
満月の夜なのに、片側だけが黒くくぼんだ月に出会ったことはありませんか。
部分月食は、月の一部分だけが地球の濃い影に入る現象です。影のいちばん濃い領域を本影といい、ここに月の全体が収まれば皆既、一部だけが入れば部分月食になります。同じ夜の同じ影でも、どこまで踏み込むかで呼び名が変わるというだけの違いです。
欠けかたは回ごとにまるで違います。ふちをほんの少しかすめて終わる回もあれば、皆既の一歩手前まで沈む回もあります。
部分月食がわかる3つのこと
- 深さは食分という数字で表します。 月の直径のうち、どこまで本影に入ったかの割合です。
- その数字は面積ではありません。 食分が0.5でも、暗くなる面積は半分より小さくなります。
- 肉眼でも十分に楽しめます。 形が変わっていく様子は、双眼鏡がなくても追いかけられます。
食分は直径で数える、という約束
食分が1を超えると月は本影にすっかり収まり、皆既月食になります。0.3なら直径の三割まで、0.8なら八割まで入った状態です。
ここで取り違えやすいのが面積との違いです。円を弦で切り取った形を思い浮かべると分かります。直径の半分まで影が来ても、暗くなっているのは円の面積のおよそ四割にとどまります。この数字が示すのはどこまで届いたかであって、どれだけ暗くなったかではありません。
資料によって値がわずかに違うことがあるのは、どの瞬間を最大とみなすか、影の大きさをどう見積もるかに幅があるためです。
明るく残った側が、赤い側を隠す
深い部分月食の夜には、少し不思議なことが起こります。影に入った部分はきちんと赤みを帯びているのに、その色がなかなか見えてきません。
原因は、欠け残った側の明るさにあります。本影の外にある部分は、ふだんの満月とまったく同じ強さで光っています。人の目もカメラの自動調整も、視野の中でいちばん明るいものを基準に合わせるので、暗い側が沈んでしまいます。皆既の月が赤く見えるのは、比べる相手が空から消えているからとも言えます。
部分月食の夜に試したい4つのこと
- 欠け始めの時刻より少し前から見る。 影が最初に触れる位置を覚えると、進む向きが分かります。
- 十五分おきに同じ場所から写真を撮り、あとで並べて比べる
- 影に入った側の色を、灰色寄りか赤み寄りかで書き留める
- 手のひらで明るい側を隠し、暗い側だけを見てみる
四つめは、目の調節を利用した簡単な方法です。まぶしい部分を視界から外すと、隠れていた赤みが浮かんでくることがあります。
途中からなら、最初の一枚を基準にする
見始めたときの月を簡単に描き、時刻と「左上が暗い」など影の位置を添えておきます。十五分後にもう一度見て、暗い部分が広がったか、狭くなったかを書き足す。撮影する場合も、最初の写真を残しておけば比較できます。食分の数字をその場で求めようとせず、まず自分に見える形の変化を追うと、途中からの観察にも筋道ができます。
影の境目がにじんで見えるわけ
欠けたふちをよく見ると、線がぼやけていることに気づきます。理由は二つあります。
ひとつは、太陽が点ではなく広がりを持った球であること。光のもとに幅があるぶん、影は濃い中心から薄い外側へなだらかに移り変わります。もうひとつは地球の空気です。空気の層が光を吸ったり曲げたりするため、影は計算どおりの大きさより数パーセントふくらみ、ふちもやわらかくなります。
そのため、どこまで入ったかを目では正しく測れません。天文台が出す食分の値は、影の大きさをあらかじめ決めた式に沿って求めたものです。
皆既まで届かずに終わる回が多い理由
月の通り道は、地球が太陽をまわる面に対して五度ほど傾いています。二つの面が交わる点の近くで満月になったときだけ、月は影の中へ入れます。
交わる点にどれだけ近いかで、踏み込む深さが決まり、ぴたりと重なれば皆既、少しずれていれば部分、大きくずれれば影に届かず、ふつうの満月のまま夜が過ぎていきます。部分月食は、条件がそろいかけたところで止まった配置にあたるわけです。
途中で止まった食を、占星術はどう置くか
月食をともなう満月を節目として扱う流儀では、皆既と部分を分けて論じない書き手が多くいます。同じ食の時期に属する満月だからです。
一部だけが欠ける形に沿って、全部を手放すのではなく一部だけを整理する日として書く人もいます。月の見え方から生まれた読み方です。食のとき空に月があった地域を重んじる書き方と、地域を問わない書き方の両方が残っています。
星座ごとの読み方は満月(魚座)+部分月食のページへ。
よくある質問
Q. 食分が0.9なら、月の九割が暗くなるのですか
暗くなる面積は、その数字よりも小さくなります。食分が表しているのは直径のうちの割合だからです。
Q. 部分月食は皆既月食より多いのですか
回数としては部分のほうが多くなります。影の中心を外れて通る配置のほうが起こりやすいためです。
Q. 途中から見始めても分かりますか
分かります。欠けている側がどちらかを覚えておけば、影が進んでいるのか抜けているのかを、形の変化から読み取れます。
出典
- 国立天文台による月食の食分の定義と地球の影の構造についての解説
- 国立天文台 暦計算室が公開する各年の食のデータおよび食の最大の時刻
- 影のふちがにじむ理由と大気による影の広がりについての天文学の記述
- 月食をともなう満月を区切りとして扱う西洋占星術の慣例