冬の庭が見える窓を拭く人と、床にそろえたバケツや布
一日一枚の窓拭きから、年末の支度を少しずつ。
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大掃除を、毎年ぎりぎりの数日に詰め込んで疲れきっていませんか。

大雪たいせつは十二月の上旬じょうじゅんにあたる節気せっきで、読みは「たいせつ」です。冬至のひとつ手前に置かれ、雪が本格的に降って積もり始めるころを指します。もっとも東京や大阪で十二月上旬に積雪を見ることはまれで、名前と実感が合うのは日本海側や山間部に限られます。

雪よりも先に、暮らしの側で覚えておきたい日付がこの期間にあります。十二月十三日、正月事始しょうがつことはじめです。 大掃除は本来、この日から半月かけてやるものでした。

大雪がわかる3つのこと

  1. 時期は十二月七日ごろから、冬至の前日まで。 一年で日がいちばん短くなっていく半月です。
  2. 十二月十三日は正月事始め。 煤払すすはらいと松迎まつむかえを、ここから始める習ならわしでした。
  3. 小雪しょうせつとの違いは、量ではなく段階。 小雪は変わり目、大雪はその最中を指します。

大掃除は、十二月十三日から始めるもの

正月事始めが十三日である理由は、旧暦きゅうれきのこの日が鬼宿日きしゅくにちにあたり、婚礼こんれい以外のことには吉とされていたからです。一年分の煤や埃を落とす煤払いと、門松かどまつに使う松を山へ採りに行く松迎えが、この日から始まりました。京都の花街かがいで、芸妓げいぎが師匠のもとへ挨拶に回るのも同じ日です。

半月かけてよい、と決まっている作業だと知るだけで、年末の組み立ては変わります。 三十日に一気に片づける必要はどこにもありません。

十二月十三日から始める5つ

  1. 高いところの埃を先に落とす。 照明、鴨居かもい、棚の上。順番を守ると二度手間になりません。
  2. 換気扇とコンロを、寒さが増す前に済ませる。 油は気温が下がるほど落ちにくくなります。
  3. 窓拭まどふきは、晴れて風のない日に一枚ずつ。 全部の窓を一日で終わらせようとしません。
  4. 玄関と水まわりを、それぞれ別の日に割り当てる。 一日一か所で十分に間に合います。
  5. 正月飾しょうがつかざりを出す日を、あらかじめ決めておく。 二十九日と三十一日は避ける習わしがあります。

窓一枚で、その日の掃除を終える

大掃除の予定には、始める場所だけでなく、どこまでで終えるかも書いておきます。「窓を掃除する」では広すぎるなら、「居間の手が届く窓一枚」と決める。布や道具を出し、拭き終えたら洗って戻すところまでを一回分にします。残りの窓は別の日へ。終わった場所に印をつけていけば、年末に何が残っているかも見渡せます。短い作業を重ねる形なら、ほかの用事の合間あいまにも進めやすくなります。

動けない日を、先に一日想像しておく

大雪のわかりやすい使い方は、外へ出にくい日が一日あったらどうなるかを考えてみることです。雪でも、体調でも、事情は同じです。

大雪のうちに確かめる4つ

  1. 冷蔵庫と乾物かんぶつの棚に、何日分あるか数える。買い足すのは足りない分だけです。
  2. 薬箱くすりばこの中身と使用期限を見る。年末年始は薬局も病院も開いていません。
  3. 防寒具を出して、足りないものだけ書き出す。手袋は片方だけ消えがちです。
  4. 十二月後半の予定から、前倒しできるものを一つ動かす。一つで十分に効きます。

毎年十二月の後半に慌てることは、たいてい決まっています。買い物、掃除、連絡、体調管理のどれかでしょう。そのうち一つを大雪のあいだに済ませておくだけで、年末の空気が変わります。

「空が塞がって冬になる」という書き方

ここから暦の言葉の話です。七十二候しちじゅうにこうの最初は閉塞成冬そらさむくふゆとなるで、読みは「そらさむくふゆとなる」。天地の気が塞がって冬になる、という意味で、七十二候のなかでも際立って感覚的な表現をしています。

厚い雲が空を覆おおい、日が差さなくなる。上に蓋をされたような状態を「塞がる」と書いたわけです。実際、日本海側ではこの時期から曇天どんてんが続き、日照にっしょう時間が急に短くなります。気温の数字ではなく、空の見え方で季節を言い切ったところに、この候の面白さがあります。

熊が穴に入り、鮭が川を上る

次の候が熊蟄穴くまあなにこもる。熊が穴にこもるころ、という意味です。冬眠とうみんに入る前の熊は、木の実を食べて体重を増やしています。動物が動くのをやめる時期を、季節の指標しひょうとして使っているわけです。

最後が鱖魚群さけのうおむらがる。日本では「さけのうおむらがる」と読み、鮭が群れて川を上るころとされます。もともと中国の候にある鱖はケツギョという別の淡水魚を指していたのですが、日本の暦に取り入れる際、この時期に目立つ魚として鮭に読み替えられました。輸入した暦を土地の生き物に合わせて書き換えた跡が、こういう形で残っています。

冬将軍と、鰤起こし

この時期に強い寒気が入ると、冬将軍ふゆしょうぐんという言い方をよく聞きます。気象庁の正式な用語ではなく、シベリアからの寒気団を指す俗称ぞくしょうです。語源はナポレオンのロシア遠征だとされ、厳しい冬に軍が壊滅した出来事を、ヨーロッパで冬という将軍に負けたと表現したのが日本へ入ってきました。

北陸には、鰤起こしという言葉もあります。冬に鳴る雷のことで、この雷が鳴ると鰤の群れが来るとされてきました。雷と魚を結びつけた漁師の経験則で、暦とは別の物差ものさしですが、時期はちょうど重なります。

よくある質問

Q. 大雪はいつですか

十二月七日ごろから、冬至の前日までです。太陽の黄経こうけいが二百五十五度になった日が始まりで、年ごとに一日ぶんずれます。

Q. 大雪の日に雪が降るのですか

この日から必ず雪になる、という意味ではないのです。北国や山間部で本格的な積雪が始まるころ、という目安で、太平洋側の都市では、まだ降らない年がほとんどです。

Q. 正月事始めの日に、何をすればよいですか

決まりごとはありません。煤払いと松迎えが元の内容なので、大掃除を一か所だけ始める、正月飾りの手配をする、といったところから入れば十分です。

出典

  • 国立天文台 暦計算室こよみけいさんしつ「暦要項れきようこう 二十四節気にじゅうしせっきおよび雑節ざっせつ」
  • 各種歳時記さいじきにおける七十二候(閉塞成冬・熊蟄穴・鱖魚群)の解説
  • 正月事始めおよび煤払い・松迎えに関する年中行事の記述