
十二月に入ると、なぜか遠くのことを考えはじめませんか。
来年はどこかへ行きたい、何かを学び直したい、ここではない場所で暮らしてみたい。手帳を買い替えるころ、こういう考えが浮かぶ人は多いはずです。一年が閉じる感覚と、まだ何も決まっていない翌年が同時に目の前にあるからでしょう。射手座の新月は、ちょうどこの時期に置かれています。
暦のうえでは大雪を過ぎ、寒さが本格化する頃合い。外へ出るには向かない季節に遠くへ行きたい気持ちが強くなるのは少し皮肉ですが、この組み合わせのおかげで、この時期の願いは実行より計画のほうへ向かいます。
射手座の新月がわかる3つのこと
- 時期は十一月下旬から十二月中旬ごろ。 太陽が射手座へ移るのが十一月二十二日前後。その滞在のうちに、月と重なる日が一度きます。
- 守護星(星座を受け持つ惑星として読まれるもの)は木星。 受け持つのは遠方、高等な学び、異なる文化、そして信じているものの枠組みです。
- 12星座では九番目。 蠍座で誰かと深く混ざった流れから抜けて、もっと広い外側へ出ていく段階にあたります。
逃げたいのか、知りたいのか
遠くへ行きたい気持ちには、二つの出どころがあります。
ひとつは、まだ知らないものを見たいという方向。もうひとつは、今いる場所から離れたいという方向です。前者は行き先が具体的になっていくのに対し、後者は行き先がどこでもよくなっていきます。この違いは、ひとつ質問すれば分かります。今の状況が全部うまくいっていても、それをやりたいか。
離れたい気持ちを否定しなくて大丈夫です。環境を変えるのは、ときに正しい判断です。ただ、逃げたい気持ちを知りたい気持ちのように書いてしまうと、着いた先でまた同じ気分になります。この新月では、二つを分けて両方書いてしまうのが手っ取り早い方法でしょう。
分けて書く利点は、対処が別になることです。離れたい理由は、たいてい今の場所で片づけられるものを含んでいます。人間関係のひとつ、引き受けている役割のひとつ、生活時間の組み方。それを先に扱っておくと、遠くへ向かう計画のほうが軽くなります。荷物を減らしてから出発する、という順番です。
行き先より、持っていく問いを決める
旅の質を決めるのは、行き先よりも持っていく問いのほうです。
同じ街を歩いても、「ここの人はどうやって生活しているのか」を持っている人と、写真を撮りに来た人とでは、帰ってから残るものが違います。学びも同じで、講座を選ぶ前に何を知りたいのかを一行にしておくと、途中で投げ出しにくくなります。
- 学びたいことを一行で書く。講座名ではなく、知りたいことのほうを
- 行きたい場所をひとつ決めて、地図で調べるところまでやる
- 会いに行きたい人の名前を書く。連絡は後日でよい
- 今週読む本を一冊だけ決めて、机に置く
- 今いる場所からできる小さな遠出を、ひとつ予定に入れる
派手さのない一覧に見えますが、射手座の願いは大きく語るほど現実から遠のく性質があります。手を動かせる大きさまで縮めておくと、翌週にも残ります。
広い話が、他人への物差しに変わるとき
射手座には、視野が広がるほど正しさを語りたくなる癖があると言われます。
学んだことや旅で得たものは、当人にとっては確かな手ごたえです。人に伝えたくなるのは自然な流れでしょう。ただ、伝え方が「それを知らないのは損だ」に寄っていくと、聞く側には説教として届きます。この時期に人とぎくしゃくするとしたら、たいていここが原因です。
計画が大きくなりすぎる時期でもあります。半年で三つの資格を取り、二か国に行き、副業も始める。年末に立てるとやれそうに見えるのが不思議なところですが、一月の第二週にはだいたい残っていません。数を絞るほうが、この星座では遠くまで行けます。
信じているものも揺れやすくなります。射手座は思想や信条を受け持つ星座として語られるため、これまで前提にしてきた考え方が急に古く感じられることがあるようです。乗り換えなくて構いませんが、なぜそれを信じてきたのかを一度言葉にしておくと、他人の強い意見に流されにくくなります。
半人半馬が構えている弓の先
星座のしるしになっているのは、上半身が人で下半身が馬の姿をした射手です。
弓は、手の届かない距離に働きかけるための道具です。歩いて行ける範囲なら弓はいりません。この星座が遠くを扱うと言われるのは、しるしそのものが距離を前提にしているからでしょう。半分が獣で半分が人という形も、本能のままの移動と目的を持った移動が同居している姿として読まれてきました。
誰を指しているのかについては、いくつかの説が伝わります。医術と学問を教えたとされる賢者ケイローンと結びつける説明もあれば、別の弓の名手だとする伝承もあり、古い資料でも一つに定まっていません。共通しているのは、力任せではなく狙いを定めて放つ姿のほうが残った点でしょう。
天文の話をひとつ。私たちの銀河系の中心方向は、地上から見て射手座のあたりにあたります。夏の夜、南の低い空で天の川がいちばん濃く見えるのは、この方向を見ているからです。もっとも遠いところを指す星座に、銀河のいちばん奥が重なっている。覚えておくと空の見え方が変わります。
近くへ出かける日にも、問いを一つ
遠い旅の前に、近所の展示を見に行く一日でも試せます。「この道具を使っていた人は、どんな一日を送っていたのだろう」と問いを決め、気になる展示を一つゆっくり見る。帰宅後は、分かったことと、まだ知りたいことを一つずつ残します。見た数を増やすより、一つの疑問を持ち帰るほうが、次に読む本や訪ねたい場所を選びやすくなります。
地図と本を一冊ずつ
過ごし方は、部屋の中で完結して構いません。
地図を開いて、行きたい場所をひとつ指で押さえる。本を一冊選んで、机の上に出しておく。この二つだけで準備は済みます。読み始めるのは翌日でも大丈夫です。手を伸ばす先を決める作業が、この日の中身になります。紙の地図があるなら、そちらのほうが向いています。画面の地図は目的地しか映しませんが、紙は目的地の周りまで一緒に目へ入ります。
夜は空気が澄む季節なので、外に出て星を見上げるのも合っています。月は出ていませんが、そのぶん暗い空が見えます。手の届かない距離にあるものを実際に眺めておくと、遠さについての願いが少し落ち着いた形になります。書き残すなら、行きたい世界、学びたいこと、今週できる小さな冒険の三行で十分です。
よくある質問
Q. 旅行の予定が立てられない時期でも使えますか
使えます。この新月の中身は移動そのものより、行き先と問いを決めるところにあります。地図を開いて調べる時間だけでも成立します。
Q. 資格や勉強の願いを書くのに向いていますか
向いています。講座名を書くより、それを学んだあと何ができるようになりたいかを一行足すと、続けやすくなります。
Q. 銀河系の中心は肉眼で見えますか
中心そのものは濃いちりに隠れて見えません。見えているのは手前の星々が重なった天の川の明るい部分です。
Q. 射手座生まれの人向けですか
限定されません。遠くを見る時期という読み方は、生まれ星座に関わらず共通して使えます。
出典
- 国立天文台 暦計算室の計算による朔の日時
- 銀河系中心の方向については国立天文台および各種天文書の解説
- 木星と射手座の対応についての西洋占星術の一般的な記述