
予定はこなせているのに、なぜか涙が近い。そんな夜はありませんか。
魚座の満月は、暑さが引きはじめて夜の音が変わるころに巡ってきます。この星座が受け持つのは、共感、想像、癒し、そして自分と他人の輪郭がゆるむ場所。月が魚座で満ちる夜、太陽は真向かいの乙女座にいます。
きちんと区切る側と、区切りが溶ける側。 その両端に光が当たるので、この満月には独特の疲れ方があります。理由が説明できない、というのがこの夜の理由になっている場合もあります。
魚座の満月がわかる3つのこと
- 九月ごろに巡ってくる満月。 乙女座を進む太陽と向かい合う位置で、月が丸くなります。
- 守護星(その星座の受け持ちとされる惑星)は木星、または海王星。 伝統的には木星、近代以降は海王星を重ねて読みます。
- 境目がゆるいのは感度の高さの裏返し。 相手の感情が自分のものとして入ってきやすい星座とされます。
誰の感情まで抱えていたか
この満月で見直しやすいのは、共感の使いすぎです。
抱えた分を数える4つの手順
- この半年で、聞き役に回った場面をいくつか思い出す
- そのうち、話を聞いたあとに自分まで重くなったものに印を付ける
- 印の付いた相手について、自分に決定権があったかどうかを確かめる
- 返事を保留したまま置いてある約束を、ひとつ挙げる
三つめが分かれ目です。決定権がない相手の悩みを抱え続けても、状況は動きません。 動かないのに重さだけ残るので、疲れの原因になります。聞くことと引き受けることは別だ、と言葉のうえで分けておくだけでも、次に同じ場面が来たときの立ち位置が変わります。
感度を下げる方向ではなく、入ってきたものを置く場所を決める方向で扱うほうが、この星座には合っています。
線を引くことは、冷たくなることではありません
境界線という言葉には、拒む響きがあります。この満月では、そこを少し言い換えておきたいところです。
断る、休む、返信を翌日に回す、その話題には触れないと決める。どれも相手を遠ざける行為に見えますが、実際には自分が消耗せずに関わり続けるための手順です。全部を受け止め続けた末に、ある日いっさい連絡を返せなくなるほうが、相手にとっては急な出来事になります。
言い方の型をひとつ用意しておくと楽になります。「その件は今週は難しいので、来週あらためて聞かせてください」。理由を並べず、扱える時期だけを示す形です。魚座は断ることに罪悪感を持ちやすいとされるので、その場で考えずに済む定型を持っておくほうが実用的でしょう。
許すことについても、ひとこと。魚座に重ねて語られる美徳のなかで、許しはいちばん扱いが難しいものです。まだ痛むうちに許したことにすると、痛みは消えずに場所を変えて残ります。順番としては、起きたことを正確に思い出せるようになるほうが先で、許すかどうかはその後に決まります。今夜わからなくても、それは遅れているのではなく、まだ途中にいるということです。
夢と眠りを材料にする
この星座の満月では、眠りにまつわる話題がよく出ます。夢を記録する、直感を書き留める、といったものです。
書き留めること自体は、いくらやっても差し支えありません。ただ、意味を確定させようと急がないほうが、この夜には合っています。夢は、起きているあいだに処理しきれなかったものが混ざって出てくる場所だと説明されます。読み解く対象というより、まだ言葉になっていない材料の置き場です。数日たってから読み返すと、当日は分からなかった繋がりが見えることもあります。夢や無意識を扱う考え方はインナーチャイルドのページへ。
眠れない夜になった場合は、意味づけをやめて明かりを落とすほうが確かです。感情が動きやすい日に眠りが浅くなること自体は、めずらしい話ではありません。
同じ模様に、違うものが見える
月には模様があります。そして、その模様が何に見えるかは、育った土地でかなり違います。
日本や中国では餅をつく兎として語られてきました。中国には蟾蜍を見る伝えもあります。ヨーロッパでは本を読む女性の姿や、蟹、ロバ、人の横顔として説明されることがあり、地域によってはライオンを見ます。同じ模様を、まったく別のものとして名指してきたわけです。
面白いのは、私たちがずっと同じ面を見てきたことです。月の自転周期と公転周期はほぼ一致しているので、地球からはいつも同じ側しか見えません。首を振るようなわずかな揺れのおかげで、時間をかければ表面の六割ほどまで見渡せますが、基本的には人類が何千年も同一の絵柄を眺め続けてきたことになります。
水のない海、という名前
模様の暗い部分には、いまも「海」という名前が付いています。静かの海、豊かの海、雨の海。どれも水があるかのような呼び名です。
命名したのは、十七世紀のイタリアの天文学者ジョヴァンニ・バッティスタ・リッチョーリでした。一六五一年の著作で月面の地名を整理し、暗い平原に海の名を与えています。当時は、暗く見える部分に水があると考えられていました。実際には、そこは古い溶岩が固まってできた玄武岩の平らな土地です。水は一滴もありません。
それでも名前だけが残り、いまも公式の地名として使われています。誤解から生まれた呼び名が、正しさとは別の理由で生き延びた例です。人が抱えている感情の名前も、しばしば正確ではありません。名づけ直すか、そのまま置いておくかは、その名前が誰かの役に立っているかどうかで決めれば足ります。
何もしない時間を先に取る
過ごし方に手順は要りません。予定表に「何もしない三十分」と先に書いてしまうのが、この満月らしいやり方です。
湯に浸かる、音楽をかける、窓を開けて外の音を聞く。生産的でなくてよい時間を確保しておくと、共感で使った分がゆっくり戻ります。水に触れる行為がこの星座と結び付けて語られるのは、清めの意味というより、身体の緊張がほどけやすいからでしょう。
書き残すなら三行です。もう自分が持たなくてよい感情、今週まだ曖昧なままの約束、明日いちばんに休ませたい場所。三行目が「肩」でも「目」でも、この夜の答えとしては十分です。
暮らしの中で試すなら
相談を受けたときは、「今日は話を聞いてほしい? 一緒に方法を考えたい?」と最初に確かめると、引き受ける役割が見えてきます。長く話せない日には、聞ける時間も伝えておきましょう。会話のあとに音楽を一曲聴くなど、自分の気持ちへ戻る小さな時間を用意しておくのもよさそうです。
よくある質問
Q. 人の相談を断ると罪悪感が残ります
理由を説明せず、扱える時期だけを伝える型を持っておくと軽くなります。断る練習より、言い方をひとつ決めておくほうが早く効きます。
Q. 月の兎は世界共通の見立てですか
共通ではありません。地域によって女性の横顔、蟹、ロバなど、まったく違うものが語られてきました。
Q. 月の海には昔、水があったのですか
ありませんでした。暗く見える部分を海と考えた十七世紀の命名がそのまま地名として残っています。
出典
- 月の自転と公転の同期および秤動についての各天文機関の解説
- 月面の海の名がリッチョーリの一六五一年の著作に由来することについての月面地名の記述
- 月の模様の見立てに関する各地の伝承をまとめた民俗・天文の資料
- 海王星と木星を守護星とし共感と想像を受け持つ星座として魚座を読む占星術の慣例