
暦のうえでは、五月の初めから夏です。
感覚的には初夏どころか、いちばん過ごしやすい時期でしょう。新緑がそろい、湿気はまだ来ていない。それを夏の入口と呼ぶのは、暦が気温ではなく太陽の位置で季節を四等分しているからです。
立夏がわかる3つのこと
- 時期は五月五日ごろ。 ここから立秋の前日までが、暦のうえの夏です。
- 夏至は夏の始まりではなく、真ん中。 立夏から夏至までがちょうど半分にあたります。
- 直前に春の土用があります。 四月下旬からの約十八日間が、春でも夏でもない期間です。
日の長さがいちばん伸びきる点を中心に置いた区切り方なので、暑さの盛りを基準にする現代の感覚とは、およそ一か月半ずれます。
立夏の前にある、十八日間
立夏の直前には春の土用が置かれています。土用は立春・立夏・立秋・立冬のそれぞれ前の約十八日間を指すもので、季節と季節のあいだの移行期間として扱われてきました。夏の土用の丑の日ばかりが有名ですが、実際には年に四回あります。
四月下旬から立夏の前までは、春の土用にも当たります。土を動かすことを控える習わしは、陰陽五行の考え方から伝わってきたものです。庭仕事の予定を考えたり、季節の変わり目の支度をしたり、家の周りへ目を向ける時間にもできます。
立夏の前日にも、かつては節分という呼び名がありました。いまは豆まきの行事が冬のものだけ残ったため、この言い方はほとんど使われません。
気持ちよさに、つい乗りすぎる
五月上旬は動きやすい時期です。連休が重なることもあり、予定を詰め込みやすくなります。ただ、寒暖差は残っていて、紫外線量は真夏に近い水準まで上がっています。
五月の入口で決めておく5つ
- 日差しの対策を、暑くなってからではなく今から始める
- 半袖に切り替える日と、上に羽織るものを一枚持つ日を分ける
- 連休の疲れを、翌週の予定であらかじめ吸収しておく
- 冷たい飲み物と冷房の使い始めを、少しだけ遅らせる
- 寝具を薄くする前に、明け方の室温を一度だけ確かめる
体は季節の変化に一か月ほど遅れてついてきます。暦が夏だからといって夏の暮らし方に一足飛びで移ると、五月の後半に反動が来ることがあります。
菖蒲湯と端午の節句が、近い日に並ぶ理由
立夏と端午の節句は、年によって同じ日になったり、一日二日ずれたりします。どちらも五月の初めに置かれているためですが、由来はまったく別です。節句は中国から伝わった五節句のひとつで、月と日の数字が重なる日を選んだもの。立夏は太陽の位置で決まる節気です。
とはいえ、内容には通じるところがあります。端午の節句で菖蒲を軒に挿し、菖蒲湯に入るのは、湿気が増えて病気が広がりやすくなる季節に備える意味があったとされます。夏の入口で体を守る、という発想が、由来の違う二つの行事に共通しているわけです。近い日に並んでいるのは偶然でも、扱っている季節の課題は同じでした。
蛙が鳴き、竹の秋が終わる
七十二候では、立夏の最初を蛙始鳴としています。水を張った田から蛙の声が聞こえ始める頃、という意味です。続く候には、みみずが地上に現れる、竹の子が伸びる、といった項目が並びます。
この時期の竹林には竹の秋という不思議な季語があります。竹は春から初夏にかけて古い葉を落とし、地下の栄養を筍に送るため、周りが緑一色になる頃にかえって黄ばむからです。名前と季節が逆転して見えるものが、暦の言葉にはときどき紛れ込んでいます。
衣替えの前に、風を通しておく
六月の衣替えを待たず、この時期にクローゼットを開けておくと後が楽になります。冬物を片づける前に一度風に当て、夏物の傷みを確かめておく。梅雨に入ってしまうと、乾かす場所も日も限られます。
網戸の破れ、扇風機の埃、日よけの具合。夏の道具は、使い始めてから不具合に気づくと厄介です。まだ涼しいうちに一度動かしておくと、本番で慌てずに済みます。
暦のうえの夏は、暑さの宣言ではなく準備の合図です。窓を開けて風が通る季節は思いのほか短いので、その短さを味わうくらいが立夏にはちょうどよい過ごし方でしょう。
夏の道具を、一つ取り出してみる
扇風機をしまった場所を思い出し、まず部品がそろっているか確かめてみます。日よけなら取り付ける場所、夏物の服なら今の手持ちとの組み合わせまで見ておく。買い足すかどうかを決める前に、去年使っていた物を一つ手に取るだけでも準備は進みます。終わったら外の風に触れ、まだ涼しい時間帯の心地よさも味わってみてください。
よくある質問
Q. 立夏なのに涼しいのはなぜですか
暦が太陽の位置で季節を分けているためです。気温の変化は一か月半ほど遅れてついてきます。
Q. 春の土用にしてはいけないことはありますか
土をいじるのを控えるという言い伝えがありますが、由来は陰陽五行の考え方です。体調を整える期間として受け取る人が多くなっています。
Q. 立夏と端午の節句は同じ日ですか
年によって重なることも、数日ずれることもあります。節気と節句は決め方が違うため、日付は毎年動きます。
出典
- 国立天文台 暦計算室「二十四節気・雑節」の各年データ
- 土用の期間についての各種暦書の説明
- 七十二候における立夏の各候の記述