
土用丑の日と聞いて、鰻以外の選択肢を考えたことはありますか。
鰻の日として知られていますが、名前のどこにも鰻は入っていません。 夏の土用のあいだで、十二支が丑にあたる日を指す、それだけの呼び名です。
日付が毎年動くのは、干支の巡りと暦の日付が合っていないためです。丑は十二日ごとに回ってくるので、十九日ほどある夏の土用のなかには必ず一度は入ります。この日を、暑さの底で一度立ち止まる目印として使ってきたのが、この行事の中身でした。
夏の土用丑の日がわかる3つのこと
- 七月下旬から八月上旬のどこかに来ます。 干支の巡りで決まるため、毎年動きます。
- 年によっては二度あります。 先に来るほうを一の丑、あとを二の丑と呼びます。
- もともとは鰻に限りませんでした。 「う」のつくものなら何でもよい、という言い方でした。
精をつけるより、まず胃を守る
この日を、頑張って栄養をとる日として構えると、かえって体に負担がかかることがあります。暑さで弱っているのは体力より消化のほうです。
丑の日に気をつける4つ
- 食べたいものより、いま胃が受けつけるものを選ぶ。 重いものは翌日に響きます。
- 冷たい飲み物を続けて入れない。 一杯だけ温かいものに替えると胃が動きます。
- 食事の予定と一緒に、その日いつ休むかも決める。 食べただけでは戻りません。
- 疲れが食欲、眠り、機嫌のどこに出ているか見てみる。 出方で手当てが変わります。
行事食は、食べること自体より、立ち止まる口実として役に立ちます。暑さの底にある一日に、自分の体の具合を確かめる予定が最初から入っている。そう考えると、この習慣が長く続いてきた理由もわかる気がします。
「う」で始まれば、何でもよかった
丑の日には「う」のつくものを食べる、という言い方が古くから伝わっています。鰻がこの枠に収まったのはずっと後のことで、いまでは「う」の話ごと鰻に置き換わってしまいました。
記録に残る「う」のつく食べ物5つ
- 瓜。冬瓜や西瓜など、夏の食卓で親しまれる食材です。
- うどん。喉を通りやすく、食が細っているときでも入ります。
- 梅干し。ごはんに添えたり、料理の味付けに使ったりできます。
- 牛肉。「う」で始まる食材として挙げられることがあります。
- 馬肉。同じ理由で、地域によっては選ばれてきました。
食べたいものを、今日の献立へ。冷たいうどんに梅干しを添えたり、瓜の料理を用意したり、好みに合わせて行事食を楽しめます。
蜆、土用餅、土用卵など、土用に食べるものには地域ごとの習わしもあります。鰻を楽しむ日も、いつもの食材で献立を考える日も。夏の食卓に、好きな一品を選んでみてください。
家にある「う」から献立を決める
献立に迷ったら、冷蔵庫や食品棚にあるものを見てみます。うどんがあれば梅干しを添える、瓜があればいつもの小鉢にする。食べたい一品が決まってから、足りない材料だけを買い足すと支度がまとまります。家族と食べる場合も、全員が同じ品を選ぶ必要はありません。「今日はどの『う』にしようか」と話しながら、それぞれの好みを食卓に並べる楽しみ方もできます。
看板から始まる、源内の逸話
ここから由来の話です。夏に鰻を食べる習慣の元として、いちばん知られているのが平賀源内の話でしょう。夏場に売れない鰻屋に相談され、「本日丑の日」と書いた貼り紙を出させたところ繁盛した、というものです。
由来としては、春木屋善兵衛といううなぎ屋の話や、蜀山人が宣伝文句を書いたという話も伝わっています。土用の丑の日をめぐる逸話には、暑い季節の商いを工夫した江戸の町の姿が重なります。
図書館の資料案内では、こうした由来の話を読み比べられる本も紹介されています。いつもの行事食から、町の歴史へ寄り道してみるのも楽しそうです。
なお、鰻の旬はもともと秋から冬とされます。脂の乗る時期と、この行事の時期はずれています。売れない季節を売れる季節に変えた話として読むと、逸話の筋そのものは理屈が通っています。
丑の日が二度ある年の、数え方
土用に入って七日目までのあいだに丑が来ると、そこから十二日後にもう一度丑が回ってきて、期間内に収まります。この二回目が「二の丑」で、先に来たほうを「一の丑」と呼びます。
二度あるからといって意味が変わるわけではなく、日数と干支の割り算の結果にすぎません。飲食店にとっては売り時が二回になるので、店先の告知でこの言葉を見かけることが多くなります。日取りの仕組みそのものは夏の土用入りで扱っています。
よくある質問
Q. 夏の土用丑の日はいつですか
七月下旬から八月上旬のどこかです。日ごとの干支で決まるため、毎年日付が動き、年によっては二度あります。
Q. 鰻を食べないといけませんか
決まりではありません。もとは「う」のつくものを食べる日で、瓜やうどん、梅干しも同じ仲間です。蜆や餅を食べる習わしも残っています。
Q. 一の丑と二の丑で、意味は違いますか
違いはありません。土用の期間に丑の日が二度入っただけで、どちらか一方を選ぶ必要も、両方に何かをする必要もありません。
出典
- 国立天文台 暦計算室「暦要項 二十四節気および雑節」
- 国立国会図書館レファレンス協同データベース・土用の丑の日の由来
- 丑の日に「う」のつく食べ物を食べる習慣に関する年中行事の解説