
春分の日って何の日ですか、と聞かれると、意外と答えにくいものです。
ひとことで言うと、太陽が真東から昇って、真西へ沈む日。冬のあいだ空の低いところを通っていた太陽の道が、この日を境に北寄りへ移り、日を追うごとに昼が長くなっていきます。お彼岸のちょうど真ん中にあたる日でもあり、お墓参りをする人の多い一日です。
春分の日がわかる3つのこと
- 昼と夜がほぼ同じ長さになる日。 ただし実際に測ると、昼のほうが数分長くなります。
- お彼岸の中日にあたります。 前後三日ずつを合わせた七日間が、春のお彼岸です。
- 日付は年によって動きます。 三月二十日の年も、二十一日の年もあります。
じつは昼のほうが、数分だけ長い
同じ長さになる日、と紹介されるのに、時計で測ると昼が勝ちます。理由は二つあります。
ひとつは、日の出と日の入りを太陽の中心ではなく上のふちで決めていること。太陽には見かけの大きさがあるので、上のふちが地平線に触れた瞬間から数えれば、その分だけ昼が早く始まり、遅く終わります。
もうひとつは大気の影響です。地平線近くの太陽は、空気の層を通るときに折れ曲がって、実際より少し浮き上がって見えます。国立天文台は、この浮き上がりぶんを見込んで日の出入りを計算しています。太陽の直径のおよそ半分に近い角度です。
二つを合わせると、東京では昼が十二時間八分ほど。夜より十六分ほど長いという結果になります。ほんとうに昼夜が等しくなる日は、暦の春分より四日ほど早く過ぎています。緯度によってずれ幅が変わるので、札幌と那覇では同じ日でも昼の長さが違います。
整ってから動き出すのではなく、動き出してから釣り合いを探す日。そう考えると、この数分のずれもむしろ心強い数字です。
お彼岸の中日をどう使うか
春分の日は、春のお彼岸のちょうど真ん中にあたります。前の三日と後ろの三日を足した七日間が彼岸の期間です。
太陽が真西に沈む日なので、西のかなたにあるとされた極楽浄土へ向かって手を合わせる日として大切にされてきました。お墓が遠い年は、家で西の方角に向かって手を合わせるだけでも構いません。
この日にやってみたい4つのこと
- 今年のテーマを、飾らない一文で書いてみる
- 玄関と机、二か所だけ手を入れる
- 夏至までに育てたい習慣を、ひとつだけ選ぶ
- 春のうちに動かす予定と、静かに準備する予定を書き分ける
書き分けるときは、順番も一緒に決めておくと動きやすくなります。四月に人へ声をかける、五月に形にする、六月にいったん見直す。そこまで並べておけば、春分に書いた一文が夏至まで生き延びます。
半分ずつにしよう、と考えなくて大丈夫です。暦の春分でさえ昼夜はぴったり半分になりません。仕事と休みを完璧に割ろうとすると、たいてい息切れします。
祝日の日付が、前の年に決まる仕組み
春分の日は、日付が法律に書かれていない珍しい祝日です。国民の祝日に関する法律には「春分日」とだけあり、三月の何日とは記されていません。
では、どこで決まるのか。国立天文台が翌年分の暦を計算し、その要点をまとめた暦要項が、前の年の二月一日に官報で公表されます。そこに載った春分日が、そのまま翌年の祝日の日付になります。手元のカレンダーに印刷されている春分の日は、一年以上前に天文台の計算結果として国が知らせたものだ、ということです。天体の位置が国の休日を直接決めている例は、ほかの祝日にはあまりありません。
祝日としての来歴をたどると、一九四八年に祝日法ができるまで、この日は春季皇霊祭という宮中の祭りの日でした。同じ日付を、趣旨を書き替えて引き継いだ形になっています。いまの法律が春分の日に与えている趣旨は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」。太陽の話でも祖先の話でもなく、生き物の側から季節を見る言葉が選ばれているところが、この祝日の面白さです。
一年の起点そのものが、ゆっくり動いている
西洋占星術では、太陽が春分点に達したところを牡羊座の0度と置きます。星の並びではなく、季節を十二に割ったものさしです。
見落とされがちなのは、基準になっている春分点が、空の上で止まっていないこと。地球の地軸はコマのようにゆっくり首を振っていて、その動きによって春分点は、七十二年かけて角度にして一度ずつ、星座をさかのぼる向きにずれていきます。星座ひとつぶん(三十度)動くには二千年以上かかる、ゆっくりした変化です。紀元前二世紀のヒッパルコスがこの動きに気づいたとされ、以後の占星術は動く基準点を承知したうえでこのものさしを使ってきました。
その結果、いまの春分点は、実際の星の並びで言えば魚座の領域にあります。占星術の星座と天文学の星座がひとつずれているのはこのためで、どちらかが誤っているという話ではありません。インド占星術のように実際の星座を基準にする流派もあり、同じ生年月日で星座が違って出てくるのは、この差から来ています。
その日の使い方
特別な作法を用意しなくても構いません。日の出と日の入りの時刻を調べて、去年の同じ日と見比べるだけでも、季節の動きには立ち会えます。
日中に外へ出て、影の長さを見ておくのも春分らしい過ごし方です。夏至に向かって影は短くなり、秋分でまたここへ戻ってきます。写真を一枚撮っておけば、半年後の秋分に同じ場所で撮ったものと並べられます。
夜の使い方も選べます。この日を境に夜は短くなっていくので、長い夜のうちにやりたいことがあるなら今週が最後の機会です。読み終えていない本を開く、来年の春まで持ち越したくない用事を片づける。そうやって冬を終わらせておくと、伸びていく昼の側を素直に使えます。
春分に書いた一文は、半年後の秋分にもう一度読めるよう、日付を添えて残しておいてください。書いたときの季節と、読み返すときの季節が正反対になっているぶん、自分の変化がはっきり見えます。
影を一枚、記録しておく
影の写真を季節ごとに見返すなら、撮った時刻と場所も一緒に残しておきます。いつものベンチや玄関の柱など、次にも同じ位置から撮れるものを選ぶと続けやすくなります。画面の端に柱や敷石を入れておけば、立った場所も思い出せます。夏至や秋分にも同じ時刻に撮り、影の向きや長さを見比べてみましょう。日付だけの記録に、身近な場所で見た春の光が加わります。
よくある質問
Q. 春分の日は毎年三月二十一日ではないのですか
年によって二十日になります。太陽の位置で決まる日なので、日付は固定されていません。前の年の二月に官報で公表されます。
Q. お彼岸のお墓参りは、中日に行かないといけませんか
決まりはありません。七日間のうち都合のよい日で構いません。中日は太陽が真西に沈むため、手を合わせる日として選ばれてきました。
Q. 星占いの牡羊座と、空の牡羊座は同じですか
同じではありません。基準になる春分点が長い時間をかけて移動しているため、いまは星の並びとひとつぶんずれています。
出典
- 国立天文台 暦計算室「暦要項」および春分日の公表に関する解説
- 国立天文台「日の出入りと昼夜の長さ」に関する解説(太陽の視半径と大気差)
- 国民の祝日に関する法律
- 各種占星術文献におけるトロピカル方式および歳差の解説
- 国立天文台「春分の日・秋分の日には、昼と夜の長さは同じになるの?」