竹の茂る山の小道を、遠くの青い山並みに向かって歩く虎
往って還る虎の言葉を、十二日ごとの振り返りにも。
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新しい財布を、いつから使い始めるか決めていますか。

寅の日とらのひは、その日の十二支じゅうにしが寅にあたる日です。子・丑・寅と順に振られていく十二支のうち、三番目が回ってきた日、というだけの決まり方をしています。十二日でひと巡めぐりするので、月に二回か三回、年間では三十回近く巡ってきます。 開運日と呼ばれるもののなかでは、かなり気軽な部類ぶるいです。

金運の日として案内されますが、言い伝えの中身をたどると、出ていく話が先に来ます。決め手になったのは虎の移動の速さで、遠くまで行って戻ってくる生き物という捉え方が、お金の巡りに重ねられました。つまり寅の日は、増える日というより、出したものが帰ってくる日として語られてきた日です。

だからこの日の使い方は、財布と、往復のある予定に集まります。

寅の日がわかる3つのこと

  1. 十二日ごとに必ず回ってきます。 待てば来る日なので、今日どうしても踏み切れないなら次の機会を待てます。
  2. 財布は、買う日より使い始める日を合わせます。 出したものが還るという言い伝えなので、実際に開いて使い出す日のほうが筋に合います。
  3. 毘沙門天びしゃもんてんの縁日えんにちでもあります。 暦の計算から出た吉日きちじつではなく、寺社じしゃの由緒ゆいしょと暦注れきちゅうが混ざり合ってできた日です。

財布を使い始める日にあてるなら

寅の日に財布を替える習ならわしは根強く、暦を気にしない人でもこの日だけは意識する、という話をよく聞きます。せっかく日を選ぶなら、買った日ではなく、中身を移して持ち歩き始める日をこの日に合わせるほうが、言い伝えの筋には沿います。

そのうえで、新しい財布に何を入れて何を入れないかを決めておくと、日取ひどりが行動に変わります。財布は毎日開けるものなので、ここでつけた習慣は残りやすいのです。

寅の日に財布を使い始める4つの手順

  1. 前の財布の中身を全部出します。 レシート、期限切れの割引券、使っていない会員証。この作業だけで枚数はかなり減ります。
  2. 持ち歩くカードの上限枚数を決めます。 五枚なら五枚と決めて、残りは家に置く箱をつくります。
  3. 入れないものを先に決めます。 レシートは毎晩出す、小銭は貯金箱へ。決めごとは二つで足ります。
  4. 最初に入れる金額を自分で決めます。 縁起えんぎのよい額を探すより、ふだん持ち歩く額に合わせるほうが続きます。

出したものの行き先を確かめる

派手なことをしなくても、この日らしい過ごし方はできます。財布まわり以外にも、出しっぱなしになっているものはあります。

  • 直近ちょっきんひと月の支出を眺めて、戻ってきた実感のあるものと、なかったものに分ける
  • 使っていない引き落としを一つ見つけて、止めるか続けるかを決める
  • 貸したまま返事のないものを思い出し、催促ではなく確認の連絡を入れる
  • 行きたい場所を一つ挙げて、往復の交通費だけ調べておく

お金以外に出しているものも、同じ目で見られます。時間、気力、誰かに向けた言葉。返事のないまま出しっぱなしになっているものに気づくと、この日の言い伝えが自分の暮らしとつながります。

十二日後に、財布をもう一度開く

使い始めの日に決めたことは、次の寅の日に一度確かめてみます。持ち歩くカードは増えていないか、保管したいレシートが財布に残っていないか。毎日続けると決めた整理が難しければ、帰宅後に置くトレーを用意するなど、やり方を小さく変えます。十二日という間隔を、中身を戻す目印にするわけです。買い替えた日だけでなく、使いながら整える日にも、寅の日の巡りを取り入れられます。

縁起の話が買い物に寄るとき

気をつけたいのは、金運という言葉が買い物の理由にすり替わる場面です。寅の日に合わせた売り出しや、この日に買うと良いとする案内は多く、その勢いで予定外の出費が増えることがあります。

必要なものと予算を先に決め、日取りを使い始めの区切りにすると、準備の順番がはっきりします。

もう一点、寅の日に向くとされる行いの並びは暦書れきしょや社寺しゃじによって違い、そろった規定は見当たりません。宝くじを買う日として案内される場面も増えましたが、これは近年の受け取り方で、古い暦注の記載きさいにさかのぼるものではないようです。

