
送ったつもりの連絡が相手に届いていなかった、という一日を過ごしたことはないでしょうか。
きょうから水星の逆行が始まります。三週間ほどのあいだ、水星は星空を背景にして、いつもと逆の向きへ進んでいるように見えます。占星術で水星に結びつけられてきたのは、言葉、連絡、書類、移動、学習といった「やりとり」の領域です。そのため、この日を伝え方や予定の組み方を点検する区切りとして扱う人が多くいます。
この期間を、連絡や予定の確認を増やす目印にしてみます。送る前に宛先を見直す、約束の日時を手帳と照らし合わせる。行き違いが気になるところから一つずつ確かめると、普段の仕事も丁寧に進められます。
水星逆行開始がわかる3つのこと
- 三週間ほど続き、年に三回から四回来ます。 一年のうち二か月前後は逆行中という計算になります。めったに来ない現象ではないのです。
- 止める期間ではなく、確かめる期間です。 予定を止めると一年の六分の一を空けることになります。手を止めるより、見直しの手数を一つ増やすほうが実際的です。
- 入り口の日は、天文でいう「留」にあたります。 進む向きが切り替わるため、空でほとんど動かなく見える数日があります。占星術が節目として扱うのはこの日です。
水星逆行が始まる日にすませたい4つの支度
やることは地味です。だからこそ、始まりの日にまとめて片づけておく値打ちがあります。
- 仕事や写真のデータを、別の場所にもう一組保存する。 機器の不調は逆行と関係なく起きますが、備えを思い出す日にはできます。
- 三週間のあいだに入っている移動に、出発時刻の余裕を足す。 乗り継ぎのある日程ほど先に見ておきます。
- 署名や申し込みを控えている書類の、期日と金額だけ読み返す。 全文を読み直さなくても、この二つで取り違えの多くは防げます。
- 送信前に一度読み直す、という自分向けの決まりを作る。 三週間限定にすると続けやすくなります。
どれも逆行と関係なく役に立つ習慣です。ただ、こうした作業には「やろうと思う日」が必要で、逆行入りの日はその口実として使いやすい。おまじないというより、点検日の設定として働きます。
「伝わっているつもり」を疑ってみる
もうひとつ、この時期に向いているのが、自分の伝え方を見ることです。
最近どこかで、説明が足りなかった場面はなかったでしょうか。返信を先延ばしにしているうちに、相手が別の受け取り方をしていた場面は。すれ違いが起きたときに相手の理解力の話にしてしまうと、そこで手が止まります。自分の言葉が相手の側でどう見えるかまで戻ってみると、直せるところが見つかります。
止まっている用件があるなら、止まった理由を書き出してみてください。条件があいまいだった、決める人が誰かはっきりしていなかった、期限を伝えていなかった。そのどれかが混じっていることが多いはずです。
予定の点検は、集合場所まで具体的に
たとえば「金曜の午後、駅で会う」という連絡なら、日にち、時刻、駅名、出口を確かめます。よく使う駅でも出口はいくつかあるので、目印を添えると待ち合わせ場所が伝わりやすくなります。確認した内容を一つの返信にまとめておくと、当日に探し直す手間が減ります。
予定を読み返す時間は、出かける直前だけでなく前日にも置けます。乗り継ぎを調べる用事と、相手に尋ねる用事を分けておくと、返事を待つ時間も予定に入れやすくなります。
後戻りして見えるのは、こちらも動いているから
実際に水星が軌道を逆走しているわけではありません。太陽系のどの惑星も、同じ向きに回り続けています。
にもかかわらず後戻りして見えるのは、観測しているこちら側も動いているからです。高速道路で、隣の車線をやや遅く走る車が、自分の車から見ると後ろへ流れていくように見える。あれと同じ関係が空でも起きています。水星は地球より内側を、地球より速く回っています。その水星が地球を内側から追い抜いていく前後に、天球上の位置が普段と逆の向きへずれて見えるのです。
この説明をはっきり書いたのは、太陽を中心に置いたコペルニクスでした。地球を中心にした古い宇宙像では、惑星が時おり後戻りする理由をうまく説明できず、複雑な仕掛けを積み重ねる必要がありました。逆行という言葉自体は、そのころから使われてきた観測用語です。
三週間ずつ、年に三度めぐってくる周期
水星が次の逆行に入るまでの一巡は、およそ百十六日です。そのうち逆行している期間は三週間前後で、残りは順行に戻っています。惑星の逆行のなかで水星の頻度がいちばん高いのは、水星がいちばん内側を速く回っているからです。追い抜く回数が多いぶん、後戻りして見える機会も多くなります。
逆行が起きる位置は毎回ずれていくので、どの星座で逆行するかも回ごとに変わります。同じ「水星逆行」でも扱われるテーマの色合いが毎回少し違うとされるのは、この位置の差によるものです。年に三回で四つの星座を順にめぐる並びになることが多く、その年ごとに繰り返し出てくるテーマがある、という読み方をする占星家もいます。
なお、水星は太陽から大きく離れない位置を動くため、肉眼で見つけるのは案外難しい天体です。日の出前の東の低い空か、日没後の西の低い空に、短い期間だけ姿を見せます。逆行のさなかは太陽に近づいているので、ほとんどの日は見えません。知名度と、実際の見つけにくさの落差は、この期間の性格をよく表しています。
伝令の神から来た言い伝え
水星に「伝令」の役割が与えられてきたのは、その名前にさかのぼります。ローマ神話のメルクリウス、ギリシャ神話のヘルメスは、神々の言葉を運ぶ役目を負っていました。商業や旅の守り神とされたことも、伝統的な解釈に反映されています。
占星術では、この時期を連絡や移動の予定を見直すころと読みます。旅程を開いて乗り継ぎを確かめる、返事を待っている連絡を読み返す。伝令や旅の神の名前にちなんで、そんな予定を置くのも一つです。
いつも使っている手帳や連絡先を開くと、後回しにしていたことが見つかるかもしれません。「週末に返事をする」「出発前に時刻を確認する」。次の予定へ書き添えておきます。
三週間をどう過ごすか
特別な作法は要りません。ノートを一ページ開いて、三行書けば十分です。
読み返したい連絡をひとつ。確認したい約束をひとつ。余白を足したい予定をひとつ。これだけ書いておけば、逆行が明けるころに何を点検するつもりだったかを思い出せます。急いで送りたくなった言葉があるときは、下書きのまま一晩置く。翌朝に読み返してそのまま送れるなら送ればいい。それだけで、この期間にありがちな後悔はかなり減ります。
現象そのものの成り立ちは水星逆行でも扱っています。順行に戻ってからの再開の順番は水星逆行終了へ続きます。
よくある質問
Q. 水星逆行のあいだに契約や申し込みをしても大丈夫ですか
問題ありません。一年の六分の一ほどが逆行中なので、避けていると暮らしが止まります。期日と金額をもう一度読む、控えを保存しておく。その二つで十分です。
Q. 水星逆行が始まる日はどうやって決まっていますか
天球上での動きの向きが切り替わる瞬間が計算されていて、その日時が暦に載り、前後の数日は位置がほとんど動かず、これを留と呼びます。
Q. いつも使う機器は、何を見直せばよいですか
大切なデータの保存先や、機器の更新のお知らせを確認してみましょう。調子が気になるものは、メーカーの案内に沿って点検や相談の予定を立てておくと安心です。
出典
- 国立天文台 暦計算室「暦象年表」(水星の視位置および留の日時)
- 天文年鑑(誠文堂新光社)水星の観測条件に関する記載
- 西洋占星術の諸文献における水星の象意についての一般的な説明