毛布を掛けて椅子に座り、冬の流星を見上げる日本人
座って待つ支度を整えて、冬の空へ。
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正月休みの終わりに、防寒をして深夜の屋外おくがいに立つ覚悟はあるでしょうか。

しぶんぎ座流星群りゅうせいぐんは、ペルセウス座流星群とふたご座流星群と並んで三大流星群に数えられます。極大きょくだいは一月の初め、正月休みの終わりごろに来ます。数のうえでは条件がそろえば一時間に数十個規模になりますが、実際に見られた年はそれほど多くありません。三大と呼ばれながら、いちばん当たりにくい群です。

当たりにくい理由ははっきりしています。活動が盛り上がるのが四時間ほどしかなく、その山が日本の夜に当たらない年があるからです。放射点ほうしゃてんはうしかい座とりゅう座の境界のあたり、北東の空から昇ってきます。

しぶんぎ座流星群がわかる3つのこと

  1. 山は四時間ほどで終わります。 前後数日にわたって数が多い群とは条件が違い、極大の時刻が日本の深夜から明け方に入る年を選ぶ必要があります。
  2. 見やすくなるのは深夜を過ぎてからです。 放射点が北東から昇るため、宵の口では高さが足りません。
  3. 母天体ぼてんたいがまだ確定していません。 三大流星群のうち、親が誰なのかはっきりしていないのはこの群だけです。

しぶんぎ座流星群を見る、4つの支度

一月の屋外は寒く、防寒がそのまま観察の成否せいひに響きます。

  1. 極大の時刻を先に調べ、深夜から明け方に当たる年に絞る。 山が昼間に来る年は、無理をしても数は増えません。
  2. 街の明かりが正面に来ない場所を選ぶ。 建物の影に入るだけでも、見える数が変わります。
  3. 座れる場所を確保し、空全体をゆったり見渡す。 流れ星は放射点の付近だけに現れるわけではありません。
  4. 手足と首を重点的に温め、温かい飲み物を持っていく。 目が暗さに慣れるまで十五分ほどかかるので、その前に帰りたくなると何も見えません。

条件を左右するものは三つあります。極大の時刻が日本の深夜から明け方に入っているか、放射点が空の高いところに来ているか、そして月明かりがないか。この三つがそろう年は、そう多くありません。

出る前に、防寒の支度を座って試す

観察で使う椅子に座り、手袋をしたまま飲み物を取り出せるか、ひざ掛けが足元まで届くかを確かめておきます。立っているときに足りていた服装でも、座って待つ場面では感覚が変わります。戻る時刻と休める場所も先に決め、持ち物を一袋にまとめておく。空を見る前の細かな支度したくを済ませておくと、現地で荷物を探す時間を減らせます。

年の初めに、現在地を測る

見られなかった年のほうが多い群なので、この日を「流れ星を見るための夜」と決めて構えると、空振からぶりが続きます。空を見上げる時間を確保できたこと自体を、この日の使い方にしてしまうほうが気楽です。

年始は、目標が増えやすい時期です。増やす前に、いまの現在地を書いておくと、一年のうちで比べる基準ができます。仕事、お金、体、人との関わり。それぞれについて、いま何点かではなく、いまどこにいるかを一行で書く。四分儀しぶんぎにちなむなら、点数より座標ざひょうです。

そのうえで、一月のうちに動かす一歩をひとつだけ決めます。年間の計画より、最初の一歩の大きさのほうが、この時期は効きます。空が曇って何も見えなかったとしても、その一行が書けていれば、この夜は無駄になりません。

名前だけが残った星座

放射点のあたりには、かつて「壁面四分儀座へきめんしぶんぎざ」という星座が設定されていました。流星群の名前はそこから付いています。四分儀は天体の高度を測る観測器具で、十八世紀末に星座として空に置かれたものです。

その後、星座は現在の八十八に整理され、壁面四分儀座は残りませんでした。星座のほうは消えたのに、流星群の呼び名として名前だけが空に残っている、という珍しい状態です。天文学の世界にも、こういう地層のような重なりがあります。

測る道具の名前が付いた流星群、と考えると、年始に見上げるのに悪くない群だと思います。願いを増やす前に、いまどこに立っているかを確かめる。四分儀が高度を測る器具だったことを思い出すと、年初めの使い方として自然に結びつきます。

母天体がまだ決まっていない

流星群のもとになるちりを放出ほうしゅつした天体を母天体と呼びます。ペルセウス座流星群やふたご座流星群では母天体が特定されていますが、しぶんぎ座流星群についてはまだ確定していません。

近年もっとも有力とされているのが、小惑星しょうわくせい番号一九六二五六番の小天体で、二〇〇三年に発見された仮符号2003 EH1として知られています。公転周期こうてんしゅうきは五年半ほどで、軌道の傾かたむきが大きい点を除けば短周期彗星すいせいに似た軌道を描き、活動を終えた彗星の芯が残ったものではないか、という見方もあります。ほかにマックホルツ第一周期彗星や、十五世紀に記録された彗星との関係を指摘する研究もあり、複数の候補が並んでいる状況です。

三大流星群のうち一つは、親が誰なのかまだ分かっていない。そう聞くと、毎年決まった時期に決まった方向から流れてくることのほうが、かえって不思議に思えてきます。

よくある質問

Q. しぶんぎ座流星群は、どうして見づらいと言われるのですか

活動が盛り上がるのが四時間ほどしかないためです。その山が日本の昼間に当たる年は、同じ日に空を見上げてもわずかしか現れません。

Q. しぶんぎ座という星座は、いまの空にありますか

ありません。かつて設定されていた壁面四分儀座に由来する名前で、星座が現在の八十八に整理されたときに外れました。呼び名だけが残っています。

Q. しぶんぎ座流星群は何時ごろに見るのがいいですか

放射点が北東から昇ってくるので、深夜を過ぎてからです。目が暗さに慣れるまで十五分ほどかかることも見込んで、外に出る時間を決めてください。

出典

  • 国立天文台「しぶんぎ座流星群」および流星群の観察方法に関する解説
  • 小惑星2003 EH1 と本群の関係についての各種天文報告
  • 星座の整理と壁面四分儀座に関する一般的な解説