
暦に月食と書かれていた夜、空を見上げて何も起きていないと感じたことはありませんか。
半影月食は、月が地球の影のうち薄いほうだけを通り抜ける現象です。濃い影に触れないため、月の輪郭は欠けません。丸いまま、全体の明るさがほんの少し落ちるだけで終わります。
天文の記録には、月食としてきちんと数えられます。それでも見上げた人の記憶には残りにくい。この落差が、この現象のいちばんの特徴です。
半影月食がわかる3つのこと
- 月の形は最後まで丸いままです。 濃い影に入らないので、欠けたふちは現れません。
- 明るさの差は写真で確かめます。 同じ設定で撮った二枚を並べると、片側の翳りが分かることがあります。
- 月食のうち三分の一ほどを占めます。 薄い影だけで終わる回は、決して珍しいものではありません。
薄い影ができるのは、太陽に大きさがあるから
もし太陽が小さな点なら、地球の影は濃い部分だけになり、境目もくっきり分かれたはずです。実際の太陽は大きく広がった球なので、影は二重になります。
日ざしが完全にさえぎられる内側が本影、太陽の一部だけがさえぎられる外側が半影です。月が本影まで届かず、半影の中だけを通り過ぎるとき、その夜は半影月食として数えられます。影の呼び分けは、濃さの度合いではなく、太陽のどれだけが隠れているかの違いを表しています。
月に立つと、地球が太陽を欠けさせている
半影の中がどんな状態かは、月の側から想像すると腑に落ちます。
半影に立った人が空を見上げると、地球が太陽の一部だけを覆っています。地球による部分日食が起きている、という言い方になります。太陽の残りからは光が届き続けるので、あたりが暗くなりきることはありません。その「一部だけ隠れた太陽」の光が、そのまま月の表面を照らしている状態です。
本影の中まで進めば、地球は太陽をまるごと隠し、そこまで来て初めて、地上から見える月が欠け始めます。
目には残らず、暦には残る
薄い影にどこまで踏み込んだかは、半影食分という値で表されます。月の直径のうち、半影に入った割合です。
この値が小さい回は、注意深く見比べても違いを取り出せません。おおよそ0.7を超えるあたりから、月の片側がかすかに翳っていると気づける場合があるとされます。気づけたとしても、言われてみればそうかもしれない、という程度にとどまります。
写真ならもう少し確かめやすくなります。始まる前と最大のころに、同じレンズ、同じ露出、同じ感度で撮っておき、あとで並べる。片側の明るさが落ちていれば、それが半影の記録です。目に残らないものを、器械のほうが代わりに覚えているという形になります。
半影月食の夜にできる4つのこと
- 暦のどこに書かれているかを確かめる。 何時に始まり、何時に最大となるかだけ見ておきます。
- 始まる前と最大のころに、同じ設定で月を一枚ずつ撮る
- 見上げても変化が分からなかったことを、そのまま書き留める
- 次の食がいつどの土地で見られるかを、暦のページで調べておく
三つめは冗談のようですが、実際の観測記録にもよく出てくる結論です。分からなかったという記述も、りっぱな観測の結果になります。
比べる二枚に、条件も添える
月の写真を残すなら、撮影時刻と使った設定を一緒に控えます。空に薄い雲がかかっていたら、そのことも一行添えておく。あとで並べたとき、暗く見えた理由を考える手がかりになります。差を見つけられなかった場合も、丸い輪郭とその夜の空を記録したことは残ります。写真の見た目だけで結論を急がず、条件と合わせて眺めてみましょう。
静かな食は、日食と組みで訪れる
半影月食は、日食と近い日付で並ぶことがあります。月の通り道と地球の通り道が交わる点の近くにいる期間には、二週間ほどの間隔で新月と満月が続けてやってくるためです。
そのため、大きく話題になる日食のかげで、誰にも気づかれない月食が通り過ぎていく年があります。派手な回と静かな回が、同じしくみから生まれている。暦を並べて眺めると、その対応がよく見えてきます。
見えない食を、占星術はどう置くか
配置そのものを読む流儀では、半影であっても月食は月食として、満月の節目に重ねて読みます。濃い影か薄い影かで扱いを分けない書き手が多数です。
その一方に、実際に空で確かめられたかどうかを条件にする流儀もあります。この立場では、半影月食は控えめに置かれます。同じ夜について、大きく扱う人と軽く扱う人が並んでいるのは、この現象の静けさに似合っているのかもしれません。
星座ごとの読み方は満月(乙女座)+半影月食のページへ。
よくある質問
Q. 空を見上げれば、半影月食に気づけますか
深く踏み込む回で、月の片側がかすかに翳って見える程度です。多くの回は、見比べても違いをつかめません。
Q. 半影月食も月食として数えるのですか
数えます。天文の暦では、本影に入る食と同じように、日時と食分が記録されます。
Q. 明るさはどのくらい落ちるのですか
深い回で、ふだんの満月に比べて一割から二割ほどとされます。人の目は明るさの差に鈍いので、この程度では気づけません。
出典
- 国立天文台による本影と半影の違いおよび月食の種類についての解説
- 国立天文台 暦計算室が公開する各年の食のデータと半影食分の値
- 半影月食の減光を写真で確かめる方法についての観測解説
- 見えない食を含めて満月を節目とする西洋占星術の慣例