
平気になったこともあるのに、まだ触ると痛むところが残っていませんか。
この夜は、満月なのに細い三日月のような形が空に残ります。部分月食では、月の一部だけが地球の濃い影に入るからです。二〇二六年八月のこの食は踏み込みが深く、月の直径の九割以上が影の中へ入ります。 皆既にはならないのに、皆既に近い赤さが現れる、めずらしい部類の月食です。
この食がわかる3つのこと
- 食分はおよそ〇・九三。 月の直径を一としたときの、影に入った割合を表す数字です。
- 一を超えると皆既になります。 つまりこの夜は、皆既のすぐ手前で止まる食です。
- 日本からは見えません。 進行する時間帯に、月が空にいないためです。
魚座そのものの読み方は満月(魚座)のページへ。ここでは、一部だけが影に入るという条件を手がかりにします。
九割まで欠けても、皆既にはならない
月食の深さは、食分という数字で表されます。〇・五なら直径の半分まで、一を超えると月がまるごと影に収まって皆既です。今回の食分はおよそ〇・九三。近年の部分月食のなかでも深いほうにあたり、三時間を超えて部分食が続きます。
一段細かい話をすると、部分月食の食分は「面積の割合」ではありません。直径に対する割合です。だから食分〇・九三と言われても、暗くなっている面積は九割より少なくなります。数字の意味を取り違えると、実際の見え方とずれてしまうところです。定義まで確かめておくと、記事によって数字が違う理由も見えてきます。
明るい一割が、赤い九割を見えにくくする
深い部分月食には、観察のうえでの癖があります。影に入った部分は、皆既のときと同じ赤い色をしています。ところが、それがよく見えません。
理由は残った側の明るさです。影の外にある一割ほどの部分は、いつもの満月と同じ強さで光っています。人の目もカメラも、視野の中でいちばん明るいものに合わせて調節するので、そのぶん暗い側が沈みます。皆既月食で赤い月がはっきり見えるのは、明るい部分がひとつも残っていないから。逆に言えば、この夜の赤さは「そこにあるのに見えにくい」種類のものになります。
影の縁も、思っているほど鋭くありません。太陽は点ではなく大きさを持った球なので、地球の影は濃い部分から薄い部分へなだらかに移り変わります。だから欠けた境目はぼやけて写り、どこまで入ったかを目では正確に測れません。
明るいものが並んでいると、暗い側が見えなくなる。この構造は、感情の扱いにもそのまま当てはまります。忙しさや楽しさが残っているうちは、その裏で欠けている部分に気づきにくいものです。
順番を変えるだけで見えることもあります。天体写真では、明るい側に露出を合わせた一枚と、暗い側に合わせた一枚を別に撮って、あとで重ねる方法が使われます。片方の設定では両方を写しきれないからです。心の側で同じことをするなら、機嫌のよい日に思い出せないことを、静かな夜のほうで拾っておく形になるでしょう。
癒えたところと、まだ痛むところを分ける
全部を整えようとしないのが、この食の形に合った使い方です。
分けて扱う4つの手順
- この半年で、思い出しても平気になったことをひとつ書く
- まだ触ると痛むことを、名前だけ書いておく
- 二つめについて、今日は触らないと決める
- そのうえで、今日ひとつだけ軽くできることを探す
三つめを入れているのは、書いた勢いで掘り進めてしまうのを避けるためです。名前を書けたなら、その時点でもう見つけてあります。扱う時期は別の日でかまいません。
ひとつめから始める順番も大事なところです。痛むほうから書き始めると、平気になった部分まで痛かった記憶に塗り替えられていきます。九割が影に入っていても、光っている側は確かにあります。 そこを先に数えておくと、残りの扱いが楽になります。
曖昧なままの一件を確かめる
具体的な作業をひとつ挙げるなら、はっきりしないまま置いてある約束を確かめることです。
いつか一緒に、そのうち連絡します、都合がついたら。悪意のない先延ばしですが、宙に浮いている件は数が増えるほど重くなります。今夜できるのは、そのうち一件だけを言葉にすること。やる、やらない、時期を決める。どれでも構いません。三つのうちのどれかに置き換えると、それだけで肩の位置が変わります。
相手の感情まで引き受けている件についても、一件だけ返しておく方法があります。返すというのは突き放すことではなく、決めるのはその人だと確認することです。この星座の満月に境界線の話が繰り返し出てくるのは、線を引くのが苦手とされるから。線は壁ではなく、どこまでが自分の担当かという印です。過去から引き継いだ型として語られる考え方はカルマのページへ。
全部を整えなくてよい夜
月食が見えない夜に、特別な準備は要りません。むしろ、いつもより早く寝るくらいで十分です。
やることを決めるなら、部分的な手当てにしてください。飲みものを一杯だけ丁寧に用意する、明日の予定から一件外す、返しそびれていた短い連絡を一本だけ送る。全部を片づけないところが、この夜の主題に合っています。
書き残すのは三行です。もう平気になったこと、今日は触らないでおくこと、今夜少しだけ軽くしたもの。九割が影に入る夜に、一割の光を数えておく。それがこの日のいちばん静かな使い方かもしれません。
暮らしの中で試すなら
「いつか一緒に」と言ったままの約束が気になっているなら、会いたい気持ちと今の都合を分けて考えてみましょう。今月は難しくても、来月なら候補日を出せるかもしれません。自分が決められるのは、誘う言葉や空けられる時間まで。相手の返事を待つ部分は残したまま、一通の連絡にまとめてみてください。
よくある質問
Q. 食分が〇・九三なら、九割暗くなるのですか
暗くなる面積は九割より少なくなります。食分は直径に対する割合であって、面積の割合ではありません。
Q. 深い部分月食なら、赤い月は見られますか
影の中は赤くなっていますが、残った明るい部分に目が引っ張られて見えにくくなります。写真では露出を分けて撮ると写ります。
Q. 日本から見えない食は節目として扱いますか
配置そのものを読む流儀では扱い、見えたかどうかを重く見る流儀では控えめに扱います。どちらの立場も並んでいます。
Q. 魚座以外の人は、どう過ごせばよいですか
生まれ星座を問わず、月の暦を眺めながら、最近の気持ちを書き留める夜にできます。魚座のテーマである感受性や想像力を、好きな音楽や物語から味わうのも一つです。
出典
- 国立天文台による月食の食分の定義および地球の影の構造についての解説
- 各天文機関が公開する二〇二六年八月の部分月食の食分、継続時間、可視地域の資料
- 深い部分月食で影の内側の色が見えにくくなることについての観測解説
- 月食を含む満月の扱いに関する西洋占星術の複数の立場についての記述