
レジではあんなに欲しかったのに、家に着くころには色あせて見えた買い物が、思い当たらないでしょうか。
金星の逆行開始は、見かけの動く向きが切り替わる日です。その後四十日ほど、金星は星々を背景にして後ろへ下がっていくように見えます。占星術で金星に結びつけられてきたのは、愛情、人との親しさ、美しさの感覚、そしてお金の使い方です。自分を大切に扱えているかどうか、という自己評価の領域まで含めて語られることもあります。
この期間の性格は「進めない」ではなく、基準を確かめるに近いところにあります。誰を大事にしたいのか。何にお金を払うと納得できるのか。何を身につけているときに自分でいられるのか。ふだんは考えずに選んでいる部分に、いったん目を向ける四十日です。
金星逆行開始がわかる3つのこと
- 次に来るのは一年七か月ほど先です。 逆行の期間は四十日から四十二日ほど。逆行中の日が一日もない年もある、間隔の空いた周期です。
- 勢いと納得を分けるための時間差をつくる期間です。 買わない、送らないと決めなくて構いません。判断のあいだに一晩をはさむだけで十分です。
- 金星の姿が、夕方の空から朝の空へ移ります。 逆行の途中で地球と太陽のあいだを通り、宵の明星から明けの明星に変わります。目で確かめられる数少ない逆行です。
金星逆行の四十日で、一晩あずけたい4つのこと
行動としては、決めないことが中心になります。
- 欲しくなったものは、その場で買わずに一晩置く。 翌朝も同じ気持ちなら買えばいい、という決め方にします。
- 髪型や施術など、後戻りしにくい変更は日を改める。 元に戻すのに時間もお金もかかるものほど、期間の外へ回します。
- 連絡を取りたくなった相手には、下書きのまま寝かせる。 送るか送らないかは、書いたあとに決めれば間に合います。
- 定期的に払っているお金を一覧にして、いま見て納得できるか確かめる。 見るだけで、解約は後日でも構いません。
四十日のあいだ何も買わない、という話ではありません。この期間に効くのは、欲しさと納得を分けるための時間差です。金星は快さを受け持つ星とされますが、快さは判断を早める方向にも働きます。
支出は、払ったあとの気分の順に並べる
見直しを削る作業だと思うと、気が重くなります。金額の大きい順ではなく、払ったあとの気分の順に並べてみてください。
払って嬉しかったもの、払った覚えすら薄いもの、なんとなく続いているもの。この三つは、並べ替えるとはっきり分かれます。金額が小さくても気分が沈むものは、そこに払っている気持ちの目減りが数字より大きいということです。逆に、高くても毎回満足しているものは、この四十日のあいだに削る候補には入りません。
戻ってきたものを、そのまま答えにしない
この期間には、昔好きだったもの、しばらく会っていなかった人、以前の暮らしの記憶が戻ってきやすいと語られてきました。過去との再会をこの時期の特徴として挙げる占星家は多くいます。
ただ、戻ってきたことと、いま選ぶべきことは別です。懐かしさは強い感情で、判断を引っぱる力があります。連絡が来たなら、まず「なぜ今なのか」を自分の側で考えてみる。会うかどうかを決めるのは、そのあとで構いません。
同じことは物にも言えます。昔の自分が好きだった服が急によく見えることがありますが、いま似合うかどうかは別の話です。過去は、いまの基準を確かめるための比べる材料として使うと役に立ちます。
宵の明星が消えて、明けの明星として戻ってくる
金星の逆行には、目で確かめられる変化がついてきます。
逆行が始まるころ、金星は日没後の西の空にいます。「宵の明星」と呼ばれる姿です。逆行が進むにつれて金星は太陽との見かけの距離を縮め、期間の中ほどで地球と太陽のあいだを通り過ぎ、この位置関係を内合といいます。内合の前後は太陽の光に紛れて見つけられません。そして逆行の終わりにさしかかるころ、今度は夜明け前の東の空に現れます。これが「明けの明星」です。
