
夜ふかしをして空を見上げる機会は、ふだんの暮らしでは少ないかもしれません。
皆既月食は、満月がまるごと地球の影に入り込む夜のことです。太陽、地球、月がほぼ一直線に並ぶと、地球が日ざしをさえぎり、その後ろへ長く伸びた影の中を月が通っていきます。影に沈んだ月は消えてしまうのではなく、くすんだ赤い色に変わります。
進み方はゆっくりです。欠け始めてから元の丸い姿に戻るまで、三時間を超える回も珍しくありません。途中で寝てしまってもかまわない、気の長い天体の行事だと思ってください。
皆既月食がわかる3つのこと
- 道具はいりません。 目を痛める心配がないので、そのまま見上げて大丈夫です。
- 赤く見えるのは地球の空気のはたらきです。 影の奥まで赤い光が回り込み、月の表面をぼんやり照らします。
- 見える土地が広く取れます。 その時間に月が空へ出ている地域なら、どこからでも同じ景色になります。
皆既月食の夜に用意しておきたい5つ
- 暖かい上着と、腰かけられるもの。 見上げる姿勢が長く続くので、首と足元から冷えます。
- どちらの方角が開けているかを、明るいうちに確かめておく
- 双眼鏡があれば持ち出す。色の濃淡が肉眼よりはっきりつかめます
- 進行の時刻表を手元に置き、影にすっかり入る時刻だけ覚えておく
- 街灯の少ない場所へ動けるなら、五分歩くだけでも見え方が変わります
写真に残したいときは、前半と後半で明るさが大きく変わる点に注意してください。欠け始めの月はふだんの満月と同じ強さで光り、影に沈むと数万分の一まで落ちます。同じ設定のままだと、赤い月は真っ黒にしか写りません。
月が赤銅色に沈むしくみ
地球のまわりには空気の層があります。その縁をかすめて進む日ざしは、青い成分を散らされ、赤い成分だけが残って先へ届きます。
さらに空気の層はレンズのようにはたらき、通り抜けた光をわずかに内側へ曲げます。曲げられた赤い光が影の奥まで回り込み、月面を弱く照らす。これが皆既中の月が黒くならない理由です。世界じゅうの朝焼けと夕焼けが、まとめて月に届いていると言い換えると、色の出どころが見えてきます。
色の濃さを記録するダンジョンスケール
同じ皆既でも、月の色は毎回違います。明るい銅色に見えることもあれば、灰色に近く沈んでほとんど見失うこともあります。
差を生むのは、地球の空気に混じっているちりの量です。大きな噴火があった翌年の月食は暗くなりやすいと言われます。この明るさの違いを0から4の五段階で書き留めるやり方は、二十世紀の初めにフランスの天文学者アンドレ・ダンジョンが整えました。0は月がほとんど見えないほど暗い状態、4は明るい銅赤色でふちが青みを帯びる状態を指します。
見るときは、自分の目で何番に見えたかを書き留めておくと面白くなります。となりの人と番号が食い違うのも、この記録によくあることです。
日食よりも広い土地から見られる理由
日食では、月の細い影が地表を走るので、帯の中にいなければ見られません。月食はその逆です。月の位置での地球の影は月の直径の二倍半ほどもあり、影に入った月は、どの土地から見ても同じように欠けていきます。
つまり、その時間に月が地平線より上にいる地域はすべて観測地になります。地球のほぼ半分から眺められる計算です。遠くへ出かけなくても順番が回ってくるのが、月食の親しみやすいところでしょう。
占星術で皆既月食が置かれる位置
西洋占星術では、月食をともなう満月を、ふだんの満月より大きな区切りとして読む慣例があります。半年ほど先まで尾を引くとする書き手もいれば、次の食までを一区切りとする書き手もいます。
占星術では、見える土地を重んじる読み方と、天体の配置を読む方法があります。空を眺めるなら、その土地で見える時間を確認して。暦を目印に過ごすなら、最近の出来事をノートに残す夜にもできます。
星座ごとの読み方は満月(乙女座)+皆既月食のページへ。
色と時刻を一緒に残す
観察用のノートには、月を描く小さな丸をいくつか用意しておくと便利です。見上げた時刻を添え、赤く見えた部分と暗い部分を簡単に塗り分けます。「右の縁が明るい」「雲が通って一度見えなくなった」といった一言も、その夜の記録になります。写真を撮る場合も、まず肉眼で見た色を書いてから画面を見ると、目で見た印象と写った色の違いを比べられます。観察を終える時刻も先に決め、途中の変化だけを楽しむ夜にしてもよいでしょう。
よくある質問
Q. どのくらいの時間がかかりますか
欠け始めから終わりまでなら三時間を超えることが多く、まるごと影に入っている時間は十数分から一時間半ほどです。影の中心を通る回ほど長くなります。
Q. 血の月という呼び名は天文の用語ですか
いいえ。皆既中の色から広まった通称です。観測の記録では赤銅色という言い方が使われます。
Q. 曇っていて見られませんでした。次はいつですか
日本から見られる皆既月食は、数年に一度ほど巡ってきます。国立天文台の暦のページに、先の年まで一覧が出ています。
出典
- 国立天文台による月食のしくみと地球の影についての解説
- 国立天文台 暦計算室が公開する各年の食のデータと進行時刻の資料
- 皆既中の月の色およびダンジョンスケールについての観測解説
- 月食をともなう満月を節目として扱う西洋占星術の慣例