雨上がりの水辺を、閉じた傘を持って歩く青いコートの人
人の話を聞いたあとは、自分の時間へ戻るひとときも。
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人の話を聞いた日に、理由もなく重くなることはありませんか。

魚座うおざの新月は三月ごろ、春分を迎える直前に巡ってきます。日本では年度が終わりに向かう時期。異動や卒業の話が出て、来月から何かが変わると分かっているのに、まだ今の日々が続いている。輪郭りんかくがぼやけた数週間に、この新月は置かれています。

魚座の新月がわかる3つのこと

  1. 時期は二月下旬げじゅんから三月中旬ちゅうじゅんごろ。 太陽が魚座へ移るのが二月十九日前後。春分までのあいだに、月と重なる日が一度きます。
  2. 受け持つのは癒し・夢・直感・境目さかいめのなさ。 11の星座で立ち上げてきた個人の輪郭が、最後にもう一度ゆるむ段階だと説明されます。
  3. 守護星しゅごせい(その星座を代表するとされる天体)は木星、または海王星かいおうせい。 伝統的には木星、近代以降は海王星とされ、海王星は輪郭を曖昧あいまいにする働きをあてられてきました。

輪が閉じたあとには牡羊座おひつじざがまた始まります。終点というより、いったん溶かして次の形に備える場所と考えたほうが近いかもしれません。

どこまでが自分の感情なのか

疲れている人のそばにいると、こちらまで疲れてくることがあります。

共感力という言葉で説明することもできますし、空気を読みすぎているのだと言うこともできます。どちらにしても、実際に起きているのは、自分の感情と他人の感情の区別がつきにくくなっている状態です。この新月で扱いやすいのは、その線引せんびきのほうでしょう。

線を引くと聞くと冷たくなりそうですが、実際には逆のことが起きます。どこまでが自分の担当かがはっきりしている人のほうが、長く人を助けられます。 全部を引き受ける人は、たいてい途中で急にいなくなります。

見分ける問いをひとつ挙げるなら、「これは自分が引き受けたのか、流れ込んできたのか」。引き受けたものには、決めた覚えがあります。流れ込んできたものには、それがありません。決めた覚えのないまま抱えている重さは、返してよいものだと考えて構いません。

やさしさが目減りしていく合図

心当たりがあるかどうか、いくつか挙げてみます。

相手の機嫌が悪いと、自分が何かしたのではないかと考える。断ったあとに何日も気にする。頼まれてもいない心配を先回さきまわりしている。誰かの話を聞いた日に、理由もなく重くなる。どれも珍しいことではありませんが、続くと確実に消耗しょうもうします。

感情を持ち帰らないための4つ

  1. 曖昧なままの約束をひとつ選んで、日付か範囲を決める
  2. 返事を急がなくてよい連絡を、一日置いてから返す
  3. 予定の入っていない時間を、意識して空けておく
  4. 眠る前に、その日誰の感情を持ち帰ったかを一行書く

書くなら、今日は背負わないと決めることと、自分の領域ではないと確認することの二行が使いやすいはずです。前者ぜんしゃは今日の話、後者こうしゃはもう少し長い話になります。

聞く時間の終わりを、先に伝える

相談を聞くときも、始める前に「今日は八時半までなら話せる」と伝えておくことができます。話が終わったら、自分が引き受けた作業だけをメモに残し、続きが必要なら次に連絡する日を決める。相手の気持ちをすべて解決する約束まで背負わず、今できることを具体的に渡す方法です。そのあとは散歩や入浴など、自分の時間へ戻る予定を一つ置いてみてください。

曖昧なままにしておける力

ここまで線引きの話をしてきましたが、魚座の曖昧さは弱点ばかりではありません。

答えの出ないことを、答えが出ないまま抱えていられるのは、この星座の強みだと語られます。白黒つけないと落ち着かない状態は、それはそれで判断を急がせます。結論を保留ほりゅうしたまま、相手の話を最後まで聞ける。まだ形になっていない考えを、形になるまで守っておける。創作や看護、介護の領域でこの性質が働くと言われるのは、そのためでしょう。

だから、この時期に「もっとはっきりしなさい」と自分に言わなくて大丈夫です。はっきりさせたいのは感情ではなく、時間と約束の範囲のほう。何時までやるか、どこまで引き受けるか。その二つさえ決まっていれば、中身は曖昧なままで構いません。

二匹の魚が、反対を向いている

魚座のしるしは、二匹の魚が紐で結ばれ、それぞれ逆の方向へ泳いでいる姿として描かれます。

つながっているのに、向きが違う。この形は、魚座に含まれる矛盾むじゅんをよく表していると語られてきました。人に寄り添いたい気持ちと、一人になりたい気持ち。現実的に動きたい思いと、どこか遠くへ流れたい思い。どちらも本心で、片方だけを選べません。

神話では、怪物から逃れるために魚の姿になった母子が、はぐれないよう紐で身を結んだ、という筋がよく紹介されます。逃げるための変身と、離れないための紐。避けることと、つながっていること。矛盾しているようで、実際の暮らしでは両方とも必要になります。

12星座の並びでは、魚座は水瓶座みずがめざの次に置かれています。仲間や社会の仕組みまで見渡したあと、最後に残るのは個人の区別がつかなくなる領域だ、という順番です。同じ水の星座でも、蟹座かにざが守る場所を作り、蠍座さそりざが誰かと深く混ざるのに対して、魚座は境目そのものを薄くします。

眠りと夢を予定に入れる

この新月にできることのうち、いちばん効くのは、たぶん早く寝ることです。

冗談のようですが、この星座は休息と夢を受け持つとされています。予定を減らし、あかりを落とし、いつもより早く布団に入る。それだけで過ごし方として成立します。朝に覚えていた夢があれば、一行だけ書き留めておいてください。意味を解こうとしなくて構いません。書いておくと、数週間後に読み返したときに引っかかることがあります。

水に関わる過ごし方も合います。長めに湯につかる、雨の音を聞く、海や川のそばを歩く。瞑想と呼ばれる静かな時間も、この日は形式にこだわらずに済みます。座り方より、何もしない時間を確保したことのほうが大切です。

輪の終わりにある新月ですが、終わりの実感はあまりありません。ぼんやりしたまま、次の月には牡羊座の季節が来ます。溶けている時間を無駄だと思わずに過ごせたら、この日の使い方としては十分でしょう。

よくある質問

Q. 人の感情をもらいやすい体質は変えられますか

体質として直すより、時間と範囲を先に決めるほうが早く効きます。会う時間を決める、返事を一日置く。それだけで持ち帰る量が変わります。

Q. 夢の意味は調べたほうがいいですか

急いで調べなくて大丈夫です。書き留めておくだけで十分で、意味は後から自分の状況と結びついて見えてくることが多いものです。

Q. 春分の前だと、願い事は牡羊座まで待つべきですか

待たなくて構いません。魚座の新月は、次の一年に持っていかないものを決める側で使うと働きます。

Q. 魚座生まれではない場合はどうですか

同じように使えます。この新月は12星座の輪を閉じる位置にあり、どの星座の生まれでもその区切りを迎えます。

出典

  • 国立天文台 暦計算室こよみけいさんしつが公表する新月の日時
  • 春分の日時は毎年の暦要項れきようこうで確定される
  • 魚座の守護星については伝統的な木星と近代の海王星の両説りょうせつがある