花の咲く庭で移植ごてを布で拭く手と、空の鉢や手袋
土を休ませる日は、庭の道具を手入れする時間に。
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四月に環境が変わった人ほど、連休の手前で急に疲れが出てきていないでしょうか。

春の土用は、四月の中旬ちゅうじゅんに始まります。桜が終わり、田畑たはたの支度したくが本格化し、家庭菜園でも苗を植える頃合ころあいです。そこへ「土を掘り返すことを慎む」という言い伝えが重なります。畑がいちばん忙しい時期に、土を休ませよと言われる。 この合わなさが、春の土用をいちばんおもしろくしている点だと思います。

土用は一年に四度あり、春のものはその一つ目にあたり、終われば立夏で、暦のうえでは夏に入ります。

春の土用入りがわかる3つのこと

  1. 四月十七日ごろから始まります。 立夏りっかの前日までのおよそ十八日間です。
  2. 土いじりを慎む習ならわしがあります。 陰陽五行いんようごぎょうの考え方に基づく暦の言葉です。
  3. 戌の日に「い」のつくものを食べる、とも言われます。 夏の丑の日うしのひほどは広まりませんでした。

新年度のひずみが、出てくるころ

暦の理屈りくつから離れて暮らしを見ると、別の理由でこの十八日は目立ちます。四月に環境が変わった人にとって、ちょうど二週間から一か月が過ぎたあたりに入るからです。

  • 通勤や通学の道が、まだ体になじんでいない
  • 覚えることが多く、帰宅してからの時間が短くなっている
  • 気温の上下が大きく、服装の調整が追いつかない
  • 連休が近く、その前に片づけようとして予定が詰まっている

緊張していた分の反動が出るのが、たいていこのあたりです。頑張りが足りないのではなく、変化が続いたあとの当然の消耗しょうもうだと考えておくと、手当てあての仕方が変わります。

春の土用に効く4つ

  1. 眠る時刻を三十分だけ前へ戻す。 春は日が延びるぶん、寝るのが遅くなりがちです。
  2. 今週の予定から一つだけ外し、余白に変える。 埋めた予定より効きます。
  3. 靴やかばんなど、毎日使うものを手入ていれする。 新しく買うのは連休明けで十分です。
  4. 朝の光を浴びる時間を、五分だけ長くする。 生活の時計が戻りやすくなります。

戌の日に、白いものを食べるという話

四回の土用にはそれぞれ、決まった干支えとの日に決まった食べ物を合わせる言い方があります。春は戌の日に「い」のつくもの、あるいは白いもの。いちご、いも、いんげん、白身魚、豆腐、大根といったところが挙げられます。

この対応づけが暮らしの情報として広く紹介されるようになったのは、比較的最近のことです。古い文献ぶんけんにさかのぼれる習慣ではありませんし、夏の丑の日ほどの浸透もしていません。旬のものを食べる口実として使うぶんには具合がよく、それ以上の意味を持たせなくてよい種類の話です。春の山菜、新じゃが、新玉ねぎが店先に並ぶ時期なので、献立を決めるきっかけとしては悪くありません。

「掘り返さない」を、暮らしのほうに使う

土を大きく動かさないという考え方は、生活の側に置き換えると使い道があります。この期間は、暮らしの土台を作り直すより、いまの形のまま安定させることに向いています。

連休明けまで待ってよい4つ

  1. 模様替えと大きな買い替えを見送る。 判断力が落ちている時期に決めないことです。
  2. 新しい習慣を増やすのをやめる。 四月に始めたものが定着するのが先です。
  3. 人間関係の距離を、いま決めない。 疲れているときの判断は後で覆りがちです。
  4. 四月にうまくいかなかった場面を、掘り返さない。 深追いせず、明日の段取だんどりを一つ決めます。

土に触れない日の庭仕事

土を掘る作業を休む日は、道具を一つ手に取ってみます。移植ごてについた土を落とし、手袋の左右をそろえ、空いた鉢の置き場所を決める。これだけでも次の作業に取りかかりやすくなります。片づけの途中で、今ある鉢を眺めて、次にしたいことを一つ書いておくのもよいでしょう。新しく買うものを増やす前に、手元の道具と庭の様子を確かめる時間として過ごせます。

農作業の都合から出た決まりではない

ここから言い伝えの中身です。土用のあいだ、土公神どくじんという神が地中にとどまるとされ、穴を掘る、基礎をつくる、庭を大きくいじるといった作業を避ける習わしが伝わってきました。着工ちゃっこうの日取ひどりを気にする現場は今もあります。

土用を土の気が盛んな期間とする、陰陽五行の考え方が背景にあります。庭仕事の予定は、植物の育ち具合や天候も見ながら。道具を整えたり、これから植えたいものを調べたりする時間にもできます。

作業してよい日が、決められている

抜け道も最初から用意されています。期間中の特定の日は神が地上を離れるとされ、作業をしてもかまわない日として扱われました。これを間日まびと呼びます。日の選び方は季節ごとに決まっていて、春は巳・午・酉の日がこれにあたります。

禁忌きんきの側にきちんと逃げ道が組み込まれているところに、この習わしの性格がよく出ています。守らないと困ることが起きる類の決まりごとではないでしょう。工事や引っ越しの日取りを人と相談するとき、気にする人がいるかもしれない、という程度の距離で扱うのが実際的です。地域や家によって伝わり方も違い、まったく考慮しない現場もあれば、着工日を丁寧に選ぶ家もあります。

よくある質問

Q. 春の土用はいつからいつまでですか

四月十七日ごろから、立夏の前日までのおよそ十八日間です。立夏の位置から逆算して決まるので、始まりの日は年によって前後します。

Q. 春の土用に庭仕事をしてはいけませんか

してはいけない決まりではないでしょう。気になる場合は、巳・午・酉の日にあたる間日を選ぶという扱い方もできます。

Q. 春の土用に食べるものは決まっていますか

戌の日に「い」のつくものや白いものを食べる、という言い方がありますが、近年になって広まったものです。旬のものを選ぶ目安として使えば十分です。

出典

  • 国立天文台 暦計算室こよみけいさんしつ「暦要項れきようこう 二十四節気にじゅうしせっきおよび雑節ざっせつ」
  • 土用・間日および土公神の習わしに関する暦注れきちゅうの一般的な解説
  • 各季節の土用に結びつけられた食べ物についての近年の一般的な紹介