
仕事も家のことも進めているのに、なぜか手応えがない。そんな数週間が続いていませんか。
火星が逆行へ入ります。ここから七十日前後、火星は星々のあいだを後ろへ下がるように見えます。西洋占星術で火星が受け持つとされてきたのは、行動する力、競い合う気持ち、そして怒りです。欲しいものへ手を伸ばすときの押しの強さ、と言い換えてもいいでしょう。
この期間は「進めない時期」として案内されることが多いのですが、実際に増えるのは動けない場面ではなく、力の向きがずれていると気づく場面のほうです。頑張っているのに結果が出ない、急に苛立つ、体が思ったより重い。そういう形で表に出てきます。
しかも火星の逆行は、めったに来ません。次にめぐってくるのはおよそ二年二か月先です。前回の自分が何をしていたかを思い出せる、という珍しい間隔でもあります。
火星逆行開始がわかる3つのこと
- 七十日ほど続き、次は二年二か月後です。 六十日から八十日ほどで順行に戻ります。年に何度も来る周期ではないので、この期間に書いたものが次回まで残せます。
- 止まるのではなく、熱の配り先を選び直す期間です。 予定も運動も、全部やめなくて構いません。一段階だけ落として続けるほうが、あとの立て直しが軽くなります。
- 空では火星がいちばん目立つ季節にあたります。 逆行の真ん中あたりで地球と火星がもっとも近づき、赤い色がはっきりわかるほど明るくなります。
火星逆行の七十日で減らしたい4つのこと
やることを足すより、外すほうが効きます。
- 引き受けている予定を、期間中ひとつ外す。 断りにくいものではなく、外しても誰も困らないものから選びます。
- 運動の負荷を一段下げて、回数のほうを守る。 重さや距離を落として、続けている事実だけ残します。
- 言い返したい返事は、送らずに書き出すだけにする。 書いた紙は翌朝まで置いておきます。
- 始める前に、途中で止まっているものをひとつ終わらせる。 終わっていない用件は、思っている以上に力を吸います。
減らすと決めると、遅れるのではないかと不安になります。ただ、七十日で落とせる速度など知れています。疲れたまま押し切って怪我をしたり、勢いで送った一通で関係をこじらせたりするほうが、取り返しに時間がかかります。
気持ちより先に、体のほうが気づいている
火星は体力や筋肉と結びつけて語られてきた星です。そのため、この時期の変化は気分より先に体へ出ることがあります。
いつもの距離を走ると息が上がる。同じ時間眠っても疲れが抜けない。肩や腰の張りが取れない。こうした感覚は根性の問題として片づけられがちですが、たいていは配分の合図です。七十日を「体の言い分を聞く期間」と決めておくと、我慢し続ける流れから降りる口実になります。
急に重い負荷をかける、寝不足のまま追い込む、痛みを押して続ける。この三つを避けるだけでも、期間の終わりの状態はずいぶん変わります。
怒りを燃料にした決断を、三日あずける
腹が立っているときの決断は、たいてい早くて、たいてい粗いものになります。
辞める、切る、やり返す。どれも選択肢として悪くはありませんが、決めるのが今日でなければならない理由があるかだけは確かめてください。三日置いても同じ結論なら、それは怒りではなく判断です。
書き出すときは、何が起きたかと、何が嫌だったかを別の行に分け、事実と感情を並べると、自分が守りたかったものが見えてきます。相手に伝えるかどうかは、そのあとで決めれば間に合います。
もうひとつ見分けておきたいのが、競い合う相手を自分で選んでいるかどうかです。周りが先へ進んで見えて焦るとき、その相手は自分で選んだ相手でしょうか。たまたま目に入っただけの人と競う状態は、体力だけを使います。
逆行のさなか、火星は一年でいちばん明るい
ここが火星の逆行の面白いところです。空では、引っ込むどころかもっとも目立つ時期にあたります。
火星は地球より外側を回っていて、地球のほうが速く進み、内側の速い地球が外側の火星を追い抜いていく前後に、火星は天球上を後ろへ動いて見えます。追い抜く瞬間、地球と火星は互いにいちばん近い位置関係になります。太陽から見て地球の反対側に火星が来るこの配置を、衝といいます。
衝のころ、火星は日没ごろに東から昇り、真夜中に空の高いところを通り、明け方に西へ沈みます。一晩じゅう見えるうえ、距離が縮んでいるぶん明るさも増します。逆行の期間は、その衝をはさんだ前後に重なります。占星術で内向きとされる期間が、天文の側ではもっとも観測に向いた季節と重なっている。この食い違いを知っておくと、期間の受け取り方が変わります。
赤い色から、戦いの神の名がついた
火星に戦いの神の名がついたのは、その赤い色からだったと言われています。血や炎を思わせる色が、各地の神話で争いの神と結びつけられました。ローマのマルス、ギリシャのアレスがその代表です。
西洋占星術では、そこから行動力、闘争心、性的な欲求、そして怒りが火星に割り当てられてきました。どれも扱いにくい感情ですが、共通しているのは踏み越えられたくない線を守る働きがあることです。何かに腹が立つとき、そこには自分の線があります。この期間に怒りが目立つとしたら、その線がどこにあるかを教えてくれている、と読むこともできます。
なお、この整理は西洋占星術の一つの立場です。挑戦や独立を前に出す書き手もいれば、体力や健康の面から読む書き手もいます。
逆行に入る週に、三行だけ
ノートに書くのは、いま腹を立てていること、本当に守りたいもの、この期間に減らす行動。この三つです。
七十日後に順行へ戻る日、同じページを開いてください。腹を立てていた相手が変わっているか、守りたいものが残っているか。それを見比べるほうが、期間中の細かい記録より役に立ちます。止まっている自分を責める必要はありません。使う場所を選び直しているだけです。
順行に戻ってからの再開については火星逆行終了を開いてみてください。
暮らしの中で試すなら
強い言葉で返したくなったら、送信先のないメモに下書きを作ります。起きた出来事と、これから頼みたいことを別の段落にしてみましょう。読み返すときは、相手にしてほしい行動が一つに絞れているかを確かめます。返事を考える時間と、実際に送る時間を分けられます。
よくある質問
Q. 火星逆行のあいだは運動を休んだほうがいいですか
やめる必要はありません。強度を落として続けるほうが、完全に止めて後から立て直すより体は楽です。痛みが出ているときだけは、休むほうを選んでください。
Q. 火星逆行中に転職や独立を決めてもいいですか
決めても構いません。七十日という長さは、暮らしの予定を止めておくには長すぎます。ただ、怒りが理由になっている場合だけは、三日ほど置いてから同じ結論が出るかを確かめると安心です。
Q. 火星の逆行はどのくらいの間隔で来ますか
およそ七百八十日、二年二か月ほどの間隔です。惑星の逆行のなかでは間隔が長いほうで、前回の逆行のころの自分を思い出せる程度には離れています。
出典
- 国立天文台 暦計算室(火星の衝の日時と地心距離)
- 天文年鑑(誠文堂新光社)火星の視直径および光度の変化
- 西洋占星術の一般的な文献における火星の象意