同じ星が、宵の空から消えて、朝の空に生まれ直す。古代の各地でこの二つが別々の星として名づけられていたのは、その見え方のためでした。逆行の期間が、いったん引っ込んでから姿を変えて戻る時間として語られてきた背景には、この観測の実感があります。
八年で描かれる、五つの点
もうひとつ、金星の周期には目を引く性質があります。
五百八十四日の周期を五回繰り返すと、ほぼ八年になります。地球の八年と、金星の五周期がきれいに近い。その間に内合が起こる五つの位置は、黄道をおおよそ五等分するように分かれます。内合が起きた順にその位置を線で結ぶと五芒星に近い形になることから、金星の五芒星と呼ばれ、しばしば図にも描かれます。
厳密にぴったり重なるわけではなく、少しずつずれていきます。それでも、八年前の金星逆行が自分の身の上で何と重なっていたかを思い出してみるのは、この期間の使い方として悪くありません。当時大事にしていたものが今もそうなのか、それとももう手放しているのか。八年という間隔は、それを確かめるにはちょうどいい長さです。
金星が愛と美を受け持つようになるまで
金星に愛の女神の名がついたのは、その明るさが理由だったと考えられています。太陽と月を除けば、空でいちばん明るく見える天体です。バビロニアではイシュタル、ギリシャではアフロディーテ、ローマではウェヌスと結びつけられ、その系譜が西洋占星術の解釈に受け継がれてきました。
そこから、金星は愛情や親しさ、美しさの感覚を受け持つ星と位置づけられます。加えて、価値のあるものを見分ける働き、つまりお金や持ち物との関わりも同じ星に振られています。愛と金銭が一つの星にまとめられているのを不思議に思うかもしれませんが、どちらも「何に価値を置くか」という一点でつながっています。誰と一緒にいたいかも、何にお金を払うかも、自分の価値の順位が表に出た結果です。
この読み方は西洋占星術の伝統に沿ったもので、恋愛を中心に読む立場もあれば、自己評価や金銭感覚に重心を置く立場もあります。逆行の期間に自分が引っかかっている領域から入るのが実際的でしょう。
始まりの日に書く三行
ノートに三行だけ書いてください。大切にしたい関係をひとつ。見直したい支出をひとつ。いまの自分に合う装いや部屋のあり方をひとつ。
寂しさから誰かに連絡したくなったとき、見栄で何かを買いたくなったとき、この三行に戻れば判断の材料になります。四十日後、順行に戻る日にもう一度開いて、変わったところと変わらなかったところを見比べる。それが、この期間のいちばん実用的な使い方です。
明けたあとの選び直しについては金星逆行終了をどうぞ。
買い物の前に、手元の好きなものを見る
新しいものが気になる日は、すでに持っているお気に入りを一つ出してみます。色が好きなのか、使いやすいのか、手触りが落ち着くのか。何度も手に取る理由を考えると、これから選ぶものの好みも見えてきます。
欲しいものを思い浮かべたら、どんな日に使いたいかも一緒に。通勤のとき、家で休むとき、誰かに会うとき。実際の場面を考える時間を挟むと、楽しみにしていることが少し具体的になります。
よくある質問
Q. 金星逆行のあいだに買い物をしてはいけませんか
してはいけない、という決まりではありません。高額なものや戻しにくいものだけ一晩あずけて、翌朝も欲しければ買う。この扱いで四十日は十分に回ります。
Q. 金星逆行中に髪を切ったりネイルを変えたりしても平気ですか
平気です。ただ、縮毛矯正や大きなイメージ替えのように元へ戻しにくい変更は、期間の前後にずらす人が多くいます。迷っているなら見送りで構いません。
Q. 金星逆行はどうして「元恋人から連絡が来る」と言われるのですか
金星が過去の関係や価値の見直しを受け持つとされ、逆行を再会と結びつける読み方が広まったためです。連絡が来たかどうかより、いま会いたいかどうかで決めるほうが後悔が残りません。
出典
- 国立天文台 暦計算室(金星の内合および留の日時)
- 天文年鑑(誠文堂新光社)金星の光度と出没時刻に関する記載
- 占星術の諸文献における金星の象意についての一般的な説明