早春の枝越しに浮かぶ赤銅色の月と、ベンチに置いた双眼鏡と毛布
月を見た夜も、できたことを一つ残して休む。
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寝る前に、その日できなかったことばかり数えていませんか。

この夜は、満月が欠けていき、やがて赤黒い色に変わります。皆既月食かいきげっしょくは満月のときにしか起こりません。太陽と地球と月がほぼ一直線に並び、月が地球の影の中へ入り込む現象だからです。丸い月を見上げるつもりでいると途中から色が変わっていくので、初めて見る人は少し驚くかもしれません。

この夜がわかる3つのこと

  1. 月食は満月の日にだけ起きます。 ただし毎回の満月では起こらず、条件がそろった回だけです。
  2. 皆既かいきの月は真っ暗にならず、赤銅色しゃくどういろになります。 地球の大気を通り抜けた赤い光が回り込むためです。
  3. 乙女座おとめざは整える星座。 対する太陽は魚座うおざにあり、測って直す力と、測れないものを抱える力の両端に光が当たります。

できなかったことより、できたことを先に

占星術せんせいじゅつでは、月食が起きる満月を通常より大きな節目ふしめとして読む慣習かんしゅうがあります。乙女座に月がある場合、扱うのは日々の点検や手入ていれの側です。

半年や一年をかけて整えてきたものが、この時期に一度そのまま見えることがあります。続いた習慣、崩れた習慣、やろうとして手が回らなかった項目。ここで気をつけたいのは、できなかった項目だけを数えてしまうこと。乙女座の目は細かいところに届くので、放っておくと不足のほうを先に見つけます。

この夜にやってみたい4つ

  1. できたこと、続いたことを先に五つ書き出す
  2. そのうえで、やめても回っていた作業をひとつ探す
  3. 自分に課しているルールで、いま苦しいものをひとつ緩める
  4. 寝る前の反省の時間を、今夜だけ点検の時間に置き換える

三つめの「緩める」が、この夜のいちばん実用的な作業です。毎日やると決めた回数を減らす、期限を一週間先に動かす、掃除する範囲を一か所に絞る。基準を下げるのは手抜きではなく、続けられる形に直す作業です。

頭の中の点検係にも、交代の時間を

月食のあいだ、あれほど明るかった月が短時間だけ光を失います。この日に使いやすいのは、そのイメージのほうです。

「もっとちゃんとしなくちゃ」と考える日が続いたら、今日は助けになった習慣を数えてみませんか。朝ごはんを用意できた、早めに連絡できた。できたことを一つ残したら、あとはゆっくり休む夜に。

体のことも同じです。乙女座は健康の星座とされますが、健康の管理が新しい心配の材料になっている人は少なくありません。数値を測るのを一日休んで、代わりに眠りたいだけ眠る。それがこの日にできる、いちばんこの星座らしい手当てあてかもしれません。整えることと洗い流すことの違いは浄化のページへ。

月が地球の影に入るしくみ

地球の影には二種類あります。太陽の光がまったく届かない濃い部分を本影ほんえい、一部だけさえぎられた薄い部分を半影はんえいと呼びます。

月全体が本影に入り込むと皆既月食、一部だけが入ると部分月食ぶぶんげっしょくになります。半影の中を通るだけなら半影月食はんえいげっしょくで、注意して見ないと分からない程度のわずかな減光げんこうにとどまります。皆既となる場合は、部分食ぶぶんしょくが始まってから皆既に入り、皆既が終わってまた部分食に戻り、最後に半影から抜けるという順に進みます。全体で三時間を超えることも珍しくありません。

満月はおよそ一か月ごとに巡ってきますが、月食は毎回起こりません。月の軌道が地球の公転面に対して約5度傾いているため、たいていの満月は地球の影の上か下を通り過ぎてしまいます。軌道が交わる点の近くで満月になったときだけ、影に入れます。

赤銅色に見える理由

皆既の間、月は真っ暗にならず赤黒い色に見えます。この色は赤銅色と呼ばれます。

理由は地球の大気にあります。太陽の光が大気の層を通るとき、波長の短い青い光は空気の分子に散らされて進めません。波長の長い赤い光は散らされにくく、弱まりながらも通り抜けます。さらに大気がレンズのように働いて光を屈折くっせつさせるので、その赤い光が本影の内側まで回り込み、月面をぼんやり照らします。地球じゅうの夕焼けの光が、月に届いていると言い換えることもできます。

色は毎回同じではありません。大気中のちりが少ない年には明るいオレンジ色に、多い年には暗い灰色になり、ときには月がほとんど見えなくなることもあります。この違いに気づいたフランスの天文学者ダンジョンは、二十世紀の初めに色の目安となる尺度しゃくどを作りました。いまでもダンジョンスケールとして観測に使われています。近年は血の月という通称も広まりましたが、これは天文の用語ではなく色から付いた言い方です。

月食を災わざわいの前触まえぶれとして恐れた記録は、世界各地に残っています。太陽や月が突然欠ける理由が分からなかった時代には、無理のない反応だったでしょう。現在は起こる日時も見える地域も何十年先まで計算できます。占星術の側でも、月食を大きな節目として扱うことと、悪いことが起きると予告することは別の話です。

同じ乙女座でも半影にとどまる月食があり、そちらは満月(乙女座)+半影月食のページへ。影の深さが違うと、見え方も語られ方も変わります。

欠けていく月を見る夜

観察するなら、肉眼にくがんで十分です。日食と違って月食は目を痛める心配がありません。双眼鏡そうがんきょうがあれば色の変化がよく分かります。時間帯によっては夜更けまで続くので、途中で寝てしまってもかまいません。

戻ってからやることを決めるなら、できたことを書くだけにしてください。三行あれば足ります。今日できたこと、もう責めないと決めたこと、明日を楽にする小さな一手。月が影から出るころには、もう眠っている予定で組んでおくと無理がありません。

暮らしの中で試すなら

「今日は何もできなかった」と感じる日は、起きてからの動きを順にたどってみましょう。洗ったカップを戻した、必要な連絡を一通返した、疲れに気づいて予定を減らした。評価の言葉を付けず、動作だけを書きます。立派な成果に言い換えなくても、その日の暮らしを支えた行動として残せます。

よくある質問

Q. 皆既月食は日本のどこからでも見えますか

その回の進行時刻に月が空に出ている地域なら見えます。日食と違い、見える範囲がずっと広いのが月食の特徴です。

Q. 血の月という呼び方は正式なものですか

天文の用語ではありません。皆既中の色から付いた通称で、赤銅色という言い方のほうが観測では使われます。

Q. 月食の日に体調が崩れるのはなぜですか

季節や睡眠など、ほかの理由が先に考えられます。夜更けまで起きていること自体が影響することも多いので、無理に見届けなくて大丈夫です。

Q. 自分は乙女座ではありません

問題ありません。この夜が扱う点検というテーマは、星座を問わず誰にでも当てはまります。

出典

  • 国立天文台による月食のしくみと本影・半影についての解説
  • 国立天文台 暦計算室こよみけいさんしつおよび各天文台が公開する皆既月食の進行時刻の資料
  • 皆既中の月の色とダンジョンスケールに関する天文台の観測解説
  • 月食を含む満月を節目として扱う西洋占星術せいようせんせいじゅつの一般的な慣例かんれい