
やりたいことがわからない。本当の自分を見つけたい。答えを探すほど、自分だけが空っぽに思えてくることがあります。
『自分とか、ないから。』は、その「空っぽ」を欠点ではなく、東洋哲学への入口に変える本です。SPIRÉ編集部がすすめたいのは、「私はこういう人」という決めつけを、少しゆるめたいとき。難しい思想を、自虐と笑いのある言葉で読ませます。
3分でわかる、この本の内容
著者は東京大学を卒業し、大手IT企業、地方の教育事業、芸人などへ進みながら、自分探しの末に無職・引きこもりの時期を経験しました。そこで出会った仏教と老荘思想を、7人の思想家の人生と自身の挫折を往復しながら紹介します。
六つの章が伝えるのは、固定した自分や、独立して存在する物事への執着を見直すことです。学術用語の網羅より、「この考えを知ると、生きづらさがどう変わるか」に重心があります。
| 章 | 登場人物と中心の考え |
|---|---|
| 無我 | ブッダから、変わらない「自分」を探し続ける苦しさを考える |
| 空 | 龍樹から、物事は関係と条件の中で成り立つと学ぶ |
| 道(タオ) | 老子と荘子から、無理に世界を支配しない生き方を見る |
| 禅 | 達磨から、言葉で考え続ける前に現実へ触れる |
| 他力 | 親鸞から、自力だけでは生きていないことに気づく |
| 密教 | 空海から、欲や生命を丸ごと否定しない視点を知る |
いま、この本をおすすめする理由
プロフィール、実績、肩書で自分を説明する機会が増えました。便利な反面、その説明から外れた瞬間に「自分がなくなった」と感じることもあります。本書を読むと、自分のあり方が変わるのは失敗ではなく、もともとそういうものなのだと考えられます。
1. 哲学が、知識ではなく体験として入ってくる
ブッダや龍樹の思想を、著者自身の退職、移住、芸人、離婚、引きこもりと重ねて語ります。遠い偉人の紹介にとどまらず、著者の暮らしの話として読めます。思想を完全に理解できなくても、「これなら少し息ができる」という感覚から読み始められます。
2. 「自分がない」を希望として読める
無我は、自分の命や尊厳がないという話ではありません。性格も評価も、そのときの関係や条件で変わる。固定した正解がないからこそ、昨日までの自分に一生従わなくてよい。そう考えると、少し気持ちが軽くなります。
3. 笑いが、深刻さとの距離をつくる
文章は軽快ですが、扱うテーマは挫折、虚無、孤独、生きる意味です。笑いは問題を小さく扱うためではなく、自分を責め続ける思考から半歩離れるために働きます。説教されずに哲学へ入れる珍しい一冊です。
こんな人におすすめ
- 「本当の自分」を見つけようとして疲れた人
- 肩書や成果がなくなると不安になる人
- 仏教や東洋哲学を、まず親しみやすい本から読みたい人
- 自己啓発の強い前向きさが合わなかった人
- 難しいテーマほど、笑いのある文章で読みたい人
「自分らしさ」の言葉を一つゆるめてみる
「自分は人づき合いが苦手」と思っていても、話しやすい相手や場所はあるかもしれません。本を読みながら自分を表す言葉が浮かんだら、「いつ、どんな場面でそう感じるか」まで書き添えてみてください。一つの言葉だけでは収まらない経験が見つかることもあります。
思想家の考えを一度に覚えるより、いまの気分に合った話を一つ選ぶ。著者の語りに笑ったページから読み返してもよいでしょう。難しい言葉の意味が気になったら、その言葉を出発点に別の本へ進めます。
読んだあとに試したい、1つのアクション
3分だけ、自分へのラベルをゆるめる。
紙に「私は○○な人だ」と、自分へ貼っているラベルを一つ書きます。「人付き合いが苦手」「何をしても続かない」など、いつもの言葉で構いません。
次に、その下へ「今は、そう見えているだけかもしれない」と書きます。最後に、そのラベルへ当てはまらなかった最近の出来事を一つだけ探します。新しい立派な自分を作る必要はありません。決めつけに小さな例外を開けたら終了です。
著者・しんめいPさんはどんな人?
しんめいPさんは、1988年大阪府生まれの作家。東京大学法学部を卒業後、DeNAで海外事業に携わりました。
大手企業から地方移住、芸人、無職へ
退職後は鹿児島県長島町へ移住し、教育事業に従事。その後、フリーのピン芸人としてR-1グランプリへ出場しました。芸人引退、離婚、無職を経験し、実家に引きこもっていた時期に東洋哲学と出会います。
2020年に公開したnote「東洋哲学本50冊よんだら『本当の自分』とかどうでもよくなった話」が話題となり、3年半をかけて書籍化。京都大学名誉教授だった鎌田東二さんが監修しました。
現在の活動
書籍の執筆に加え、公式noteやXを通じて、東洋哲学、働き方、自意識、日々の気づきを発信しています。本の刊行後は、対談やイベント、メディア出演を通じても東洋哲学の入口を伝えています。
公式情報
| 公式・一次情報 | 確認できる内容 |
|---|---|
| サンクチュアリ出版|書籍ページ | 発売日、ISBN、目次、内容紹介 |
| しんめいP公式note | 著者本人の記事と活動 |
| 東洋哲学の元note | 書籍の原型、対象範囲、著者自身の但し書き |
| 書籍化の報告 | 執筆期間、取材、監修へ至る経緯 |
| X|@Sony_Shimmei | 出演、イベント、近況 |
来歴・書誌の出典:国立国会図書館、サンクチュアリ出版、好書好日・しんめいPインタビュー、著者の元note(2026年8月31日確認)。
※ページ数は国立国会図書館の標準書誌(349ページ)に合わせました。版や製品情報によって表記が異なります。
