湯気の立つ小豆粥と、白と桃色の餅花を飾った冬の食卓
正月の支度を終えた食卓に、ひと息つく時間を。
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お正月は三が日で終わり、と思っていませんか。

一月十五日は小正月(こしょうがつ)といいます。元日を中心とした期間を大正月おおしょうがつと呼ぶのに対しての名前で、正月の行事はここでひととおり終わり、松の内が十五日までとされる地域では、この日が飾りを外す区切りにもなります。

大正月が公の色を帯びた正月だとすれば、小正月は家と土地に近い正月です。 派手さはありませんが、残っている習ならわしの中身は濃く、地域ごとの違いもはっきり出ます。小豆粥あずきがゆを炊く、餅花もちばなを飾る、正月飾しょうがつかざりを焚き上げる。この三つが柱です。

小正月がわかる3つのこと

  1. 食べるものは小豆粥です。 赤い色に邪気じゃきを退ける力があるとされ、この日の粥として古くから伝わってきました。
  2. 正月飾りを火に託して送る日です。 どんど焼き、左義長さぎちょう、とんどなど、土地によって呼び名が変わります。
  3. 女正月おんなしょうがつという別名べつめいがあります。 年末から続いた支度したくでくたびれた人が、ようやく休む日という意味合いです。

小豆粥を炊く

小豆の赤には邪気を退ける力がある。この見方は赤飯や祝いの膳にも通じるもので、小正月の粥はその代表格です。『土佐日記とさにっき』にも十五日の粥への言及げんきゅうが見えるので、かなり古くから続いてきた献立ということになります。

小豆から煮ようとすると半日仕事になりますが、そこまでしなくても形にはなります。

  • ゆで小豆の缶や真空パックを使えば、煮る手間はまるごと省ける
  • 塩をひとつまみ加えると、甘くしなくても食べやすい味に落ち着く
  • 餅を入れるなら、鏡開かがみびらきで下げた餅の残りを使うと片づく
  • 朝に間に合わなければ、夜の献立に回してかまわない

赤い色に意味を見る、という一点さえ受け取れれば十分です。特別な材料を買いそろえる必要はありません。

餅花と繭玉を飾る

小枝に小さな餅や団子を刺して飾るのが餅花(もちばな)です。養蚕ようさんの盛んな地域では繭に見立みたてて繭玉まゆだまと呼び、その年の繭がよく実るようにと願いを込めました。米や作物の稔みのりを、あらかじめ形にして飾っておくという発想です。

枝は柳や水木がよく使われます。白い餅と紅い餅を交互に刺すと、花が咲いたように見え、子どもと一緒に作れる飾りなので、正月の名残なごりとして一週間ほど置いておく家もあります。

どんど焼きに正月飾りを持っていく

正月飾りや書き初めを持ち寄って燃やす行事が、この時期に各地で行われます。左義長(さぎちょう)という呼び名は、青竹を三本立てて焼いたことに由来する三毬杖さぎちょうから来たとされます。土地によって、どんど焼き、どんどん焼き、とんど、さいと焼きと呼び方が変わり、九州には鬼火焚ひたきという名前も残っています。同じ行事がこれだけ違う名前で呼ばれているのも珍しいことです。

焼く意味として語られるのは、煙に乗って年神としがみが天へ帰るというもの。迎える行事があるなら送る行事もある、という対の考え方です。その火で焼いた餅を食べると一年を健やかに過ごせる、書き初めの紙が高く舞い上がると字が上手になる、といった言い伝えも添えられてきました。

どんど焼きへ行く前に確かめる4つのこと

  1. 日時を先に調べます。 十四日の夜から十五日にかけてが多いものの地域差があり、近年は防火や煙の都合で日を移す例も増えました。
  2. 場所は主催によって変わります。 神社の境内けいだい、河川敷、学校の校庭など、その土地の慣例かんれいで決まります。
  3. 持ち込めるものに決まりがあります。 プラスチックや金属を含む飾りは受け付けない場合があります。
  4. 受付の時間を確かめておきます。 前日までに集積場所へ置く形をとるところもあります。

女正月と呼ばれた背景

小正月には女正月(おんなしょうがつ)という別名があります。年末から松の内にかけて、客をもてなし、料理を作り、家を回してきた人がようやく休む日、という意味合いです。大正月を男正月と呼んで対にする言い方もあります。

関西を中心に残ってきた呼び名で、この日に女性が里帰りをしたり、女性同士で集まって食事をしたりする地域がありました。裏を返せば、正月の支度が特定の人に偏っていた事情が、そのまま行事の名前になっているということでもあります。

いま同じ形で受け取る必要はないでしょう。ただ、大きな行事のあとに休む日をあらかじめ暦へ組み込んでおくという発想は、いまでも使えます。年末年始の準備を引き受けた人が誰なのかを思い出して、その人が何もしなくてよい一日にする。そういう使い方なら、名前の古さは気になりません。

満月を年の初めとしていたころの名残

なぜ十五日なのか。中国式の太陰太陽暦たいいんたいようれきが入る前、望(もち)の日、つまり満月の日を月の初めとしていた名残だという説明が知られています。

旧暦きゅうれきでは月の満ち欠けが日付そのものなので、十五日はおおむね満月にあたりました。年の初めの満月を正月と数える感覚が、朔(さく)を月初とする暦に移ったあとも十五日という日付に残った、という筋道すじみちです。そう考えると、小正月は「古いほうの正月」ということになります。

行事の中身も、この見方を裏づけます。小正月に集まっているのは豊作を願うもの、一年の作柄さくがらを占うもの、火を焚くものが中心で、農耕のうこうの暦と結びついた色が濃く出ています。門松かどまつと初詣はつもうでで始まる大正月とは、性格がだいぶ違うわけです。

正月の飾りを外し、火に託して送り、粥を食べて締める。小正月がやっているのは、始まった何かをきちんと終わらせることです。年末年始で崩れた生活のうち、戻したいものを一つだけ選んでみてください。眠る時刻でも、食事の量でも、家計の記録でも、どれでもかまいません。三つ選ぶと続きませんが、一つなら残ります。

暮らしの中で試すなら

正月の支度を多く引き受けた人が休めるよう、粥を用意する人と食後に洗う人を別に決めてみます。休む人に献立や片づけ方まで尋ね続けないよう、必要なものは先に確認しておきましょう。行事食を簡単にして、食後にゆっくり座れるところまで用意すると、女正月の話も今の暮らしにつながります。

よくある質問

Q. 小正月にはどんな食べ物を用意しますか

小豆粥が代表です。餅を入れて食べる地域も多く、鏡開きで下げた餅を使うと無駄が出ません。餅花や繭玉のように、飾ってから後で食べるものを作る土地もあります。

Q. どんど焼きに行けないときは、正月飾りをどうしますか

多くの神社では、期間中に古い飾りやお札を持ち込める窓口を設けています。それも難しい場合は、白い紙に包み、塩を振ってから家庭ごみとして出す形が広く案内されています。

Q. 女正月には、いまでも何かする土地がありますか

関西を中心に、この日に集まって食事をする習わしが残っている地域があります。行事として続けていなくても、正月の支度を担った人を休ませる日として使う家は少なくありません。

出典

  • 小正月と大正月の対比および望の日を月初とした暦についての民俗みんぞく研究の記述
  • 左義長・どんど焼きの呼称こしょうと作法さほうに関する各地の行事案内
  • 『土佐日記』における十五日の粥の記述
  • 餅花・繭玉と養蚕地帯の予祝よしゅく行事についての解説