山茶花を飾った部屋に用意した、冬の布団と暖房器具
朝と夜の過ごし方を思い浮かべて、冬支度を一つずつ。
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こたつやストーブを出す日を、毎年なんとなく決めていませんか。

立冬りっとうは十一月の上旬じょうじゅんにあたる節気せっきです。ここから立春りっしゅんの前日までが、暦のうえの冬になります。立春・立夏りっか・立秋りっしゅう・立冬という四つの入口のうち、これが一年の最後の一つです。

紅葉がちょうど見頃という地域も多く、体感はまだ晩秋ばんしゅうでしょう。それでも暦の側は、この日から冬の勘定かんじょうを始めます。おもしろいことに、この節気のまわりには暖房にまつわる話がいくつも集まっています。

立冬がわかる3つのこと

  1. 時期は十一月七日ごろから、小雪しょうせつの前日まで。 暦の冬は、ここが一日目です。
  2. 暖房を出す日を決める習ならわしがありました。 立冬のころの亥の日がそれにあたります。
  3. 東京の木枯こがらし一号は、多くの年がこの期間中。 街の空気が一段変わる合図です。

こたつを出す日が、決まっていた

立冬のころに来る亥の日には、おもしろい習わしが残っています。この日にこたつを出したり、囲炉裏いろりを開いたりすると火事にならない、というものです。

理屈りくつは陰陽五行いんようごぎょうから来ています。十二支じゅうにしの亥は水の性質を持つとされ、水は火を抑える。だから亥の日に火を使い始めれば、火災を避けられると考えられました。 江戸期えどきには、武家ぶけは最初の亥の日、町家は二番目の亥の日にこたつを出す、という使い分けまであったと伝わります。

火の扱いが家の存亡そんぼうに直結した時代の知恵です。そのまま今の暮らしに当てはめる必要はありませんが、暖房器具を出す日をあらかじめ決めておくという発想は、意外に実用的だと思います。

立冬の週にすませたい冬支度5つ

  1. 暖房器具を出して、いちど動かしてみる。 寒くなってからの故障がいちばん困ります。
  2. フィルターの埃を落とす。 効きが落ちるだけでなく、電気代にも響きます。
  3. 加湿の道具を出し、水を通しておく。 喉をやられる前に間に合わせます。
  4. 窓ぎわの隙間と、床からの冷えを一度確かめる。 手をかざせばすぐわかります。
  5. 寝具しんぐを冬のものへ替え、寝る場所の温度を上げる。 冷えたまま眠ると翌日に残ります。

冬のあいだ、何を守るか一つだけ決める

この時期に予定を減らすのは、後退とは違います。外へ向けていた分を、内側へ回す配分の変更です。

睡眠か、体温か、家族と過ごす時間か、お金か、静けさか。全部を守ろうとすると、どれも守れなくなります。 ひとつだけ選んでおくと、十二月の忙しさに入ってからの判断が速くなります。

立冬に決めておく4つ

  1. 温かい献立をひとつ決めて、今週の夕食にする。迷う時間が減ります。
  2. 部屋のあかりを、明るさより落ち着く色へ振る。日が短い時期の気分に効きます。
  3. 読みかけの本を、手の届くところに戻す。家にいる時間が延びる季節です。
  4. 年末までの予定に、入れない日を先に一日作る。後から空けるのは難しくなります。

冬支度を、朝と夜の順に見てみる

朝起きてから部屋を出るまで、夜帰ってから眠るまでを思い浮かべ、寒さが気になる場所を一つ選びます。寝具を先に替えるのか、部屋着を出すのか、暖房器具の手入ていれをするのか。使う順番で考えると、用意した物を置く場所も決めやすくなります。一度に冬仕様へ変えず、翌朝いちばん役立ちそうな支度したくから進める方法です。

冬の始まりは、三通りある

同じ「冬」でも、区切り方は分野によって違います。

暦のうえでは立冬から。気象の統計では十二月から二月までの三か月。天文の区分では冬至から春分まで。三つが並んで存在していて、どれかが間違っているわけではありません。何を基準にするかが違うだけです。

天気予報で「暦の上では今日から冬です」と言われても実感が伴わないのは、予報が使っている冬と、暦が指している冬が最初から別物だからです。

茶の湯では、ここが一年の初め

茶道では、十一月に大きな切り替えがあります。夏のあいだ使っていた風炉ふろをしまい、畳を切った炉に火を入れる。これが炉開ろびらきです。

同じ月に、その年に摘んだ茶を詰めた壺の封を切る口切くちきりも行われます。新しい火と新しい茶が揃うので、炉開きは茶人ちゃじんの正月と呼ばれます。ここでも亥の子餅いのこもちやぜんざいが使われ、暦の行事と作法さほうが結びついています。

旧暦きゅうれき十月の亥の日には、亥の子という行事も重なります。無病息災むびょうそくさいと子孫繁栄を願って亥の子餅を食べるもので、源氏物語げんじものがたりにも登場し、子を多く産む猪にあやかった祝いで、地域によっては子どもが石で地面を打って回る形で残っています。

一年の始まりを、元日ではない場所に置く。そういう暦の使い方が、茶の世界には残っているわけです。

山茶花が咲き、地面が凍る七十二候

七十二候しちじゅうにこうは、山茶始開つばきはじめてひらく、地始凍ちはじめてこおる、金盞香きんせんかさくと続きます。

山茶始開は、山茶花さざんかが咲き始めるころ。地始凍は、地面が凍り始めるころ。金盞香の金盞は金の盃を意味し、水仙すいせんの花の中心にある副花冠ふくかかんを指しています。水仙が香り始めるころ、という意味です。

咲く花が二つ、凍る地面が一つ。閉じていく季節のなかにも、開くものが数えられているのが目を引きます。ほかの花が少なくなる時期にわざわざ咲く花は、それだけで目印になったのでしょう。

よくある質問

Q. 立冬はいつですか

十一月七日ごろから、小雪の前日までです。これも太陽の位置から割り出す日付なので、年ごとに前後することがあります。

Q. 立冬に食べるものは決まっていますか

全国共通の行事食は伝わっていません。ただし立冬のころの亥の日には亥の子餅を食べる習わしがあり、和菓子店の店先に並ぶ地域もあります。

Q. 亥の日はどうやって調べますか

日ごとに割り当てられた十二支のことなので、暦やカレンダーの日付欄に記載きさいがあります。十二日ごとに巡ってくるため、立冬の前後には必ず一度は来ます。

出典

  • 国立天文台 暦計算室こよみけいさんしつ「暦要項れきようこう 二十四節気にじゅうしせっきおよび雑節ざっせつ」
  • 亥の子および炉開きに関する年中行事の一般的な解説
  • 各種歳時記さいじきにおける七十二候(山茶始開・地始凍・金盞香)の解説

読者が確認できる資料

国立天文台・2026年の二十四節気で日付を確認できます。節気は季節の目印で、各地の気温を指定するものではありません。

資料確認:2026年10月2日。