十二支の三番目という位置

十二支は本来、方位や時刻、月を数えるための記号でした。寅は方角では東北東とうほくとうのあたり、時刻では夜明け前の午前四時ごろ、月では立春りっしゅんを含む正月にあてられます。暗いうちから動き出す時間帯と、一年が改まる月。どちらも、これから始まるほうを向いた位置です。

日の十二支は、月や季節とは関わりなく淡々と回ります。ほかの選日せんじつのように月との組み合わせで拾うわけではないので、計算に迷う余地がありません。この単純さのおかげで、寅の日は暦の知識がなくても数えられる日として、古い民間の暦にもよく載りました。

虎が毘沙門天と結びつくまで

寅の日を財の話へ寄せた最大の要因は、毘沙門天との縁だと言われます。毘沙門天はもともとインドの神で、財宝と北方ほっぽうの守護を担い、日本では七福神しちふくじんの一人としても知られます。

この神と虎の結びつきには、奈良の信貴山しぎさんに伝わる話がよく引かれます。聖徳しょうとく太子たいしが戦勝せんしょうを祈った折、寅の年の寅の日、寅の刻に毘沙門天が現れたと伝えられ、以来この山では寅が神の使いとして大切にされてきました。そのため寅の日は、寺社の側でも毘沙門天の縁日として扱われます。

金運の日として広まったのは、この縁日の性格と、虎の帰巣きそうの話が重なった結果と見るのが素直でしょう。

「千里を往って千里を還る」が金運の句になるまで

寅の日を説明するとき、必ずのように添えられる句があります。千里せんりを往って千里を還る。虎の行動範囲の広さを言い表したものとされ、ここから二つの使い道が生まれました。

一つは旅の日取りです。遠くへ出ても無事に帰ってくる日と読んで、旅立ちや出発の日に選ぶ習わしができました。もう一つが財布や出金しゅっきんで、使ったお金が戻ってくると読み替えたところから、財布を替える日という理解が広まります。金運という言葉が先にあったのではなく、還るという一語が財の話に翻訳された、という順番です。

句をよく見ると、往きと還かえりが対になっています。出さなければ還りようがない、という順序がここに入っています。手元に留めることを勧める日ではなく、動かしたものが循環じゅんかんするかどうかを見る日だと考えると、この日の使い方に迷いが減ります。

旅の日取りに選ばれてきた事情

還ってくることを重く見る言い伝えは、旅の少なかった時代を背景に持っています。徒歩の道中で病や事故に遭えば、そのまま戻れないことがありました。無事に帰り着くことが第一の願いであって、行った先で何を得るかは二番目だったわけです。

だから寅の日は、出発の日を選ぶために使われました。同じ移動でも、引っ越しのように帰ってこない前提の行いには、別の暦注が当てられます。往復するかどうかで日取りを分ける発想は、現代の感覚だと抜け落ちやすいところです。いまの暮らしに引き寄せるなら、出張、遠方えんぽうの受診、久しぶりの帰省といった予定に向きます。

同じ十二支の日でも、蛇にまつわる巳の日は才や芸事げいごとの話へ寄っていきます。財布を開く日と腕を磨く日を分けて置いてみると、二つの違いがはっきりして、月のなかにちょうど交互に並ぶことがわかります。

よくある質問

Q. 寅の日は月に何回ありますか

十二日にひと巡りするので、月に二回か三回です。年間ではおよそ三十回。日の十二支は季節や月と関わりなく進むので、どの月でも同じ間隔で回ってきます。

Q. 財布は寅の日に買うのと使い始めるのと、どちらがよいのですか

言い伝えの筋でいえば使い始めるほうです。出したものが還るという話なので、実際にお金が出入でいりし始める日を合わせるほうが自然です。買う日は、価格や在庫の都合で決めてかまいません。

Q. 寅の日に引っ越しをしてもよいのですか

古い言い伝えの上では、往復する予定に向く日とされてきました。戻ってこない前提の移動には別の暦注が当てられていたので、引っ越しの日を寅の日で選ぶ習わしは伝わっていません。都合のよい日を優先して差し支えないでしょう。

出典

  • 各種暦書における日の十二支と寅の日の解説
  • 信貴山朝護孫子寺に伝わる毘沙門天と寅の由緒