冬の神社を前に、白い形代と封筒を持つ手元
祭典の日と形代の締切を分けて、年越しの支度を。
絵を大きく見る

掃除と買い出しに追われて、大晦日おおみそかが神社の日でもあることを忘れていませんか。

十二月三十一日は、掃除と支度したくと料理と挨拶が重なる一日です。その慌ただしさの陰に隠れがちですが、この日は神社にとって年二度の大きな神事の日でもあります。年越としこしの大祓(としこしのおおはらえ)です。

一年のうちに知らず知らず積もったものを祓はらい、新しい年を迎える身に戻す。 夏に行われるものと対になっていて、半年ずつで区切る仕組みになっています。当日の神社で何が行われ、自分は何をすればよいのかを、先に見ていきます。

大晦日・年越しの大祓がわかる3つのこと

  1. 中心にあるのは形代かたしろです。 人の形に切った紙に自分の穢けがれを移し、社へ納めます。
  2. 年内に納める期日きじつがあります。 多くの社が数週間前から形代を配り、当日より前に締め切ります。
  3. 除夜じょやの鐘とは別のものです。 同じ夜の行事ですが、鐘は寺の作法さほうで、拠って立つ考え方が違います。

形代に移して、社へ納める

年越しの大祓で参拝さんぱい者が受け持つのは、形代(かたしろ)です。人形(ひとがた)とも呼ばれ、十二月の初めごろから社頭しゃとうや町会ちょうかいを通して配られます。家族の人数分を受け取り、納めるときに初穂はつほ料を添えるのが一般的です。

形代を納める5つの手順

  1. 紙に自分の名前と年齢を書きます。 家族の分は、一人につき一枚を使います。
  2. 体の気にかかるところを、紙で撫でます。 肩でも腰でも、思い当たるところで構いません。
  3. 息を三度、紙に吹きかけます。 ここで移し終わりです。
  4. 決められた日までに社へ持って行きます。 郵送を受け付ける社もあります。
  5. 納めたあとは、何を移したか思い返しません。 追いかけるのは、預けた意味を打ち消す動きになります。

納められた形代は、川や海へ流す社もあり、焼納する社もあります。人が水に入って身を清める代わりに、紙を立てて流す形です。一年分をまとめて手放すこの作法は、年末の区切りに合っています。

参拝する日より先に、納める日を確認する

年末の予定表には、祭典の日と形代の締切を別々に書いておくと迷いません。家族の分をまとめるなら、人数を確かめてから受け取り、記入した形代と案内を同じ封筒に入れておく。郵送する場合も、社の案内にある期日から逆算して支度します。大晦日に参列さんれつするかどうかと、形代をいつ納めるかを分けて考えると、買い出しや帰省の予定とも合わせやすくなります。

大祓詞は、何を述べているか

祭典では大祓詞(おおはらえのことば)が奏上そうじょうされます。神職しんしょくが読み上げる長い祝詞のりとで、参列すれば外からでも聞こえます。

述べられているのは、積もったものが消えていく道すじです。風が雲を吹き払うように罪穢つみけがれが払われ、川の瀬を下って海へ運ばれ、海の底の神がそれを受け取って、跡形あとかたもなくしてしまう。消してくれるのではなく、遠くへ運んで戻らなくするという語り口です。

意味がすべて分からなくても差し支えありません。言葉の運びだけで場が変わるのが分かるはずです。

除夜の鐘とは、数え方が違う

同じ夜、寺では鐘が撞かれます。除夜の鐘です。混ざりやすいのですが、成り立ちは別々です。

鐘の数は百八。仏教でいう煩悩ぼんのうの数にあたり、一つずつ音で払っていくという組み立てです。年内に百七回撞き、最後の一つを年が明けてから撞く寺が多くあります。

一方、神社の大祓が扱うのは罪や穢れで、数を数えるという発想がありません。数えて減らすのが鐘、流して戻すのが祓。 同じ夜に、まったく違う二つのやり方が並んで行われているわけです。どちらか一方を選ばなければならない、という話でもないでしょう。鐘を聞いてから社へ参る人もいます。

