
朝、車の屋根や物干し竿が濡れているのに、雨は降っていない。そんな日が増えていませんか。
白露は九月の上旬にあたる節気で、読みは「はくろ」です。秋分のひとつ手前に置かれていて、日中はまだ汗ばむのに、明け方の気温だけが先に下がる時期にあたります。その差が、草や窓ガラスに水の粒となって現れます。
名前を素直に読めば白い露ですが、露そのものが白く色づくわけではありません。この白には、別の出どころがあります。
白露がわかる3つのこと
- 時期は九月八日ごろから、秋分の前日まで。 十五日ほどの短い区切りです。
- 白は、露の色ではなく秋そのものを指す記号。 古い色の割り当てが元になっています。
- 露が結ぶのは、晴れて風のない夜の翌朝だけ。 曇った夜には、ほとんどできません。
昼の暑さより、朝の冷えのほうが早く来る
この時期に体が崩れる人は、暑さより朝晩の落差でつまずいていることが多いようです。九月上旬の日中は真夏に近い暑さでも、明け方だけは十度以上下がる日があります。冷えも乾きも、寒くなってから手当てを始めると間に合いません。
白露のころに始めたい5つの手当て
- 朝いちばんに窓を開け、外の空気の温度を手で確かめる。 数字より体で覚えるほうが早いです。
- 薄手の羽織るものを、鞄か玄関に一枚置く。 夜の帰り道でいちばん効きます。
- 肌や唇の乾きに気づいた日から保湿を始める。 十月まで待つ理由はありません。
- 寝るときの掛けるものを一枚だけ足す。 明け方に体が冷えると、疲れが翌日へ残ります。
- 寝る時刻を十五分だけ前へ戻す。 日の入りが早まる分に合わせる調整です。
新しく買い足すものはほとんどありません。去年しまった場所から出せば、たいてい足ります。
重陽の節句と、栗や新米が並ぶころ
白露の期間には、重陽の節句が入ります。九月九日、菊の花を浮かべた酒を飲み、長寿を願う行事です。五節句のなかではいちばん地味な扱いになりましたが、暦の位置としては白露のただ中にあたります。
年によっては、中秋の名月がこの期間に収まることもあります。栗、新米、いちじく、秋刀魚と、店先の顔ぶれも変わる時期です。
重陽の日にできる3つのこと
- 食用菊を一輪、汁物か酢の物に散らす。 菊酒が飲めなくても、香りは同じです。
- 栗ご飯を炊いて、実りの季節の始まりにする。 手間の割に季節感が濃く出ます。
- 長寿を願う相手をひとり思い浮かべ、短い便りを出す。 敬老の日より少し早い時期です。
白は、秋に割り当てられた色
ここから名前の話に戻ります。古代中国の五行では、四季それぞれに色が決められていました。春は青、夏は朱、秋は白、冬は玄です。青春、朱夏、白秋、玄冬という並びで、今も言葉として残っています。詩人の北原白秋がこの号を選んだのも、秋の色としての白を踏まえてのことでした。
つまり白露の白は、露の見た目ではなく、秋そのものを表す記号です。秋の露、と言い換えたほうが元の意味に近いことになります。
露は、どうやってできるのか
夜のあいだ、雲がなく風も弱いと、地面は持っていた熱を空へ向けて手放します。放射冷却と呼ばれる現象です。冷えた地面や草に触れた空気は温度を下げ、含みきれなくなった水蒸気が水滴に変わります。この温度が露点です。
露の多い朝は晴れる、という言い伝えが当たりやすいのには理由があります。そもそも晴れた夜でなければ、露は結ばないからです。そして日が高くなれば蒸発して消えます。この節気が指しているのは、一日のうち一時間ほどしか存在しない現象なのです。
ツバメが去り、セキレイが鳴く七十二候
七十二候は、節気をさらに三つに割った暦です。白露は草露白、鶺鴒鳴、玄鳥去と並びます。草の露が白く光り、セキレイが鳴き、玄鳥つまりツバメが去っていく、という意味になります。
春に来て子育てをしたツバメが、南へ帰る時期がここです。軒下の巣が空になっているのに気づくのが、だいたいこの頃でしょう。同じ空を、これから北から来る鳥たちが使い始めます。渡りの入れ替わりで季節を測る発想が、この十五日には入っています。
暮らしの中で試すなら
いつもの道に露のついた草を見つけたら、その場所を覚えておきましょう。翌朝も同じ場所で、露の有無、空の雲、風の感じを短く記録します。露がなかった日も空欄にせず残すと、毎朝の違いが見えてきます。ついでに帰宅が遅くなる日の上着を用意すれば、季節の観察がその日の支度にもつながります。
よくある質問
Q. 白露はいつですか
九月八日ごろから、秋分の前日までです。太陽の位置をもとに決めるので、年によって日付が一日ずれることがあります。
Q. 白露と寒露は何が違うのですか
どちらも露を名前に持ちますが、白露は露が目立ち始めるころ、寒露はその露が冷たくなるころを指します。ひと月ほど間が空きます。
Q. 露が降りた朝は、その日晴れますか
晴れて風のない夜でなければ露はできないため、結果として晴れる日が多くなります。天気を占うというより、前の晩の空模様の記録に近いものです。
出典
- 国立天文台 暦計算室「暦要項 二十四節気および雑節」
- 各種歳時記における七十二候(草露白・鶺鴒鳴・玄鳥去)の解説
- 五行説における四季と色の対応に関する一般的な記述