
幸運の星が逆行と聞いて、身構えてしまいませんでしたか。
木星が逆行に入る日です。占星術で木星に結びつけられてきたのは、広がること、学ぶこと、遠くへ行くこと、そして自分が何を信じているかという部分です。よい方向へ広げてくれる星として語られることが多く、幸運の星という呼び方も定着しています。
その木星が逆行に入ると、幸運が止まるのかと心配になるかもしれません。ただ、四か月というのは一年の三分の一です。 毎年やってくるこの期間を停滞と考えると、暮らしのかなりの割合が停滞になってしまいます。広げてきたものを一度数え直すための期間として置いてある、と考えるほうが実際の使い方に近いでしょう。
木星逆行開始がわかる3つのこと
- 期間はおよそ四か月。 日数にすると百二十日前後です。
- 一年に一度めぐってきます。 始まる時期は毎年ひと月ほど後ろへずれます。
- やることは増やすことではなく数えること。 広げてきたものの棚卸しに向いています。
広げたものを、いったん数える
逆行に入る日にやることは、増やすことではなく数えることです。
逆行に入る日に向く4つの棚卸し
- 申し込んだまま手をつけていない講座や本を、全部書き出す
- 進行中の予定のうち、自分が本当に関わりたいものに印をつける
- 「いつか行きたい」で止まっている場所を、日付の入る形にするか、いったん外す
- 誰かに勧められて始めたことが、いまも自分の役に立っているか確かめる
数えてみると、たいていは思ったより多いはずです。木星の逆行が四か月と長いのは、この棚卸しに時間がかかるからだと考えると腑に落ちます。 一日で片づく作業ではないのです。
減らすことが目的ではないので、無理に整理しなくても構いません。ただ、四か月後に順行へ戻る日までに、どれを続けるかを決めておくと、その先の広げ方が変わります。
増やすより、深くする
この期間に向いているのは、新しく手を広げるより、すでに持っているものを詳しく語ることです。
読みかけの本を最後まで読む。習っていることの基礎に戻る。一度学んだ内容を、自分の言葉で説明し直してみる。どれも派手ではありませんが、四か月かければ、身についているかどうかがはっきりします。木星の学びが表面的になりやすいのは、次から次へと関心が移るからです。逆行の期間は、その勢いにいったん歯止めがかかる時間として使えます。
信じていることを点検するのも、この期間らしい作業です。前は正しいと思っていた考え方が、いまの自分にも合っているか。誰かの受け売りのまま持ち続けている前提はないか。答えが出なくても構いません。問いを持ったまま四か月過ごすこと自体が、木星の領域に合っています。
幸運を待つ時間にしない
木星を幸運の星と呼ぶ習慣は根強く、逆行に入ると「今年の運がしぼむ」と受け取る人もいます。ここは丁寧に切り分けておきたいところです。
木星は、伝統的な占星術で吉星に分類されてきた、幸運の星です。逆行を運が止まる期間と読むより、自分で選ぶ余地が増える期間と読むほうが、四か月の使い道が広がります。
そもそも、外から来る幸運を待つ姿勢は、木星の性質とあまり合いません。この星が受け持つのは、視野を広げることや学ぶことのように、自分から取りに行く種類の豊かさだからです。逆行の期間に手を止めるとしたら、それは待つためではなく、次にどこへ広げるかを選ぶためだと考えてください。
逆行に入る日の三行
ノートに、続けたい学びをひとつ、いったん止める予定をひとつ、四か月かけて深めたいことをひとつ。
長い期間なので、書いたことを忘れます。だからこそ紙に残しておく価値があります。順行に戻る日にもう一度開けば、四か月で何が残ったかが自分の字で確認できます。
一年に一度、そのたびに一か月ずつ後ろへずれる
ここから仕組みの話です。
木星が逆行に入るまでの一巡は、およそ三百九十九日。一年よりわずかに長いので、木星の逆行は毎年一度めぐってきますが、始まる時期は毎年ひと月ほど後ろへずれていきます。
逆行している期間は四か月ほど、日数にすると百二十日前後です。この長さは、外側を回る惑星に共通する性質から来ています。地球が内側から追い抜いていくとき、相手の惑星の動きが遅いほど、追い抜きにかかる時間の割合が大きくなる。だから遠い星ほど、後戻りして見える期間も長くなります。
木星は太陽のまわりを約十二年で一周するので、一つの星座に一年ほど滞在し、逆行の四か月は、その滞在期間のちょうど三分の一にあたります。同じ星座にいるあいだに、進んで、戻って、また進む。木星が一つの領域を三度なぞっていくこの形は、占星術で「同じテーマを三段階で扱う」と読まれてきました。一度目で広げ、二度目で見直し、三度目で定着させる、という具合です。
空では、いちばん見やすい季節
逆行のさなか、木星は観測にもっとも向いた時期を迎えます。
地球が木星を追い抜くとき、二つの星は互いにいちばん近い位置関係になります。このとき木星は日没ごろに東の空から昇り、夜通し見えています。距離が縮んでいるぶん明るく、小さな望遠鏡でも縞模様や四つの大きな衛星がとらえられます。ガリレオが望遠鏡を向けて衛星を見つけたのも、こうした時期でした。
内側へ向かう期間だとされているさなかに、空ではもっともよく見える。この対比は、期間の性格を考えるうえでひとつの手がかりになります。広げるのをやめる時間ではなく、手元にあるものがよく見える時間だと受け取ることもできます。
木星が「広げる星」とされてきた理由
木星は、太陽系でいちばん大きな惑星です。ほかの惑星をすべて合わせたよりも重い。占星術がこの事実を知る前から、木星には主神の名が与えられていました。ローマのユピテル、ギリシャのゼウスです。
そこから、木星には拡大、寛容、豊かさ、高等な学問、遠い土地との縁といった意味が振られてきました。同時に、行きすぎや過剰も木星の領域とされます。広げる力は、放っておけばどこまでも広がるからです。予定を詰めすぎる、引き受けすぎる、期待をかけすぎる。木星の負の面として挙げられるのは、たいてい「多すぎる」という形をとります。
なお、この整理は西洋占星術に沿ったものです。東洋の暦にも木星を基準にした年の数え方があり、扱い方は体系ごとに異なります。
明けたあとの広げ直しについては木星逆行終了で扱っています。
暮らしの中で試すなら
読みかけの本を選ぶときは、残りのページ数より、何を知りたくて開いた本なのかを思い出してみましょう。いまも気になる問いがあれば、目次からその章へ戻ります。読み終える順番にこだわらず、分かったことを一行にしておくと、次に調べたい点も見えてきます。新しい本を探す前に、手元の一冊を使い直す方法です。
よくある質問
Q. 逆行のあいだは新しいことを始めないほうがいいですか
そう決まってはいません。始めるなら、いま手元にあるものと地続きのものを選ぶと、四か月後にも残りやすくなります。
Q. 木星は本当に後戻りしているのですか
軌道を後戻りしているのではなく、地球が内側から追い抜くときに、そう見える期間があるという話です。
Q. 四か月の振り返りは、何を残せばよいですか
始めの日に選んだ学びと、その間に読んだ本や試したことを短く残しておきます。順行に戻る日に並べて見ると、続けたいことを具体的に選べます。
出典
- 国立天文台 暦計算室(木星の衝および留の日時)
- 天文年鑑(誠文堂新光社)木星の観測好期に関する記述
- 西洋占星術の諸文献における木星の象意