
信じたい話と、確かめられた話。この二つが同じ欄に並んだままになっていませんか。
海王星の逆行が始まります。五か月ほどのあいだ、海王星は星々を背景にして後ろへ下がるように見えます。占星術で海王星に結びつけられてきたのは、夢、直感、理想、癒し、そして境界のあいまいさです。神秘的な領域を受け持つ星とされることが多く、芸術や信仰の話と一緒に扱われることもあります。
この期間は、夢から醒める時間でも、直感が鈍る時間でもないと読まれてきました。信じたいことと、確かめられることのあいだに線を引き直す時間だと考えてください。理想を捨てなくて構いません。理想が立つための足場がどこにあるかを見る、というくらいの話です。
海王星逆行開始がわかる3つのこと
- 五か月ほど続き、戻る幅は三度足らずです。 一年で二度あまりしか進まない星なので、動きの大きさで期間の重さを測ることはできません。
- 空を見上げて確かめることはできません。 明るさは八等ほどで、双眼鏡でも星との区別がつきにくい。起きているのは暦の数字のうえでの向きの入れ替わりです。
- 扱う目盛りは、日々の予定より大きくなります。 一つの星座に十四年ほど留まる星なので、今週の出来事に落とし込もうとすると手に余ります。
海王星逆行で「感じたこと」と「確かめたこと」を分ける4つの手順
紙を縦に半分に折って、左と右に分けて書きます。
- 気になっている話について、自分がどう感じたかを左に書く。 言葉を選ばず、浮かんだままで構いません。
- 事実として確認できることだけを右に書く。 日付、金額、誰が言ったか。確かめられるものだけです。
- 右が空のままの項目には、確認する方法を一行足す。 誰に聞けばいいか、どこを見れば載っているか。
- どちらでもないもの、判断がつかないものは、そのまま置いておく。 消す必要はありません。
分けることが目的で、どちらかを消すためではありません。直感を疑う練習でもありません。左を残したまま右を埋めていくと、信じたい気持ちを守ったまま話を進められます。この期間に困りごとが起きるとしたら、感じすぎたからではなく、左と右がひとつの欄に混ざっていたからです。
誘いを受けたときの、二列の使い方
何かの集まりへ誘われた場面なら、左には「楽しそう」「少し気が重い」と感じたことを書きます。右には開催日、場所、参加時間など、案内で確認できたことを並べます。参加費や終了時刻がわからなければ、その点を主催者に尋ねる予定を足す。気持ちを消さずに条件を確かめると、何を知れば返事ができるのかが見えてきます。
やさしさで、線を消していないか
境界を扱う星の期間なので、人との距離も見ておきたいところです。
はっきり断らずに済ませた頼まれごと、いつ返すか決めていない貸し借り、なんとなく続いている相談相手の役。どれも優しさから始まっていることが多く、だから見直しにくい。ただ、線が消えたままの関係は、どちらかが疲れ切ったときに一度で終わることがあります。線を引くのは冷たさではなく、続けるための工夫です。
返事を保留にしているものがあれば、いつ答えるかだけでも決めてください。答えの中身は五か月かけて考えてよいのですが、期日が空欄のままだと、相手の側があいまいさを引き受けることになります。
十四年、同じ空気のなかにいる
海王星は太陽のまわりを百六十五年ほどで一周します。ということは、一つの星座に十四年ほど留まることになります。
十四年は、子どもが生まれてから中学生になるくらいの長さで、占星術でこの星が個人よりも時代の空気と結びつけて扱われるのは、それだけの年月をかけて同じ領域を進むからです。同じ時期を過ごした人が、似た憧れや似た理想を分け合っている、という言い方もされます。
ですから、この期間のテーマを日々の出来事に還元しようとすると、たいてい大きすぎて手に余ります。今週の予定に落ちるかどうかではなく、この何年か自分が何に憧れてきたか、という単位で考えるほうが話が合います。
数字のほうが先に見つけた惑星
海王星には、ほかの惑星と違う成り立ちがあります。望遠鏡で偶然見つかったのではなく、計算で居場所を当てられた星です。
天王星が発見されたあと、その動きが予測とわずかに合わないことが問題になりました。外側にもう一つ天体があって引っぱっているのではないか。そう考えて位置を計算したのがフランスのユルバン・ルヴェリエで、その数字をもとにベルリン天文台のヨハン・ガレとハインリヒ・ダレストが望遠鏡を向け、一八四六年九月に予測された場所のすぐ近くで実物を確かめました。数字で示された座標に、本当に星があった。天文学の歴史のなかでもよく引かれる出来事です。
つけ加えると、明るさは八等ほどで、肉眼では見えません。誰も見たことのない天体の位置を、ずれの計算だけで割り出したわけです。見えないものを扱うのに、感覚ではなく数字を使った。海王星という星の来歴は、この星に割り振られた意味とはむしろ逆の向きを向いています。
もっとも、予測に近い計算はイギリスのジョン・クーチ・アダムズも行っており、発見の手柄をめぐる議論が長く続きました。見えないものの居場所を先に主張したのは誰か、という争いです。境界のあいまいさを受け持つ星らしい始まり方だったとも言えます。
目では確かめられない出来事だからこそ
海王星の逆行は、空を見上げるだけでは確かめられません。明るさが八等ということは、双眼鏡でも星との区別がつきにくい水準です。しかも一年で黄道上を二度あまりしか進まないので、位置の変化は数か月かかっても指の幅ほどにしかなりません。
そう書くと意味がないように聞こえるかもしれませんが、そうでもありません。目に見えないものを扱うときに、暦という共通の目盛りがあるのは助かることです。感じたことだけを頼りにすると、日によって話が変わってしまいます。この期間を「自分の感覚を点検する五か月」と決めておくと、感覚を否定せずに扱えます。
輪郭を戻すための五か月
初日に書くのは一行で足ります。いま、いちばんあいまいにしていることをひとつ。
それが人との約束なのか、お金の話なのか、自分の将来についての言い方なのかは人によります。書いておけば、五か月後に順行へ戻る日に、輪郭がついたかどうかを見比べられます。ついていなくても構いません。あいまいなままにしておくと決めたのなら、それも一つの線引きです。
明けてからの扱いは海王星逆行終了へ続きます。感覚の使い方については瞑想の項目も参考になります。
よくある質問
Q. 海王星の逆行は、肉眼で見えますか
見えません。明るさは八等ほどで、望遠鏡か性能のよい双眼鏡が必要です。位置がわかっていても点にしか見えないので、暦の数字で追う天体だと考えてください。
Q. 海王星逆行の五か月で、何か決めたほうがいいですか
決めなくて構いません。この期間に向いているのは、感じたことと確かめられたことを分けて並べる作業です。結論は順行に戻ってからで間に合います。
Q. 海王星が一つの星座にいる期間はどのくらいですか
十四年ほどです。太陽を一周するのに百六十五年かかるため、十二の星座を一巡するのにそれだけの年月がかかります。
出典
- 国立天文台 暦計算室(海王星の視位置および留の日時)
- 海王星の発見の経緯に関する天文史資料(ルヴェリエの予測とベルリン天文台の観測)
- 天文年鑑(誠文堂新光社)海王星の光度に関する記載
- 西洋占星術の諸文献における海王星の象意についての説明