冬の境内に、輪は立たないことが多い

夏の大祓では、境内けいだいに草で編んだ輪が据えられます。冬はこれを出さない社が多く、代わりに大祓詞の奏上と形代を納める作法が中心になります。

夏に立てた輪が季節の草でできていたことを思えば、冬に同じものを用意しにくいのは自然なことでしょう。ただし、年越しにも輪を据える社はあります。地域によって形が違うので、参る予定の社の案内を見ておくと迷いません。

晦日のなかの、最後の晦日

ここからは言葉の話です。晦日(みそか)はもともと、ひと月の最終日を指しました。ミソカは三十日と書き、月の終わりを表し、十二月のそれが一年の締めくくりにもあたるので、大をつけて大晦日と呼びます。

晦の字は、月が隠れることを意味します。ツゴモリという古い読みは月籠り(つきごもり)から来ていて、空から月が消える夜が、ひと月の終わりでした。暦が太陽の運行に切り替わってからも、言葉のほうには月の名残なごりが残っています。

大祓そのものも古い制度です。延喜式えんぎしきでは六月晦大祓として規定され、十二月もこれに准ずると記されています。大宝たいほう律令りつりょうの時代にはすでに形になっていたので、千三百年ほど続いてきた神事です。かつては京の朱雀門すざくもんの前に親王しんのう以下の官人が集まり、まとめて祓われました。

年神を迎える支度

大晦日の掃除は、年神(としがみ)を迎えるための支度でもあります。年神は新しい年とともに家へ来るとされる神で、門松かどまつはその目印、注連縄しめなわは清らかな場所を示す印、鏡餅かがみもちは依り代として置かれます。

十二月半ばの煤払すすはらいで大きな汚れを先に落とし、飾りは三十日までに整える。三十一日に飾るのは一夜飾いちやかざりとして避ける地域が多く、慌ただしく迎えるのが失礼にあたるという考え方から来ています。前日までに支度を済ませておくと、当日は静かに過ごす時間を取りやすくなります。

年越しそばの由来には諸説しょせつあります。細く長く延びる形に長寿を重ねる説、切れやすいので一年の苦労を断つという説、金銀細工師が散った金粉きんぷんを集めるのに蕎麦粉そばこを使ったことに由来する説。どれか一つに決まってはいません。

持ち越すものを決めておく

祓は、なかったことにする仕掛けではありません。起きたことは起きたまま、こちらの状態だけを整え直す作法です。だから、この日にすべてを片づけようとしなくてよいのです。

手帳やノートを開いて、来年へ持ち越すものと、ここで終わらせるものを分けてみてください。終わらせる側に入れたものは、書き出して線を引く。持ち越す側は、いつ手をつけるかだけ決めて閉じる。それだけで、年をまたぐときの荷物が軽くなります。

年が明けてからの参拝については元旦・初詣で、半年前の同じ神事は夏越の大祓で扱っています。

よくある質問

Q. 形代をもらいそびれました

社務しゃむ所に尋ねると、残っていれば当日でも受け取れます。数に限りがあるため、確実にしたいなら十二月の早いうちに問い合わせるのが確実です。形代を用意していない社もあるので、その場合は当日に参拝して手を合わせる形になります。

Q. 年越しの大祓に参列するのは何時ごろですか

社によりますが、夕方に営まれることが多く、一時間前後で終わり、年が明ける直前ではないため、参列してから家に戻り、年越しそばに間に合う組み方もできます。時刻は社務所で確かめられます。

Q. 大掃除が終わっていなくても参っていいですか

差し支えありません。掃除と神事は別の話で、家が片づいていないと祓われないという決まりはないからです。むしろ、片づけの手が止まったところで一度外に出るほうが、残りの時間の使い方が決まりやすくなります。

出典

  • 神社本庁じんじゃほんちょうによる大祓および大祓詞の解説
  • 延喜式にみえる六月晦大祓の規定
  • 年神を迎える正月飾しょうがつかざり、および除夜の鐘に関する一般的な解説