらいです。

昔の記録から、いまの占星術へ

太陽が欠けた日を書き留める習ならわしは古く、中国の史書ししょにも日本の古い記事にも、その日の空の様子が残っています。理由が分からなかった時代には、国や王の身に起こることのしるしとして読まれました。

いまの西洋占星術せいようせんせいじゅつでは、日食を新月のなかでも大きな区切りとして置く流儀りゅうぎが広く見られます。一方に、その土地で実際に見えたかどうかを重んじる立場もあり、二つが並んで伝わっています。どちらの流儀でも、一日で何かが決まると考えるより、前後の数週間をひとつづきの期間として眺めるほうが、暮らしには収まりやすいでしょう。

星座ごとの読み方は新月(獅子座)+皆既日食のページへ。

空を見る前に、足元も見ておく

同じ場所を食の前と途中で見比べると、空以外の変化も残せます。木の下に白い紙を置き、木もれ日の形を写真に撮っておくのも一案です。観察中は地面に映った光を見て、丸かった形がどちらから欠けているかを比べます。ノートには時刻と、周囲の明るさや聞こえた音を短く添えてみてください。空へカメラを向け続けなくても、その場で見つけた変化をまとめた観察記録になります。

よくある質問

Q. 皆既はどのくらい続きますか

多くは二分から三分ほどです。条件のよい回でも七分半を超えることはなく、長さは月と地球の距離や観測地の位置で決まります。

Q. 部分的に欠けているだけの時間は、肉眼で見てよいですか

いけません。細く残った太陽でも光は十分に強く、短い時間で目を傷めます。欠け始めから終わりまでグラスが要ります。

Q. カメラやスマートフォンで撮れますか

撮れますが、レンズを太陽へ向けたままにすると内部を傷めます。太陽用フィルターを付けるか、地上の暗さや人の表情のほうを写すと失敗が減ります。

出典

  • 国立天文台による日食のしくみと皆既・金環きんかんの違いについての解説
  • 国立天文台 暦計算室こよみけいさんしつが公開する各年かくねんの日食データおよび各地予報
  • 日食を安全に観察する方法についての各天文機関および学会の案内
  • 日食を新月の区切りとして扱う西洋占星術の慣例かんれいについての記述
  • 国立天文台「観察のしかた」