
天気予報の最低気温が三度と出ていたら、まだ凍らないから平気、と考えていませんか。
霜降は十月の下旬にあたる節気で、読みは「そうこう」です。二十四節気を春夏秋冬に六つずつ割ると、霜降は秋の六番目。つまり、秋の最後の一枚にあたります。 次に来るのは立冬です。
名前のとおり、霜が降り始めるころを指しています。ただし霜が降りる条件は、天気予報の数字とそのままは重なりません。ここに、この節気のいちばん実用的な話があります。
霜降がわかる3つのこと
- 時期は十月二十三日ごろから、立冬の前日まで。 暦のうえの秋は、ここで終わります。
- 予報が三度でも霜は降ります。 地表の温度は、百五十センチの高さで測る気温より低くなるためです。
- 霜は、露が凍ったものではありません。 水の段階を飛ばして、いきなり氷になります。
予報の数字より、地面のほうが冷えている
気温は地上一メートル半ほどの高さで測ります。ところが晴れて風のない夜は、地面が熱を空へ手放して、地表だけが先に冷えます。発表された最低気温が三度前後でも、地面に近い場所は氷点を割っていることがあるのはこのためです。
畑を持っている人が、予報の数字を見て前の晩に手を打つのは、この差を知っているからです。ベランダの鉢でも事情は同じです。
霜が降りる前に手を打つ5つ
- 鉢植えを軒下か壁ぎわへ寄せる。 空が開けた場所ほど冷えが強く出ます。
- 朝いちばんの水やりを控える。 濡れたまま冷えると、根も葉も傷みます。
- 夜のあいだだけ、不織布か新聞紙をかける。 一枚で数度ぶんの差が出ます。
- 車のフロントガラスに、前の晩からカバーをかける。 朝の五分が変わります。
- 玄関に手袋か厚手の上着をひとつ置く。 出がけに探す時間をなくします。
甘くなる野菜と、守るべき野菜
霜に当たると傷むものと、当たったほうがおいしくなるものがあります。ほうれん草や大根が寒さで甘みを増すのは、凍らないように体の中へ糖をためこむからです。反対に、里芋やさつまいも、夏の名残の実ものは霜で一気に傷みます。
守りたいものと、あえてさらすもの。この節気の畑仕事は、その見分けの繰り返しでした。台所の側から見れば、根菜と葉物がいちばん安くなって味も乗るのが、ちょうどこの半月ということになります。
霜は、凍った露ではない
ここから仕組みの話です。露ができるとき、空気中の水蒸気はまず液体の水になって草の上に残ります。ところが霜の場合、地表の温度が氷点を下回っていると、水蒸気は水の段階を飛ばして、そのまま氷の結晶になります。昇華と呼ばれる変化です。
露と霜は、同じ水からできても姿が異なります。霜の結晶が針のように、あるいは羽根のように広がるのは、水滴が凍った形ではないからで、拡大すると雪の結晶に近い姿をしています。
初霜が、冬の季語になっている事情
ややこしいのは、暦のうえでは霜降が秋の終わりなのに、俳句では初霜を冬の季語として扱うことでしょう。
季語の区切りが立冬にあるからというより、霜そのものが冬の景色として長く扱われてきたためです。同じ現象を、暦は秋の側に、句の世界は冬の側に置いている。ものさしが二本あるという例として、覚えておくと便利かもしれません。
秋の土用に入るのも、この節気のあいだです。立冬の前の十八日ほどが秋の土用にあたるので、霜降の期間とほとんど重なります。
葉の縁に近づいてみる
霜を見つけた朝は、まず一枚の落ち葉に目を向けてみます。白く見える部分に近づくと、縁や葉脈に沿った形を見つけられるかもしれません。写真を撮るなら、真上からの一枚に加えて、少し横からも眺めてみてください。日なたと日陰で見え方が違うか、昨日の朝にはあったか。場所と時刻を短く添えるだけで、霜降という言葉が、自分の暮らす土地の朝の記録になります。
気象庁の運用に、霜降が残っている
意外に思われるかもしれませんが、霜降は現代の気象業務のなかでも生きています。
木枯らし一号は、晩秋から初冬に初めて吹く、冬型の気圧配置による北寄りの強い風のことです。発表しているのは東京地方と近畿地方だけで、この二つで期間の定め方が違います。東京は十月半ばから十一月末まで。そして近畿は、二十四節気の霜降から冬至までと決められています。
気象の現場に、節気の名前がそのまま基準として入っている。暦が展示物ではなく、まだ使われている道具であることが、ここに一つ残っています。
時雨が通り、蔦が色づく七十二候
七十二候は、霜始降、霎時施、楓蔦黄と並びます。
霜始降は霜が降り始めるころ。霎時施の霎は、ふいに降ってすぐ止む雨のことで、時雨を指します。楓蔦黄は、カエデや蔦の葉が色を変えるころ。紅葉狩りの季節がここに重なります。
時雨は和歌でも扱いの重い言葉でした。降るとも降らぬとも言えない雨が、定まらない心に重ねられます。京都のような盆地では、この時期の時雨はほとんど毎日の風景で、山のふもとだけが濡れているような降り方をします。
よくある質問
Q. 霜降はいつですか
十月二十三日ごろから、立冬の前日までです。日付は天文の計算で出すため、その年によって一日ぶんずれます。
Q. 霜降の日に霜が降りるのですか
霜降の日に必ず降りるという意味ではないのです。北の地方や標高の高い場所から、そろそろ初霜の便りが届き始めるころ、という目安です。都市部の初霜はもっと先になります。
Q. 霜が降りそうな夜は、どこを見て判断しますか
よく晴れて風がなく、夕方の時点で空気が乾いている日が要注意です。前の晩のうちに鉢を移す、覆いをかけるといった手当てをしておくと間に合います。
出典
- 国立天文台 暦計算室「暦要項 二十四節気および雑節」
- 気象庁および各地方気象台による木枯らし一号の発表基準
- 各種歳時記における七十二候(霜始降・霎時施・楓蔦黄)の解説
読者が確認できる資料
国立天文台・2026年の二十四節気で日付を確認できます。節気は季節の目印で、各地の気温を指定するものではありません。
資料確認:2026年10月2日。