初夏の食卓に並ぶパンと豆、陶器のカップを包む手
すでに手元にある心地よさを、一杯の時間から数えてみる。
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がんばっているのに、なぜか満たされない。そんな感覚が続いていませんか。

牡牛座おうしざの新月は、若葉の色が濃くなって風がぬるむころに巡ってきます。暦のうえでは立夏りっかを過ぎ、八十八夜はちじゅうはちやも済んだあたり。田に水が入り、店先の野菜が入れ替わり、手で触れられるものが一気に増える時期です。太陽が牡牛座を通るのは五月ごろなので、この新月はいつも初夏の入り口に置かれます。

牡牛座の新月がわかる3つのこと

  1. 時期は四月下旬げじゅんから五月中旬ちゅうじゅんごろ。 太陽が牡牛座へ移るのが四月二十日前後。そのあと三十日ほどのうちに、新月がひとつ置かれます。
  2. 受け持つのは五感・持ちもの・自分の値打ねうち。 守護星しゅごせい(星座ごとに置かれた担当の惑星)は金星とされ、心地よさや味わいに関わる星座と説明されてきました。
  3. 役目は「維持する」こと。 牡羊座おひつじざが勢いで走り出したものを引き取って、持ち運べるかたちに変えていく段階にあたります。

この星座はよく、動きが遅いと言われます。ただ、遅さと怠けは違います。根を張るのに時間がかかる植物を、成長が遅いと責める人はいないでしょう。決めたものを長く手元に置いておくための遅さだと読むほうが、この星座の性質に近いはずです。

明日から全部入れ替える、には向きません

だからこの新月に「人生をまるごと変える」といった願いを持ち込んでも、たいてい空回からまわりします。かわりに向いているのは、これから何年も続く生活のなかで、自分が毎日触れているものを選び直す作業です。使う器、寝具しんぐ、財布の中身、毎月払っているもの。そういう地味な単位のほうが、相性がとれています。

星の並びとしての牡牛座には、日本ですばると呼ばれてきたプレアデス星団せいだんと、赤く光るアルデバランが含まれます。すばるは世界各地で収穫や農作業の目印として語られ、暦と暮らしを結ぶ役割を担ってきました。豊かさを扱う星座に、実りの目印になる星が置かれている。この重なりを知っておくと、五月の新月が少し立体的になります。

豊かさをお金の外でも数える

牡牛座と聞くと金運の話に寄りがちですが、この星座が受け持つ豊かさは、口座の数字よりもう少し広いところにあります。

心地よく息ができる部屋。無理なく払える値段。体がゆるむ時間。おいしいと感じて食べ終わる食事。どれも金額に換算かんさんできそうでいて、実際には金額だけでは決まりません。同じ値段で買ったものが、片方は日々の支えになり、もう片方は気の重い荷物になることもあります。

この日に向く4つの小さな行動

  1. 財布の中身を全部出して、必要なものだけ戻す
  2. 毎月払っているもののうち、ひとつだけ内容を確かめる
  3. 触ると気分のいい服を一枚選び、それを着る日を決める
  4. 休む時間を先にカレンダーへ入れて、そこから予定を組む

どれも成果が見えるまでに時間がかかります。裏を返せば、時間をかけて効いてくるものを扱うのが、この星座の得意分野だということです。

安く扱われることに慣れてしまう前に

牡牛座には自己価値というテーマもついてきます。占星術せんせいじゅつでは、自分が何を持っていて、それをどれくらいの値打ちだと思っているかに関わる星座として語られます。

思い出してほしいのは、褒め言葉を受け取れているか、頼まれごとを無料で抱えすぎていないか、自分の時間の値段を口に出せるか、といった場面です。値段の話は生々しいので避けたくなりますが、避け続けると、いつのまにか安く扱われることが普通になっていきます。

願いを書くなら、「もっと稼ぐ」より先に「これはもう安売りしない」を一行にしてみてください。守るものが決まると、増やす話はあとから具体的になります。

いつもの器で、一杯を味わう

新しい物を買う前に、家にある好きな器を一つ選んでお茶を飲んでみます。持ったときの重さ、手に当たる縁、置いたときの音。普段は見過ごしている心地よさを確かめたら、「この器を使う朝の時間を残したい」と書いておくこともできます。豊かさを数えるとき、物の数だけでなく、それを使って過ごしたい時間も含めてみる方法です。

変えたくない気持ちが、動けなさに変わるとき

牡牛座らしさは、裏返すと頑固さとして出ます。

慣れた状態が心地よいので、変えたほうがいい条件でもそのまま続けたくなることがあります。この新月は維持と相性がよい反面、守りたいものと、惰性だせいで続いているだけのものが混ざりやすい時期でもあります。区別したいときは、それを今日から選び直せるかと自分に聞いてみるのが手早い方法です。

もうひとつ、豊かさの願いを買い物で先取さきどりしてしまうこともあります。五感に効くものを手に入れると、その瞬間は満たされます。ただ、それが受け取ってよいという感覚の練習になっているのか、不足を埋める作業になっているのかは、翌週の自分に聞けば分かります。

手を動かして終える一日

この日に儀式をしなければならない、という決まりごとは見当たりません。むしろ牡牛座の新月は、指先が動く作業を選ぶほうが実感が残ります。

シーツを替える、包丁を研ぐ、床を拭く、湯を沸かしてゆっくり飲む。頭ではなく手を使う時間は、グラウンディングと呼ばれる、地面に足がついている感覚に近づきます。書きものをするなら、いま手元にある豊かさ、これから育てたい豊かさ、もう安売りしないこと、の三行で足ります。

食べるものに気を配るのも、この日らしい過ごし方です。旬のものをひとつ選んで、味を確かめながら食べ終える。手間のかかる料理を仕込まなくて大丈夫です。この星座に要るのは豪華さではなく、味が分かるだけの静けさのほうでしょう。

この日の夜空に月の姿は見えません。かわりに、部屋の明かりの下で自分の持ちものを見渡してみてください。何が足りないかではなく、何がすでに手のなかにあるか。その順番で数えると、五月の新月は働きます。

季節のほうも味方になります。日が長くなり、気温が上がり、体が動きやすくなる時期です。冬のあいだ後回しにしていた片づけや模様替えを、この新月をきっかけに一か所だけ済ませておくと、初夏のあいだじゅう効いてきます。

よくある質問

Q. 金運の願いを書いても大丈夫ですか

大丈夫です。ただ金額だけを書くより、その先に何を手に入れたいかまで書くと動きやすくなります。増やす願いと、守る願いを一行ずつ並べておくのがこの新月に合う形です。

Q. すばるは新月の日に見えますか

五月の新月のころ、すばるは太陽の近くにいるため見つけにくくなります。姿を探すなら秋から冬の夜のほうが向いています。

Q. 牡牛座生まれではないのですが、意味はありますか

あります。牡牛座の新月は生まれ星座に関係なく年に一度巡ってきて、誰にとっても持ちものと値打ちを見直す日として働きます。

出典

  • 国立天文台 暦計算室こよみけいさんしつ「朔弦望さくげんぼう」(朔の時刻)
  • 西洋占星術せいようせんせいじゅつで広く共有されている牡牛座および金星の解釈かいしゃく
  • 農林水産省ほかの資料にみる五月の農事暦のうじれき