扇と稲穂を飾った熊手を薄紙で包み、布の袋に収める手
一年を過ごした熊手を、次の市へ持っていく支度。
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一の酉に行きそびれたまま、十一月が半分過ぎてしまったでしょうか。

酉の市が一度で終わらないのは、日付ではなく干支えとの巡めぐりで開かれるからです。十二支じゅうにしを日に割り当てていくと、酉の日は十二日ごとに戻ってきます。ひと月は三十日前後なので、少なくとも二度は巡り、条件がそろえば三度になります。その二度目が二の酉で、十一月の半ばごろにあたります。

一の酉ほどの混雑にならない社も多く、熊手くまでをゆっくり見て回りたい人には向いた日です。ここからは、市を二度以上使う人のための話をしていきます。

酉の市(二の酉)がわかる3つのこと

  1. 一の酉との格の違いはありません。 同じ場所に同じ店が並び、扱いとしては一の酉の続きです。
  2. 古い熊手を返せる日でもあります。 買い替えるなら、去年の分を持って行くと一度で済みます。
  3. 熊手以外の縁起物えんぎものも並びます。 八頭(やつがしら)や切山椒(きりざんしょう)といった、食べる品です。

十二日おいて、同じ境内に

一の酉から数えて十二日後です。売り手も品ぞろえもほとんど変わりません。

季節のほうは確実に進んでいます。立冬りっとうを過ぎたころなので、日が落ちるのが早く、境内けいだいの冷えも一段強くなります。同じ市でも、一の酉の熱気に対して二の酉は少し落ち着いた空気になる、と言う人がいるのはそのためでしょう。

一の酉に行けなかった年に、二の酉で埋め合わせる形でも構いません。どちらか一度だけ参るという人も珍しくないので、両方に行かなければならない、という決まりがあるわけでもないのです。

熊手を少しずつ大きくしていく

熊手には、年ごとに少しずつ大きなものへ買い替えていくという習ならわしがあります。商あきないが伸びた分だけ、掛ける品も育てていくという考え方です。

これは、いきなり大きなものを買わないという意味を含みます。最初の年に手のひらほどの熊手から始め、翌年はひと回り大きく。段階が残るので、何年通ったかが品の大きさに表れます。

もっとも、置き場所には限りがあります。年々大きくしていけば、いつかは天井や壁が足りなくなる。そこまで来たら小さいものへ戻す人もいますし、大きさを固定して毎年同じ寸法すんぽうを買い直す人もいます。どちらでも差し支えありません。習わしの芯は寸法そのものより、続けて通うところにあります。

同じ店で買い続ける人が多いのも、この続け方と関わっています。店の人が去年の熊手を覚えていて、それに合わせて品を出してくれる。二の酉は人が少し引いている分、そういうやりとりに時間を取りやすい日でもあります。

去年の熊手を返す4つの手順

新しい熊手を買うと、古いほうが手元に残ります。扱いに困りやすいところなので、先に決めておくと当日が楽になります。

  1. 買い替える年は、古い熊手を持って市へ行きます。 かさばるので、袋を一枚用意しておくと運べます。
  2. 境内の納所(おさめしょ)や納札のうさつ所に納めます。 多くの社寺しゃじが受け付けていて、まとめてお焚き上げされます。
  3. 市で受け付けていなければ、社務しゃむ所で尋ねます。 期間や場所を区切っていることがあります。
  4. 遠方えんぽうの社で買ったものは、近くの社寺に相談します。 受けてもらえる場合が多く、可燃ごみに出さずに済みます。

いつ買い替えるかについては、一年ごとという言い方が一般的です。ただし、家に飾ってあるものを毎年替えなければならないという決まりが定められているわけではありません。数年掛けたままの家もあります。

納める前に、一年の姿を残す

古い熊手を外す前に、飾っていた場所ごと写真に残しておくと、去年の大きさも思い出せます。市へ持参する支度したくでは、納める場所の案内を確かめ、袋に収まるかを先に見ておきます。細かな飾りが引っかからないよう、出し入れするときはゆっくりと。新しいものを選ぶ際にも、手元の写真が置き場所の目安になります。一年を過ごした品を送り出す支度と、次の一枚を迎える支度が、一続ひとつづきになります。

八頭と切山椒が並ぶ理由

熊手のほかにも、市には決まって出る品があります。

八頭は里芋さといもの一種で、ひとつの株から小芋こいもがたくさんつきます。子が増える縁起えんぎと、人の頭に立つという語呂ごろを重ねて、酉の市の縁起物として売られてきました。切山椒は山椒を練り込んだ餅菓子で、細く切って売られます。冬の入口に体を温める意味が添えられます。粟でつくる黄金餅を名物に挙げる社もあります。

どれも見た目に派手さのある品ではないでしょう。露店ろてんの熊手が高く積まれた横で、こうした地味な品が並んでいるところに、市が農村の収穫祭しゅうかくさいから続いてきた名残なごりが見えます。 買って帰って、その晩の食卓に出す。それだけで市との関わり方が一つ増えます。

二度目に確かめておくこと

一の酉で立てた願いをそのまま繰り返すより、二の酉は点検の日にするほうが向いています。十二日あれば、最初に決めたことの粗さが見えてくるからです。

集めたいと決めたものは、まだ同じでしょうか。集めるための最初の一歩を、この十二日で実際に踏んだでしょうか。踏んでいないなら、願いが大きすぎたか、時期が合っていなかったかのどちらかです。市に二度行ける仕組みは、そこを直すための猶予ゆうよとして使えます。

年末が近づくと、抱える予定は増える一方になります。増やす話を市でしてきたなら、帰り道では減らす話も一つ決めておくと釣り合いが取れます。

市の始まりについては酉の市(一の酉)で、三度目が巡る年に語られてきた言い伝えは酉の市(三の酉)で扱っています。

よくある質問

Q. 一の酉と二の酉で、両方とも熊手を買うものですか

一年に一枚が一般的です。両方に参って、熊手は片方で買うという人が多くいます。二枚買ってはいけないという決まりはありませんが、飾る場所と、翌年に返す手間を考えて決めるとよいでしょう。

Q. 熊手が壊れてしまいました

飾りが落ちる程度なら、直して掛け続けて差し支えありません。大きく傷んだ場合は、買い替えを待たずに社寺へ納められます。壊れたこと自体を悪い知らせと受け取る必要はなく、紙と竹でできた品が一年もった、と考えれば十分です。

Q. 二の酉に人出が少ないのは、格が落ちるからですか

違います。三度あるうちの最初に人が集中しやすいだけで、市の内容は同じです。人が少ない日のほうが店の人と話せるため、二の酉を選んで通う人もいます。

出典

  • 浅草あさくさ 鷲神社おおとりじんじゃによる熊手および酉の市の案内
  • 八頭、切山椒など酉の市の縁起物に関する一般的な解説
  • 古い熊手の納め方についての各社寺の案内