
見えている景色を、そのまま名前にした節気です。
清明は「清浄明潔」という四字を縮めたものと説明されます。空気が澄み、光が強くなり、草木の緑がはっきり見えてくる。その状態を四月上旬に割り当てたのが、この呼び名です。
日本の本土では、清明を特別な日として過ごす習慣がほとんどありません。ところが東アジア全体で見ると、この節気は一年でも有数の大きな行事日です。同じ暦を共有しながら、行事の重みが地域によってここまで違う例は珍しく、それがこの節気の見どころでもあります。
清明がわかる3つのこと
- 時期は四月五日ごろ。 春分の次、穀雨の前にあたります。
- 意味は「清らかで明るい」。 抽象的な形容ではなく、見上げたときに実際に見える状態からきています。
- 沖縄では大きな行事の日。 一族が墓前に集まる清明祭、通称シーミーが行われます。
沖縄のシーミー、墓前にごちそうを広げる日
沖縄本島の中南部では、清明の節気に清明祭という行事があります。地元ではシーミー、首里の周辺ではウシーミーと呼ばれます。十八世紀の半ばに中国から伝わったとされ、王府が取り入れたのち各地へ広まったと記録されています。
一族が共有する門中墓の前に世帯ごとに集まり、重箱に詰めた料理と餅、花や酒を供えます。拝みが済んだあとは、供えたごちそうを墓前でみんなで食べます。屋外で敷物を広げて食事をする光景は、初めて見ると行楽のように映りますが、祖先も一緒に食卓に着いているという考え方に沿った作法です。
墓前で笑いながら食事をする光景は、本土の墓参りの感覚とはかなり違います。どちらが正しいという話ではなく、先祖との距離の取り方が地域によって違うというだけのことです。
中国と台湾では、祝日になっています
中国では清明節が祝日に定められており、家族で墓に参って掃除をし、供え物をする日として広く守られています。
特徴的なのは、先祖供養の「掃墓」と、野に出て春の景色を楽しむ「踏青」が同じ日に並ぶこと。しめやかさと行楽が同居しています。 台湾でも民族掃墓節と呼ばれ、休日に定められています。
日本のお彼岸は仏教の行事として墓参りと結びつきましたが、こちらは節気そのものが墓参りの日になっています。同じ春の供養でも、拠って立つ暦の仕組みが違うわけです。
本土で清明が行事にならなかった理由としては、春の彼岸がすでに供養の日として定着していたことが挙げられます。仏教の行事暦と節気の暦、どちらを軸にしたかという違いが、そのまま今の習慣の差を作りました。
この時期の空気を、家に入れる
清明は、掃除と相性のよい節気です。名前が清らかで明るいのだから当然かもしれませんが、実務的にも根拠があります。花粉の第一波が落ち着き始め、梅雨の湿気にはまだ遠い。 窓を開けて拭き掃除をするのに、これ以上ない条件がそろう時期です。
乾いた風が通るうちにやりたい4つ
- カーテンとレースを洗って、光の通りを変える
- 冬物の上着を、しまう前に一度陽に当てる
- 会えていない家族に、写真を一枚送ってみる
- 墓や仏壇があるなら、彼岸とは別に一度手を合わせる
梅雨に入れば、拭いた場所はまたすぐ湿り、だからこそ、乾いた風が通るこの短い期間に手をつけておく値打ちがあります。
燕が来て、虹が見え始める
七十二候では、清明の最初に玄鳥至が置かれます。海を渡ってきた燕が姿を見せる頃、という意味です。続いて雁が北へ帰る候があり、最後に虹始見が来ます。空気に湿り気が戻り、雨上がりに虹が架かるようになる頃です。
渡り鳥の去来と虹という、どちらも空を見上げて確かめる項目が並んでいるのが、この節気らしいところ。清らかで明るいという名前が、実際に見えるものから来ていると考えると腑に落ちやすくなります。
清明節の踏青は、要するに春の野を歩くことです。名所に出かけなくても、いつもの道を少し遠回りするだけで十分。草の匂いが強くなり、桜が終わり、次の緑が濃くなる。その入れ替わりに気づく時間が持てれば、清明という言葉は自然に身につきます。
いつもの道で、空と足元を一つずつ
清明のころに歩くなら、空に見つけたものと、足元に見つけたものを一つずつ覚えてみます。燕の姿や雨上がりの明るさ、道端で伸びてきた葉など、その日に実際に気づいたもので十分です。写真を撮るなら毎回同じ場所から一枚。次の穀雨のころに見比べると、暦の名前だけではつかみにくい季節の進み方が、自分の道にも見えてきます。
よくある質問
Q. シーミーは沖縄のどこでも行われますか
本島の中南部を中心とした行事です。地域や家によって時期や作法に幅があり、宮古や八重山では別の形の供養が行われます。
Q. 清明の日にお墓参りをしたほうがいいですか
本土では彼岸のほうが一般的です。清明にお参りしても差し支えなく、彼岸と別に手を合わせる日として使えます。
Q. 清明と穀雨はどちらが先ですか
清明が先です。春分、清明、穀雨、立夏の順に並びます。
出典
- 沖縄県公文書館による清明祭(シーミー)の解説
- 国立天文台 暦計算室の二十四節気に関する記述
- 中国および台湾における清明節の祝日制度についての公的資料