
カレンダーの五月五日に「こどもの日」と「立夏」が並んでいる年があるのに、気づいていましたか。
ひとつは端午の節句。数字の並びで決められた日で、何年経っても五月五日から動きません。もうひとつは立夏。太陽が空のどこにいるかで決まる日で、年によって五日になったり六日になったりします。
立夏は、暦のうえで夏が始まる日です。 つまりこの年は、連休の締めくくりに、行事の日と季節の入口が同じ一日へ重なることになります。難しい作法は何もありません。菖蒲湯に入る日を、そのまま夏の支度を始める日として使えばよいだけです。
端午の節句と立夏が重なる日でわかる3つのこと
- 重なるのは数年に一度です。 立夏の日付が太陽の位置で決まるため、五月五日に来る年と六日に来る年があります。
- 暦のうえの夏は、ここから始まります。 立夏から立秋の前日までが夏。暑さの実感より、ひと月ほど早い区切りです。
- 行事の片づけと夏支度を、同じ日にまとめられます。 五月人形もこいのぼりも、湿気が来る前にしまうほうが傷みません。
この日にする夏支度
湯に菖蒲を入れて浸かる。これは夏に向けて入浴の習慣を切り替える合図にもなります。暑くなると湯船を使わなくなる人が多く、その最後の区切りがちょうどこのあたりに来ます。今日を境にシャワーだけの日が増えるのなら、その前に一度ゆっくり浸かっておく価値はあります。
夏の入口でやっておく5つのこと
- 扇風機や冷房を一度動かします。 動作と匂いを確かめておくと、本当に暑くなった日に慌てません。
- 水筒と日よけを、使う場所へ出します。 しまい込んだままだと、結局その年は使わずに終わります。
- 薄い寝具を一枚だけ用意します。 明け方はまだ冷えるので、すぐ戻せる状態にしておくのが要点です。
- 夏に負担が集中しそうな予定を、一つ先に動かします。 七月と八月に寄せた用事を、いま一つ減らしておきます。
- 引き受けごとの線を決めておきます。 暑い時期にどこまで動くかを先に決めておくと、後で断りやすくなります。
菖蒲の葉は細く鋭く、香りもはっきりしています。魔除けに使われてきた植物には、こういう輪郭のはっきりしたものが選ばれがちです。境目を作るという意味では、夏に向けて予定を整理する作業とも通じます。
飾りをしまうのも、この日
こいのぼりも五月人形も、この日を過ぎたら早めにしまうほうが長持ちします。人形の敵は湿気で、六月に入ってから片づけると、箱のなかに湿った空気ごと閉じ込めることになるからです。
- 晴れて乾いた日を選び、風を通してからしまう
- 布で乾拭きし、顔まわりには素手で触れない
- 防虫剤は人形用のものを使い、直接触れさせない
- こいのぼりは完全に乾かしてから畳む
片づけと入れ替えに、夏に使うものを出しておく。この順番にすると、押し入れの中身が季節ごとに一度ずつ動きます。
しまう箱の横に、夏の道具を置く
飾りをしまう日は、箱の横に小さな空き場所を作っておきます。こいのぼりを畳んで戻したら、その場所へ水筒や帽子を出す。寝具を入れ替えるなら、しまうものと今夜使うものを先に分けます。あれもこれも一度に広げず、棚一段分だけで終えるのもよい方法です。最後に夏の道具を実際に持ち出す場所へ移しておけば、翌朝から使えます。行事の片づけが、そのまま次の季節の支度になります。
動かない日付と、動く日付
ここからは、二つの日付の決め方の違いを見ていきます。
節句のほうは、古い暦の日付をそのまま新しい暦へ移した形です。もともと旧暦の五月五日に行われていたものを、明治の改暦後もそのまま五月五日として続けました。だから季節との関係は一か月ほどずれたまま固定されています。旧暦の端午は梅雨のさなかにあり、薬草で身を守る意味がはっきりしていたのに対し、いまの五月五日は新緑の気持ちよい時期にあたります。
節気のほうは逆で、季節との関係を保つために日付を動かします。太陽の位置を基準にしているので、地球が一周する時間と暦の一年のわずかな差を、日付のずれとして吸収するわけです。うるう年の前後で一日動くのはそのためです。
季節を追いかける暦と、季節から切り離された暦。同じカレンダーの上に二種類のものさしが載っていて、たまたま目盛りの合う年がある、という構図になっています。
二つの節目を、夏支度の目印にする
端午の節句は行事の日、立夏は季節の区切りです。この重なりは、方位や日の吉凶を扱う暦注とは別のものとして読むと、役割がわかりやすくなります。
一年を四つに割った季節の境目と、年に五つある節句のひとつが、同じ一日に置かれている。片方は季節そのものの入口で、もう片方は人が決めた行事の日です。使いどころがあるとすれば、覚えやすさのほうでしょう。菖蒲湯に入る日と、夏の道具を出す日が同じなら、どちらか一方を忘れずに済みます。
暦の夏と、体の夏がずれる
暦のうえの夏はここから始まりますが、体が追いつくのはひと月ほど先です。立夏のころの平年気温は、地域にもよりますが二十度前後。暑いというより、風が心地よい時期にあたります。
だからこの日は、夏の暮らし方に切り替える日ではなく、切り替える準備に手をつける日です。そのくらいの温度で扱うほうが、この重なりには合っています。連休が明ければ日常が戻り、そこからは暑くなる一方。区切りとして使いやすい位置に、たまたま二つの節目が並んでいる、と受け取っておけば十分です。
よくある質問
Q. 立夏はなぜ毎年同じ日ではないのですか
太陽の位置を基準に決めているためです。地球が太陽を一周する時間と、暦の一年の長さにわずかな差があるので、その分が日付のずれとして現れます。うるう年の前後で一日動きます。
Q. 端午の節句と立夏が重なる年は、縁起がよいのでしょうか
この組み合わせを特別な吉日とする決まりは伝わっていません。行事と季節の入口が重なる日として、菖蒲湯や飾りの片づけから夏支度へつなげて過ごせます。
Q. こいのぼりや五月人形は、いつしまえばよいですか
五月の中旬までに、晴れて乾いた日を選ぶのが目安です。梅雨に入ってから片づけると、湿った空気ごと箱に閉じ込めることになります。
出典
- 国立天文台 暦計算室による二十四節気の定義と各年の日付
- 明治の改暦にともなう節句の日付の扱いに関する解説
- 各歳時記における菖蒲と端午の節句の記述